登山のために初めてハンディGPSを購入したのは2008年のことです。選んだのはガーミンのeTrex SUMMIT HC。等高線が表示できる純正の詳細地図がまだ高価で、サードパーティ製の英語表記の日本地図データを購入して使っていました。
最初に買ったガーミンeTrex SUMMIT HC |
地図表示できるGPS機器はサイクリングの必需品
登山は事前の準備や登山口までの移動に手間がかかり、そう頻繁には出かけられません。山に行けない時のトレーニングになるだろうと思い、ロードバイクに乗り始めました。自転車なら、天気さえ問題なければ、思い立った時にすぐに出かけられます。いつの間にか主従が逆転し、暇さえあれば自転車で遠出するようになっていました。ハンドルバーにハンディGPSを取り付けておけば、知らない場所でも現在位置を地図上で確認でき、一日の走行軌跡も記録できます。谷津道を探検しながらのサイクリングには、なくてはならない機器になっていました。
ハンドルバーにマウントしたハンディGPS |
二年ほど経った頃、使用中に時々電源が落ちる症状が出始めました。知らないうちにハンディGPSの電源が切れていて、その後の走行軌跡が残っていないということが発生。最初は電池の接触不良を疑い、電極の裏にゴムを挟んで電池と電極を密着させてみたり、電池が動かないようテープを巻いてみたりしましたが効果がありません。
電源は単三電池二本、ぴったりと収まっている |
そのうちにハンディGPSを軽く振ったりするだけで電源が切れるようになってしまいました。路面の段差で自転車が瞬間揺れただけで電源が落ちてしまうため、継続使用が不可能な状態に。電池とケース電極の接触の問題ではなさそうなので、機器内部の半田付け部分にひび割れでも生じてしまったのだろうと諦めました。高圧タイヤを履いているロードバイクのハンドル付近はすごい振動があります。登山で使用するハンディGPSですから、強い振動を継続して受けることを想定して設計していないのでしょう。二年間のロードバイクの振動に耐え切れなかったようです。やはり登山用や自転車用などの専用機器を使用するのが賢明なのかと反省しました。
利用目的に合わせた専用GPS機器に買い替え
サイクリング時に手放せなくなったGPSを買い換えることにしました。選んだのはサイクルコンピュータ機能も内蔵した自転車用のEdge800Jです。さらに登山用にeTrex 30Jも入手しましたので、えらい出費です。
持っているハンディGPS |
以前使っていた登山用GPSでは、自転車のケイデンスや心拍数などのデータは取れませんでしたが、サイクリング専用のEdge800JならGPS走行軌跡と共に記録されます。購入後すでに五年ほど使用していますが、振動によるトラブルも皆無です。やはり専用に設計された機器には安心感があります。登山用に使っているeTrex 30Jは準天頂衛星「みちびき」も受信可能ですので、上空が開けていない谷間などでもより少ない誤差で現在位置を特定できそうです。オートバイのツーリングや旅行などで軌跡ログだけを単純に残したい時には、安価で小型のGP-102を胸ポケットに放り込んで一日活動しています。価格も4千円程度で入手できるため、気軽にGPSデータを残すのに利用できます。
故障したeTrex SUMMIT HCを分解してみた
普段使用するGPS機器が揃いましたので、故障したeTrex SUMMIT HCを分解してみることにしました。ユーザーが分解するとメーカー保証の対象外となってしまいますが、保証期間はとっくに切れています。ネットの情報を参照しながら、スクラップ覚悟でバラしてみました。
1. まず裏の電池ブタを外します
電池を入れる際に開け閉めする裏蓋を外します。ここにネジでもあるだろうと思ったのですが、何もありません。上部のUSB端子のカバーも兼ねている、ケース外周を覆っているゴムが怪しいと睨みました。USBカバーを少しめくると、粘着テープで貼り付けられているだけだとわかります。
2. ケースを一周しているゴムカバーを剥がす
両面テープでケース外周に貼り付けられているゴムカバーを剥がします。破らないように注意深く剥がしていきます。
ゴムカバーの裏には突起が付いていて、これが本体横の操作ボタンを押します。元に戻す際にはボタンとこの突起の位置がずれないようにします。
3. 両面テープを剥がす
ゴムカバーの下には、両面テープが使われています。この両面テープも剥がしてしまいます。再利用は不可能ですので、途中で切れても気にせず剥がしてしまいましょう。出荷されてから時間が経っていますので、接着面がベトベトです。GPSの画面にベトベトがつかないように作業します。
4. 防水用のビニールテープも剥がす
5. 上下のケースを止めている爪を押しながら分解する
ここまでくるとケースの上下を止めているのは、左右に2箇所ずつと下部に1箇所ある爪だけです。精密ドライバーなどで爪を押しながら、ケースの上下を分離していきます。爪を押し込みすぎると折れてしまいますので、軽く押しながら上下のケースを離すように開けていきます。意外に簡単に開きました。
6. 完全に上下二つに分解できる
爪を押しながら上下のケースを開くと完全に二つに分かれます。電池ケースと回路基板の間に電線はありません。組み上げると端子が接触して通電する仕組みだったんですね。これでは振動に弱いはずです。
これで分解は完了です。静電気に弱い精密電子回路ですので、冬場にセーターなどを着ての作業はやめましょう。
さて、電池ボックスと回路基板の接続をどうするか
ケース下部の電池ボックスと上部の電子回路基板との接続は、ケースを組み上げると端子が接触するようになっています。電池側はステンレス?のバネ、電子回路基板側は金メッキされた端子があり、通常の使用では問題はなさそうです。
電子回路基板と電池ボックスの接続は接触式だった |
電子回路基板側の金メッキ端子を良く見ると、接触していた部分が凹んでいて、金メッキが剥がれてしまっています。自転車の振動を受け続けて、接触していた端子が金メッキ部分を削ってしまったものと思われます。
電子回路基板側の金メッキ端子が削れている |
電池ボックス側のステンレスバネを曲げて、少し位置をずらしてやれば、金メッキが残っている部分に接触してくれそうですが、いつまた接触不良が起こるかわかりません。いっそのこと電線で直接接続してしまえば心配も減ります。壊れたものと一度は覚悟した機器ですので、失敗しても諦めもつきます。基板に直接半田付けするという荒療治を選びました。
できるだけハンダが盛り上がらないように電線を直接半田付け |
やった〜 壊れたと思ったGPSが復活した!
配線に使った電線を電子部品で挟み込まないよう注意しながら、ケースの上下を閉めます。電池より上側に、銀色のGPSアンテナと思われる部分より下側に電線が収まるようにしました。端子部分にハンダと電線の厚みが加わりましたので、多少閉まりにくいですが、なんとか上下ケースの爪を止めることができました。
ケースを完全に占める前に通電テスト |
テープで上下のケースを完全に閉じる前に、電池を入れて通電テストします。ボールペンなどで電源ボタンを押してやると、何事もなく電源が入りました。この確認が済めばOKですので、分解の時と逆の手順で組み立てます。一般に売っているビニールテープでは幅が広すぎるので、ハサミで1cm幅くらいにして一周隙間のないように巻きつけます。この時、ケースの上下に隙間ができないように上下をしっかりと押さえながら巻きましょう。さらに両面テープも同様に巻きつけ、その上にゴムカバーを巻いて出来上がりです。
ゴムカバーについている操作ボタンを押してみます。ビニールテープが厚くなったせいか、操作感がだいぶ硬くなっていますが、仕方ありません。使用しているうちに馴染んでくるものと思います。電源投入後、叩いても、ケースを力任せにひねっても瞬断は起こりません。完治したようです(^ ^)
電源の瞬断はこの機種の持病だった
ネットで検索して見ると以前のeTrexシリーズでは、電源の瞬断に関する記事が山のように出てきました。どうもこの機種の持病のようです。電子回路基板のある上部と電池ボックスのある下部を配線することなく組み立てられますので、効率の良い生産が可能だと思いますが、板バネの力で接触しているだけですから、振動や腐食に対してはどうしても弱くなります。自転車用のEdgeシリーズは振動に対しての対策が十分に取られているようで、瞬断トラブルは聞いたことがありません。やはりそれぞれのアクティビティ用に作られた専用機器が安心だということがよく理解できた今回の出来事でした。さあ、復活したハンディGPSは何に使おうかな(^ ^)/
自作マウントで好きな自転車に取り付け
振動に対して一番デリケートな電池ボックスの接点を、ダイレクトに電線で接続してしまったので、耐振動性能は格段に向上したと思います。持っている三台の自転車のどれにでも好きなGPSが取り付けられるようにアダプターを3Dプリンターで自作してみました。せっかく修理できたeTrex SUMMIT HCを、TPOに応じて好きな自転車に取り付けられるようになり、ますます快適な自転車生活を送っています。
SUMMUIT HCのマウント取り付け部をEdgeシリーズと同じにするアダプターを自作 |
(2017年11月3日追記)