今乗っているロードバイクを購入してから8年が経ちます。注文時にいろいろなカスタマイズができる仕組みになっていて、ホイールについても差額4万円でFulcrumに取り替えられるようになっていましたが、当時は「フルクラム」なんて知りもしません。4万円も追加して前後ホイールを交換する意味がわからず、標準設定されていたシマノのWH-R500で十分だと信じきって注文しました。世間で鉄下駄と呼ばれるこのホイールには三年ほどお世話になりました。
初めて買ったロードバイクについていたのがシマノWH-R500 |
初めてのロードバイクで、時々立ちゴケしながらも、徐々に走る距離が伸ばせるのが楽しくて楽しくて、毎週のように走り回っていました。この頃は漕ぎ出しがどうとか、加速フィーリングがどうとかを考える余裕もなく、クタクタになるまでペダルを回し続けていたように思います。
ガードレールに突っ込んで鉄下駄ホイールが昇天
そんな乗り方を続けて3年ほど経った頃、路肩の砂でスリップし、相当な速度でガードレールに突っ込んでしまいました。前輪から激しくぶつかったため、リムが曲がってしまい、どう見ても修復不可能な状態に。これをきっかけに、もう少し上級のホイールを買い求めることにしました。選んだのはシマノのULTEGRA WH-6700です。最初の鉄下駄ホイールの三倍以上の値段ですが、チューブレスタイヤにも対応していて、将来クリンチャーからチューブレスに履き替えることも可能な発展性で選びました。購入したのが2012年の6月末ですから、既に5年以上も使用していることになります。その間の走行距離は2万5千キロにもなっていました。初めて装着して走り出した際には、今までの鉄下駄ホイールとは全く違う感覚に驚きました。下り坂でははっきりと転がり抵抗の少なさが実感できました。実売価格3万円ちょっとのホイールでもこんなに変わるんだと驚いたものです。
シマノULTEGRAホイール(WH-6700) 前輪 |
雨中走行後に整備していたらどうもホイールの調子が悪い
先日、久しぶりに雨の中のサイクリングを経験し、帰宅後に清掃や各部のチェックをしていたら、どうも前輪の回転が渋いことに気づきました。ホイールを外して車軸を手で回してみると、ゴリゴリとした感覚が伝わってきます。試しに後輪を同じように回してみましたが、なんの引っかかりもなくスムーズに回せます。これは前輪ホイールハブのメンテが必要だと感じました。
前輪のハブ軸がゴリゴリして回転が渋くなっていた |
今まで5年間全く開けたこともないハブ軸のベアリング部です。工具もなければグリスも持っていません。早速、アマゾンでハブナットスパナのセットとグリスを注文しました。それ以外は手持ちの工具類を取り揃えて、いざ分解整備開始です。
ホイールハブ整備に使用した工具類一式 |
以前買った自転車整備の教本とネットの記事を読み漁りながら、WH-6700の分解整備の方法を頭に叩き込んでから始めました。
ベアリング部の分解・組み立ては簡単だった
まずは構造の簡単そうな前輪側から始めました。今回買い求めた17mmのハブナットレンチで内側のナット(玉押しもしくはコーン)を空転しないように押さえておき、モンキーレンチで外側の固定ナットを左に回して緩めます。使われているのは全て右ネジですから、緩める場合は左回転です。
前輪のハブナットを緩める |
それほどきつく締まっていたわけではないようで、簡単に緩みました。固定ナットを外したら、その下に玉押し(コーン)があります。これがカップ(スポークが繋がっている方)と対になり、その間に鋼球が挟まってベアリングを構成しています。この玉押し部分を緩めますが、ここは手で簡単に回せました。
玉押し(コーン)部分は手で簡単に外せた |
これでハブ軸を反対側から引き抜くことができますので、そっと抜いておきます。この時に鋼球が落ちてくることがありますので、無くさないように注意が必要です。
玉押しを外すと、その下にダストカバー(シール)が現れます。これを傷つけないように注意しながら、ドライバーなどで外してやるとその下に鋼球がありますので、その状態を注意して見ておきます。グリスの有無や色など、状態を診るのに役立つはずです。
傷つけないよう注意しながらドライバーでダストカバーを外す |
ダストカバーを外せば、あとは鋼球を無くさないように取り除くだけです。既に落ちてしまったものもあるかもしれませんので、個数を確認しながらキッチンペーパーなどの上に置いておきます。WH-6700の場合、前輪は片側11個、左右合計22個です。ちなみに後輪は片側9個になります(少し大きい)。ペーパータオルに乗せたまま、小皿の上でチェーンクリーナーやパーツクリーナーなどを吹きかけ、ペーパータオルに包んだまま軽く振ってやると鋼球のクリーニングが簡単にできます。
フロントの鋼球は全部で22個(片側11個)、無くさないように注意 |
綺麗になった鋼球は新しいキッチンペーパーの上で、傷などがないか丹念にチェックします。作業後に知ったことですが、使われている鋼球は左右同じ場所に戻した方がいいという意見もありました。左右で減り方に違いがあるんでしょうね。今回はダストシールを取り除く前からポロポロと落としてしまい、右も左も分からない状態になってしまいましたので、気にせず作業を進めましたσ(^_^;)
後輪についても基本的には同じ作業ですが、フリーホイールにカセットスプロケットがついていますので、まずこのスプロケットから外します。あとは前輪と同じ順番で作業していけばOKです。ナットのサイズが異なるため、14mmと15mmのハブナットレンチを使用して緩めます。
後輪のハブナットは14mmと15mm |
カップアンドコーン部のグリスを落として注意深くチェック
5年間もメンテナンスなしで使用し続けたベアリング部ですので、開けてビックリかと思いましたが、それほどひどい状態ではありませんでした。まだグリスも残っていましたし、鋼球にも傷などは見られません。カップアンドコーン部のグリスを丁寧に落として、鋼球が当たる部分を注意深く調べます。カップ側は前輪も後輪も特に問題はありませんでした。このカップ部に磨耗や傷などが発見された場合はおおごとです。後述しますシマノのスモールパーツを見ても、ここだけの購入はできないようです。交換するにしてもスポークの張り直しになってしまいます。完組ホイールでここをやられていたら、買い直した方が早いかもしれません。
前輪のカップ部に問題は無し |
後輪も左右ともカップ部は問題無し |
さて、それでは前輪の回転が渋くて、ゴリゴリと感じるのはどこが問題なのでしょう。取り外した前輪の玉押し(コーン)部分を綺麗にして眺めて見ました。取り外した側(右側)の玉押し部分に浅い凹み(傷)が見られます。黒い縞模様もついていて、潤滑の悪い状態で回っていたことを窺わせます。この部分がゴリゴリの原因ですね。
前輪の玉押しの鋼球の当たる面に傷が見られる(ピンボケですみません) |
ちなみに前輪の反対側(左側)玉押し部分に傷は見つかりませんでした。少し縞模様が浮き出ていますので、こちらも潤滑はあまり良くないのだろうと思います。少し玉の押しつけが強すぎたのかもしれません。
前輪左側の玉押し部分、少し縞模様が出ている |
後輪は左右どちらも目立つ傷や縞模様はありませんでした。分解前にスムーズに回っていたことが納得できる状態です。
後輪の玉押し部分は問題なさそう |
前輪右側の玉押し(コーン)ナットは交換した方が良さそうですが、部品が手に入るまではこのまま走るしかありません。とりあえず組み直しておき、部品が手に入ったら改めて交換したいと思います。
玉押しの調整がポイントのカップアンドコーン式ベアリング
組み立ては分解した時の反対の順番で作業していけばOKですが、新しいグリスをたっぷりと塗り込んでやる必要があります。綺麗にしたカップ部に塗り、ピンセットで慎重に鋼球を並べたらその上にも塗り、さらに玉押し(カップ)部の鋼球が当たる部分にもに塗ってから組み付けます。
カップ部・鋼球・コーン部それぞれにたっぷりとグリスを塗る |
グリスガンを購入しませんでしたので、グリスの容器から絞り出しながら直接塗り、さらに爪楊枝で均等になるように伸ばしました。前輪のダストカバーは左右どちらも同じ形ですが、後輪はスプロケット側と反対側で形が異なりますので注意が必要です。
グリスをたっぷりと塗りながら、順番を間違えずに作業すれば組み立ては簡単です。一番気を使うのが、玉当たりの調整作業でしょう。きつ過ぎればゴリゴリとして回転が渋くなり、ゆる過ぎればガタが出ます。車輪にガタが出るのは危険だと思いますので、ほんの少しゴリゴリ感が出るくらいが適しているそうです。ただし、玉押しナットでの調整がちょうどでも、その後に固定ナットを締め付けると調子が変わってしまうことがよくあります。分解する時に感じた「玉押しナットは手で回せる程度の締め具合なんだ」ということを思い出しながら作業しました。
玉押しナットは手で調整するくらいがちょうど良い(と思う) |
手で玉押しナットを締めていき、抵抗を感じたら上下左右に軸を動かしてみます。ここでガタツキを感じなければ、軸を回転してみます。ほとんどゴリゴリ感はないはずです。その状態で、玉押しナットが動かないように注意しながら外側の固定ナットを締め付けます。もう一度ガタツキと回転時のゴリゴリ感を確認して、問題なければ完成です。固定ナット締め付けの際に、玉押しナットの状態がずれてしまうことがありますので、最後の確認で納得できなければ玉押しナットの調整からやり直します。
これは何? 前輪ハブベアリングの中の謎の物体
前輪のダストシールを外した際に、細い糸くずのようなものが出てきました。ゴムや樹脂ではなく金属のような硬さです。旋盤から出てくる細いキリコのような物体です。ダストシールの下といえば玉押しが鋼球と常時触れている部分です。
前輪のダストシール下から旋盤のキリコのようなものが出てきた |
もしかして玉押し部分が摩擦で削り取られた金属屑なのかもしれません。そうだとすると玉押し部分のダメージは相当あると考えた方が良さそうです。鋼球に目立った傷は見当たりませんでしたが、もしかしたら偏摩耗しているかもしれません。5年間、2万5千キロもグリスアップ無しで走り続けた影響はこんな形で出てしまったのかもしれません(涙)。
逆に、メンテしなくてもここまで耐えてくれたことに驚きます。さすがシマノです。この耐久性に甘えることなく、これからは年に一回は分解してチェックとグリスアップをしてやりたいと思います。
心配な部品は交換してしまおうと思ったが....
交換用のホイールなど持っていませんので、心配しながら使用し続けるのは精神衛生上よろしくありません。シマノでは細かなパーツを単品で販売してくれます。怪しい状態の玉押しと鋼球をまとめて交換することにしました。シマノのホームページを見ると、スモールパーツというカテゴリで、鋼球や玉押しなどの構成部品が販売されています。
WH-6700前輪パーツ組立図(シマノホームページより引用) |
注文に必要な型番(商品番号)がわかればあとはサイクルベースあさひなどのネットショップで購入できるはずです。
注文に必要なコード番号もわかる(シマノホームページより引用) |
必要なのはロックナットユニット(Y4F898030)と鋼球(Y4BB98030)です。鋼球は22個入りなので、左右両方の分がセットになっています。玉押し側も左右同時に替えてしまえばより安心です。鋼球のパーツナンバーで検索すると、サイクルベースあさひやモノタロウなどで2〜3百円程度で売られているのが見つかりましたが、ロックナットユニットが見つかりません。古いホイールで、モデル変更された後続の製品(WH-6800)が発売されてからだいぶ時間が経っています。構造も大幅に変わっていますので、もしかしたらメーカー在庫が底をついているのかもしれません。どうしよ〜(;;)
本来の性能を回復! もっと早くメンテすれば良かった
整備後の試走も兼ねて百キロほどのルートを走ってきました。結果は劇的な変化です。客観的にお伝えできないのが残念ですが、ペダリングをしていない慣性走行時の速度低下が少ないため、次のペダリングで一層加速してくれます。新品の時はこうだったに違いありませんが、いつのまにか抵抗の大きな回転に慣れてしまっていたようです。外周2mちょっとのタイヤで百キロを走ると、ホイールはおよそ5万回転もします。まるでホイールを新調したかのような変化に大満足と、もっと小まめにメンテしなくちゃという大反省の試走となりました。
(2017年8月13日追記)
WH-6700の玉押しはメーカーにも在庫なし
近所の自転車店で傷のついてしまった玉押し(ロックナットユニット Y4F898030)と鋼球(スチールボール Y4BB98030)の取り寄せをお願いしてきましたが、玉押しの方がメーカーの在庫なしとのこと。さらに今後の生産予定もないそうで、流通しているものを見つける以外に入手の方法は無し。代替可能な別製品も存在しないそうで、完全に手詰まりに。今の状態で使い続けるしかなさそうです。もっとこまめにメンテしていればよかった(泣)。そろそろ新しいホイールを買えってことですね、これは。
(2017年9月4日追記)
こんにちは!初めまして。
返信削除自転車の前輪と後輪を盗まれたため、どうやって車輪を取り寄せて修理するのかを知るために検索していると、こちらの記事に出会いました。
自転車屋さんに持って行ったら、車輪の前輪と後輪を取り寄せるだけで200$かかる。チューブやタイヤ等も加えて工賃を含めると、少なくとも400$。それで、自転車のモデルから、そのモデルに応じた車輪を探し始めるも、見つからず。であるならば、規格違いの車輪とはどういうもので、モデル対応できる車輪はどういうものか…など、疑問が次々に湧いてきます。
自転車屋さんのお勧めは、アメリカのメルカリサイトのようなところで、220$程度のものを買って返すこと。でもなあ…大家さんに、ちゃんと修理して返した方が良いしなあ…
もし、こちらの修理について、こうやったらできるよ…いやいや、もうそれは買って返した方が良いよ、等のご意見を伺えたら嬉しいですが、初対面でこんな質問、ぶしつけですね。お許し下さい。