先日やっと完成させた出費1,650円の自作電熱ウェアの性能試験を実施しました。バイク雑誌やブログなどに掲載される電熱ウェアの評価レポートは、使用者の主観的な感想が中心になっていることが多く、なかなか複数のレポートを比較検討できません。できるだけ数値を用いた客観的な評価を心がけました。複数の温度ロガーを用いて、ウィンタージャケット内外の温度差を計測し、その保温性能を推定するという方法です。同様の手法でバイク用グローブの保温性能やブーツの保温性能の測定も実施済みです。
まず通電後のシートヒーター表面温度を計測
実際にバイクで走りながらのテストを行う前に、自宅で通電テストを行いました。走行中に火傷などしたら命に関わりますので、慎重に。電熱ベストの上にウィンタージャケットを着込んで、12Vを供給します。
自作の電熱ベストを着た上にウィンタージャケットを重ね着(かなり怪しい姿) |
シートヒーター表面に熱電対型の温度計を接触させて、経過時間と温度を記録しました。応答特性の良い熱電対型温度計は素早くヒーター表面の温度を計測できます。
実際の使用環境でヒーター表面の温度を測定 |
体温で温められ、ヒーター表面温度が35℃の時に電源オン。10℃上昇して45℃になったのは6分30秒後でした。その後は温度の上昇速度は低下し、23分後に約50℃に達して平衡状態となりました。このテスト時の室温は約20℃です。電熱ヒーターとしての温度上昇速度や最高温度はかなり控えめな数値です。実際に屋外で使用するには少しパワーが足りないかなという心配が残りました。
京葉道路の無料区間を周回しながら性能評価
この時期、バイクに乗っていて寒さがこたえるのは日没後の高速道路走行ではないでしょうか。本当は早朝が一番寒いのですが、私の場合そんなに朝早くバイクに乗ることはまずありません。今回も日の暮れた夕方6時から京葉道路の無料区間を周回しながら自作電熱ウェアの性能評価を行いました。
ウィンタージャケットの外側についている胸ポケットに入れた温度ロガーで外気温を計測、自作電熱ベストの内側に着ているカッターシャツの胸ポケットに入れた温度ロガーで内部温度を測定しました。ヒーターが測定器に接触しないようにセットします。使用機器や測定方法については別記事「冬用ジャケットの保温性能を数値で計測できるか」を参照してください。測定結果をグラフ化したものがこれです。サービスエリア内で夕食をとっている時以外は外気温は終始9℃以下、夕方8時過ぎには5℃以下の冷え込みとなりました。
京葉道路を周回しながらジャケット内外の温度を計測 |
お気に入りのPOWERAGEウィンタージャケットは高い保温性能を持つインナーが付属しています。電熱パワーを使わなくても、外気温が8度程度の時に内部温度は30度以上を保っています。しかし高速走行で連続して風を受けていると、ジャケット内部の温度だけでは表せない寒さを感じます。脚や腕からの冷えが、じわじわと寒さを感じさせます。ジャケット内部温度も少しずつですが下がり始め、辛くなって来た18時52分に自作電熱ベストのヒーターに通電を開始しました。
通電開始からじわじわとジャケット内部の温度が上がり始め、外気温が今までで最低の5℃を記録した時に、ジャケット内部は最高の37℃となっていました。内外温度差は32℃です。以前、電熱パワー無しの状態で計測したジャケット内外温度差の最高は20℃でしたから、これは驚異的な温度差です。もちろんジャケット内部の全てがこの温度になっているわけではありません。計測する場所で大きく異なりますが、前回20度の内外温度差を計測したのと同じ場所での値です。一枚あたり3Wと控えめな定格値のヒーターですが、サイズが大きく体へ接する面積が広いため、4枚のヒーターからの熱が上半身全体に伝わります。さらに、エンジンがかかっている時のバッテリー電圧は13V以上あることがほとんどです。12Vで3W仕様のヒーターですが、実使用時にはもっと発熱しているはずです。外気温5℃での高速走行という厳しい状況にもかかわらず、上半身だけはポカポカでした。市販品に比べて低いスペックですが、出費1,650円で作成した自作電熱ウェア、十分使えます。
日常的に電熱ウェアを安全・快適に使用するには、バイクからの給電方法にも注意と工夫が必要です。アマチュア無線機やナビの電源を取るためにシート下に配電ボックスを設置していますので、そこから電熱ウェアにも電力を供給しています。
大きな電流が取り出せるようにバイクのバッテリー端子から直接持ってきて、安全のためにヒューズを経由しています。無線機にノイズが回らないようにフィルターを入れ、メインキーと連動するようにリレーを入れてあります。バイクのキーがオフの時にも、テスト用に電源が取れるようにスイッチも設置しました。自動車のアクセサリーポジションと同じですね。ここまでやらなくても、バイクから電源を取る際には安全のためのフューズと確実な接続のためのコネクターは必須です。
この配電ボックスから自作の電熱ベストまでは二本のコードで接続します。一本はシート下の配電ボックスからガソリンタンク上まで。もう一本がガソリンタンク上のコネクターからベストのコネクターまでの接続用です。二本に分けることにより、乗り降りするときの接続、切り離しを容易にしています。
強力な磁石を貼り付け、傷がつかないように布テープを巻きつけたDCジャックをガソリンタンクにくっつけておけば乗り降りの際に簡単に脱着できます。
乗車の際にはカールコードを使用したもう一本のケーブルで、タンク上のDCジャックと電熱ウェアのプラグを接続します。カールコードは多少高価ですが、かなり伸び縮みしてくれるので安心して体を動かせます。
転倒時に接続コードが邪魔にならないように、電熱ウェア故障時にエンジン停止などが起こらないように、細心の注意が必要です。
厳しい実環境での性能試験の結果、自作の電熱ウェアでも十分実用性のあることがわかりました。ただし、試作品として作成しましたので、改善すべき点はたくさんあります。
配電ボックスやコード類がすでに用意済みだったこともあり、1,650円の出費で出来上がった自作電熱ウェアは十分満足できる性能を発揮してくれました。市販品が1〜2万円以上の費用がかかることを考えれば満足な結果ですが、脚や腕の寒さにはまだ対応できていません。これ以上を求めるならば車に乗ればという声も聞こえてきそうですが、バイクで少しでも快適に走りたいという欲求を満たすため、今後もアイディアと努力を惜しみなく注いでいきたいと思います。
バイクからの給電方法には注意が必要
日常的に電熱ウェアを安全・快適に使用するには、バイクからの給電方法にも注意と工夫が必要です。アマチュア無線機やナビの電源を取るためにシート下に配電ボックスを設置していますので、そこから電熱ウェアにも電力を供給しています。
シート下に配電ボックスを設置済み |
大きな電流が取り出せるようにバイクのバッテリー端子から直接持ってきて、安全のためにヒューズを経由しています。無線機にノイズが回らないようにフィルターを入れ、メインキーと連動するようにリレーを入れてあります。バイクのキーがオフの時にも、テスト用に電源が取れるようにスイッチも設置しました。自動車のアクセサリーポジションと同じですね。ここまでやらなくても、バイクから電源を取る際には安全のためのフューズと確実な接続のためのコネクターは必須です。
バイクに設置してある配電ボックスの回路図 |
この配電ボックスから自作の電熱ベストまでは二本のコードで接続します。一本はシート下の配電ボックスからガソリンタンク上まで。もう一本がガソリンタンク上のコネクターからベストのコネクターまでの接続用です。二本に分けることにより、乗り降りするときの接続、切り離しを容易にしています。
バイクから電熱ベストまでの接続ケーブル、二本に分離 |
強力な磁石を貼り付け、傷がつかないように布テープを巻きつけたDCジャックをガソリンタンクにくっつけておけば乗り降りの際に簡単に脱着できます。
配電ボックスからタンクまでの配線(磁石でDCジャックを固定) |
乗車の際にはカールコードを使用したもう一本のケーブルで、タンク上のDCジャックと電熱ウェアのプラグを接続します。カールコードは多少高価ですが、かなり伸び縮みしてくれるので安心して体を動かせます。
タンクから電熱ウェアまではカールコードで接続 |
転倒時に接続コードが邪魔にならないように、電熱ウェア故障時にエンジン停止などが起こらないように、細心の注意が必要です。
自作電熱ウェアの要改善点
厳しい実環境での性能試験の結果、自作の電熱ウェアでも十分実用性のあることがわかりました。ただし、試作品として作成しましたので、改善すべき点はたくさんあります。
- 完全にオフにするスイッチが必要
モーター用のスピードコントローラーを温度制御用に流用しましたので、消費電力を完全にゼロにすることができません。別途電源をオン・オフするスイッチを入れる必要があります。 - コントローラーをきちんと納める
電熱ベスト下にブラブラさせているコントローラーをきちんと固定してやる必要があります。 - 両面テープが剥がれる
発熱体を接着するようにできていないのか、カーペット用の両面テープが剥がれてきます。別のタイプの両面テープが必要なようです。次の改善項目とも関係してきますが、両面テープで貼り付けるのではなく、ベストに設けたポケットにヒーターを納めるような構造にすれば完璧です。 - ジャケットを脱いだ時にも違和感がないようにしたい
メッシュ状の黄色い反射ベストの内側にシートヒーターと配線コードが透けて見える構造ですので、休憩中にジャケットを脱いだら実に怪しい風体となります。下手をすると自爆テロ犯に間違えられそうな格好です。見た目の改善が必要です。
配電ボックスやコード類がすでに用意済みだったこともあり、1,650円の出費で出来上がった自作電熱ウェアは十分満足できる性能を発揮してくれました。市販品が1〜2万円以上の費用がかかることを考えれば満足な結果ですが、脚や腕の寒さにはまだ対応できていません。これ以上を求めるならば車に乗ればという声も聞こえてきそうですが、バイクで少しでも快適に走りたいという欲求を満たすため、今後もアイディアと努力を惜しみなく注いでいきたいと思います。