マニア向けの魅力的なコンポーネント製品を作るオーディオメーカーが淘汰されてから月日が経ちました。手軽なネットオーディオ製品や携帯型の音楽プレイヤー、iPhoneなどのスマホで楽しむオーディオが全盛の今、個別コンポーネント製品を作るオーディオ専業メーカーの経営が厳しいのは理解できます。自宅で使用しているオーディオ機器も、ほとんどが10年から20年も使用している年代物ばかりです。
プリメインアンプ(DENON PMA-2000IV)が再度故障
2003年に購入したDENON PMA-2000IVは、価格の割にしっかりとした設計と作りで、なかなか良い音を聞かせてくれます。今でもオーディオ好きに愛されているアンプのようで、中古市場でもソコソコの値段が付いています。
自宅オーディオの中心になっているアンプ(DENON PMA-2000IV) |
しっかりとした材料・部品で構成されているのをうかがわせる超重量級のボディで、高級感のある作りが気に入っています。購入から8年ほど使用した2011年頃、インプットセレクターが何の操作もしていないのにカチカチと切り替わるような不具合が発生しました。スピーカー保護のため、セレクター操作時には数秒間アンプの出力が抑制されるようになっています。音楽を楽しんでいる最中に、いきなりカチッと音がして音楽が数秒間途切れるので、とてもゆったりと音楽を楽しめたものではありません。メーカの出張修理を依頼し、インプットセレクター部のロータリースイッチを交換して治りました。
その後何の問題もなく音楽を楽しんでいましたが、2016年頃からまた同じ症状が発生。ネットで調べてみると、ここがこのアンプの弱点のようです。購入後13年以上が経過しましたので、再度の修理を依頼して使い続けるか、買い換えるか悩んでいるところです。
秋月電子のデジタルアンプキットで鳴らしてみた
PMA-2000IVは80W+80W(8Ω)の最高出力です。これでパイオニアの3ウェイ大型トールボーイ・スピーカーをドライブしていました。
スピーカーはパイオニア製トールボーイ型(S-A77TB)を使用 |
代わりになるアンプを探してみたら、携帯型オーディオプレイヤーを繋いで机の上の小さなスピーカーを鳴らすために作成した秋月電子のデジタルアンプキットがありました。最高出力は1W+1W(8Ω)しかありません。
半田付けしてケースに組み込んだ秋月のデジタルアンプキット |
「こんなのであのでかいスピーカーがドライブできる?」と半信半疑でDENONのアンプの代わりにスピーカーに繋いでみました。プリアンプの代わりも秋月電子のポータブルヘッドホンアンプキットです。±3ボルトの両極電源が必要ですが、とてもクリアな音でお気に入りのヘッドホンアンプです。
PMA-2000IVの代わりに秋月のキットを接続 |
十数万円したメーカー製のプリメインアンプから合計6千円程度の秋月電子キットに置き換えて音を出してみたら.... 何と結構いい音が出てきます。締まった低音も出ていて、歪みも感じません。心配していた音量も十分です。ボリュームを上げると大き過ぎるくらいの音が出せます。改めてスピーカーのスペックを調べてみると89dB/W(1m)の出力音圧レベルでした。このくらいの効率があれば1W+1Wのアンプでも十分な音量で鳴るんですね。驚きです。
ピュアオーディオの復権はあるか?
少し前にパナソニックが往年のオーディオブランドであるTechnicsを復活させました。当初は100万円を超えるような価格帯の製品ばかりでしたが、だんだん手頃な価格帯の製品も揃ってきたようです。最近はターンテーブルの新製品も発表になり、いよいよアナログレコード時代の復活かと驚きました。カタログの中に”ワウ・フラッター”という言葉を見つけたときは懐かしさのあまり声が出てしまいました。日立のLo-Dあたりも復活してほしいですね。
オーディオを始めた頃からFM放送は音楽ソースとして重宝しています。当時は選ぶのが難しいほどたくさんのチューナーが売られていました。長年エアチェックの主要機材として活躍してきたのがソニー製のAM/FMチューナー(ST-S333ESXII)です。
エアチェックに活躍したソニー製チューナー(ST-S333ESXII) |
このチューナーで受信するNHK FMのベストオブクラシックはうっとりとするような音が楽しめました。残念ながら数年前にFM部が不調となり、ソニーのサービスセンターでも修理は終了しているとのことで、現在はAM専用チューナーとして使用しています。代わりのチューナーを探しましたが、当時ほとんどのオーディオメーカーにはチューナーの上位機種がありませんでした。ミニコンポのセット用として売られているものはありましたが、最高の状態でクラシックを楽しめるような性能はなさそうです。色々探してたどり着いたのがAccuphaseのT-1100です。オーディオ専門メーカーが最新のデジタル技術で設計したFM専用チューナー。大変高価でしたが、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで購入しました。
FMチューナー(Accuphase T-1100)からSDカードに直接デジタル録音 |
デジタルで復調まで処理されていますので、チューナーから直接デジタル信号が取り出せます。これをSDレコーダーで記録し、聞くときにお気に入りのDACでアナログに戻します。この楽しみ方を始めて、さらにFM放送が持つ高いポテンシャルに気づきました。特にNHK FMの生放送は素晴らしいですね。ジャズもクラシックも、うっとりするような音が出てきます。こんなマニアックな楽しみ方ができるピュアオーディオ製品を作るメーカーがどんどん出てくることを願いたいと思います。
小型D級アンプ恐るべし、いつのまにか主役に
故障したPMA-2000を修理もしくは買い替えるまでの代役として使い始めた小型のデジタルアンプですが、使ってみると何だかとってもいい音がします。半年以上も経ちましたが、未だにピンチヒッターのままで使用しています。プリアンプとして使っていたヘッドホンアンプが電池式のため、時々電池交換をするのが面倒でした。試しにデジタルアンプの入力部にボリュームを設置してみたら、何の問題もなくスピーカーをドライブできるため、ヘッドホンアンプも外しました。実に質素なシステムの完成です。
秋月のデジタルアンプ入力部にボリュームを設置してプリアンプを省略 |
使用している電源はガラケーについてきた5VのACアダプター(最大900mA)です。こんなもので、大型のスピーカーが十分な音量で鳴ってくれます。プリアンプ部はボリュームのみの完全パッシブ、メインアンプはD級の1W+1W仕様と、およそHi-Fiシステムとは縁遠いものですが、なぜか低音から高音まで満足できる音が出てきます。消費電力も格段に小さくなりました。小型のデジタルアンプ、恐るべしです。DENON PMA-2000IVは壊れたままリビングに鎮座し続けています。
(2017年10月6日追記)