2016年3月12日土曜日

快適バイク生活 また始まった年度末の交通違反取り締まり


 昨年3月にネズミ捕りに引っかかり人生二度目の赤キップを頂戴してから一年が経ちました。春と秋の全国交通安全運動週間以外に、年末の12月と年度末にあたる3月は交通違反の取り締まりが厳しくなります。とりわけ行政年度の最終月である3月は、一年分のノルマ達成のため必死の捕り物劇が行われています。昨年3月に悔しい思いをしてからというもの、レーダー付きナビの警報に怯えながらひたすら耐えてきました。まるで一年間ずっと運転免許センターで検定試験でも受けているかのような気分です。4月には行政処分後一年が経過しますのでそれまでの辛抱ですが、3月に入り交通取り締まりを目撃する機会が急増しています。

 バイク乗車時ばかりでなく、サイクリングの途中にも度々取り締まりを見かけます。小回りの効く自転車では「え〜、こんなところで」という絶妙な場所に警察官が潜んでいるのを目撃して感心する事もしばしば。

自転車はメインのターゲットではないので比較的安心して接近できます

大きな道から脇道に左折したところや、高速道路から降りて一般道に合流した後などでは、比較的頻繁に取締りが行われています。運転者の心理を巧みに読んで、つい違反してしまう場所を敵は熟知しているに違いありません。

国道14号の幕張IC近く、止められた理由は不明

大勢の警察官で一斉に行われる大規模な取締りはレーダーナビのGPS情報などで警告が現れるため、注意していればほとんどは無事に通り過ぎることができます。ただしいつも同じ場所でやっているとは限りませんので、最悪の場合を考えていつもより速度を控えるようにします。防災より減災の考え方です。制限速度+15キロ程度のメーター読み速度を上限にして走っていれば、仮に速度超過で捕まっても一発免停はありません。
 飲酒運転の取り締まりについては言わずもがなでしょう。とてもあんな重たいバイクに酔っ払って乗る気が起こりませんが、飲酒運転は犯罪ですから絶対ダメ。

国道126号野呂町付近、準備中?

注意しなければいけないのは単独のパトカー、白バイ、警察官の張り込みです。その場所特有の犯しやすい軽微な違反を狙って待ち構えています。一時停止違反通行区分違反、通学路での時間による通行禁止違反などは何の計測道具も持たずに現行犯でお縄にできます。ここはひたすら遵法運転しかないでしょう。さらにいつもより動作を大袈裟にして、検定試験でも受けているかのように振る舞えば盤石です。一時停止の際には必ず左足を着地することは言うまでもありません。見張っている警察官に遵法運転している事をアピールします。

ただし、いくら遵法運転を心がけていても道路標識を見落としたら完全にアウトです。学校近くの通学路は時間帯による通行禁止の場所がたくさんあります。その標識には文字で時間帯も書いてあるのですが、初めての場所で正確に内容を認識するのはかなり困難です。気づいたとしてもすでに通行禁止場所の直前で、Uターンできない事もあります。初めての場所では住宅地の中や学校のそばは走らないに越したことはありません。

国道16号浜野付近、通行区分違反か

信号の変わりかけに交差点に入るのも要注意です。この時期は安全を考えて黄色が見えたら必ず止まったほうが無難です。無理に突っ切ると信号無視として交差点の先でサイン会場に招待されてしまいます。白バイによる取り締まりでは左側追い越しも多いそうです。左車線に進路変更したら少し我慢して、しばらくの間並走した後に追い抜きをすれば言い逃れできる(かもしれません)。

バイクには関係ありませんが、シートベルトや携帯電話も簡単に取り締まり件数を稼げる美味しい案件です。これを狙って街中のスピードが出せない道路の陰に1〜2名の警官が潜んでいますので、彼等の見ている前で一時停止違反などをやらかさないよう気をつける必要があります。

 溢れるパワーの大型バイクではちょっと気を許すと、あっという間に簡易裁判所行き速度になってしまいます。絶えず抑制した運転をしているとストレスが溜まりますが、スピードではなく加速とバランスコントロールを楽しめる大人のライダーを目指したいと思います。



千葉県警の昨年度反則金ノルマは未達か?


 年度末3月の反則金ノルマ達成集中取り締まりも終わり、新年度を迎えて春の交通安全運動と不慣れなドライバーが一斉に動き出すゴールデンウィークも無事に過ぎました。取り締まりも一段落したのかと思っていたら、最近至る所でパトカーや警察官が隠れて取り締まりしているところを発見します。交差点や踏切の一時停止場所近くで、ドライバーの死角に潜んで待ち伏せしているのをサイクリングの途中で度々目にしました。

もう五月なのに例年になく取り締まりを目にする

千葉の市街地はもちろんのこと、かなり郊外の交通量の少ない県道沿いにもバイクの警察官が隠れていました。見かけるのはほとんど午前中です。もしかして昨年度の反則金ノルマが未達だったため、『県警一丸となって午前中は交通違反の取り締まりにあたれ』という上からの指示でも出ているかのようです。いつまでたっても気が抜けない千葉県の交通違反取り締まり状況です。

(2016年5月19日追記)


2016年3月10日木曜日

房総酒蔵バイクツーリング ♫月の沙漠をは〜るばると〜御宿の岩瀬酒造へ


 3月に入ってもまだまだ房総の酒蔵から新酒が出荷されています。御宿町の岩瀬酒造からしぼりたて生が出荷されたとの情報を千葉県酒造組合のホームページで見つけ、早速バイクを走らせました。「♫月の沙漠をは〜るばると〜」で有名な御宿海岸は何度も訪れたことがある場所です。

月の沙漠の歌碑とラクダ像
御宿の砂浜にある有名なラクダの像と月の沙漠の歌碑

そもそも何でここが砂漠?との思いをずっと持っていましたが、「砂漠」ではなく「沙漠」が正しいんですね。ラクダ像のすぐ近くにある月の沙漠記念館に初めて入ってみました。ここは月の沙漠を作詞した加藤まさを(1897年〜1977年)に関する展示が中心です。いろいろ物議を醸した「ふるさと創生事業」で建てられた施設だそうで、展示内容に比べて入館料400円はちょっと高め。「沙」には砂浜の意味があるそうです。病気療養のために御宿に滞在していた詩人・画家の加藤まさをが御宿の砂浜をモチーフに作詞したのが月の沙漠だとのこと。水のないただの砂だらけの砂漠とは違うんですね。

月の沙漠記念館と加藤まさを像
月の沙漠記念館前の加藤まさを像

海風が強く、絶え間なく波が押し寄せる砂浜にはたくさんのサーファーがいました。バイクを長時間潮風に当てていると錆びそうなので、そそくさとJR御宿駅近くの岩瀬酒造を目指します。

御宿海岸とCB1300
強い海風が吹き付ける御宿の砂浜

 前回岩瀬酒造を訪れたのは2015年5月です。その時は蔵の中も静かで、事務所兼売店にも人はいませんでしたが、今回は大勢の人が働いています。バイクでやってきた変な客に代わる代わる声をかけてくれました。やっぱり新酒の時期の酒蔵は活気があって楽しいですね。
 敷地に入って最初に目につくのは煙突と藁葺き屋根の母屋です。この母屋の梁は慶長14年(1609年)にメキシコに向かう途中御宿沖で難破したスペイン船サン・フランシスコ号の帆柱が使われているそうです。乗組員373名のうち生き残った317名は御宿の人たちに救助され、翌年江戸幕府の船で無事にメキシコに渡航できたとのこと。最近映画化されて有名になった和歌山県串本町に伝わるトルコ軍艦エルトゥールル号遭難事件と同じようなことがここ房総の御宿でもあったんですね。知りませんでした。

岩瀬酒造の母屋と煙突
母屋は藁葺き屋根、歴史がうかがえる岩瀬酒造

事務所兼店舗には販売されている酒がずらりと並んでいます。どれも見ているだけでヨダレが出そうですが、お目当ては3月に出荷されたばかりの限定しぼりたて生です。

岩瀬酒造売店
ずらりと並ぶ酒に目移りしそう

蔵の人にお願いして「岩の井」純米吟醸と「岩の井」純米にごりのしぼりたて生を持って来ていただきました。どちらもしぼりたての生酒です。瓶詰め直後に冷蔵保存されたものを購入しました。瓶詰めされたばかりの生酒を手に入れられるのは、やっぱり酒蔵を直接訪問する醍醐味です。

岩の井しぼりたて生
しぼりたて生「岩の井」の純米にごりと純米吟醸

好きなバイクでツーリングを兼ねて酒蔵を訪問し、しぼりたての生酒を買って帰れるなんてなんという贅沢でしょう。試飲できないことだけが唯一の心残りですが、初めて飲む酒の味に思いを巡らせながらバイクで家路を急ぐのもまた乙なものです。

 帰宅後に早速「岩の井」純米にごりの方から開けてみました。横にして持ち帰れない活性酒ではないので炭酸が噴き出すようなことはありませんでしたが、澱が醸し出す甘みに溶け込んでいる炭酸のかすかな刺激が加わりしぼりたて感全開です。クセがなく飲みやすいため、チビチビやっていたら五合近くも飲んでしまいました。やっぱりしぼりたて生は危険です。旨いからって飲み過ぎ注意ですね。



勝手に「房総の地酒」を応援するTVコマーシャル風動画を作ってみました


個性ある房総の地酒の良さが少しでも伝われば幸いです。





房総酒蔵バイクツーリングのインデックスはこちら


房総酒蔵マップ
千葉にある約40軒の蔵元を順に巡っています。青色の酒蔵マークをクリックすると該当する投稿記事にジャンプします。







2016年3月8日火曜日

房総酒蔵バイクツーリング 久留里の名水を楽しんでから命の水を探しに小泉酒造へ


 いよいよ春らしくなってきてバイク乗りには体が疼く季節の到来です。酒蔵訪問の途中でちょくちょく見かけていた久留里の名水を初めて訪ねてみました。ここは平成の名水百選として2008年に環境省が選定した場所です。久留里の街中に上総掘りで掘られたたくさんの自噴井戸があり、誰でも自由に水を汲むことができます。

久留里の街中にたくさんの名水スポットがあります

一番立派なのはJR久留里駅前にある水くみ広場です。久留里観光交流センターの前で、大きな無料の駐車場もあり車でのアクセスが超便利。訪問した時も大量のペットボトルに水を詰めている人たちがいました。

久留里駅前の水くみ広場にある名水スポット

久留里街道沿いには藤平酒造や須藤本家、吉崎酒造などの蔵元がありますが、各蔵元が酒造りに使っている井戸水を一般に開放しています。酒を買わなくても自由に水を汲んで帰ることができます。

 久留里街道を少し久留里城の方に移動するとすぐに別の名水スポットにたどり着きます。街道沿いの北側にあり、走っているとすぐにわかります。ここは個人所有の自噴井戸から湧き出ている名水を一般に公開している場所です。車が二、三台停められるスペースもあり水汲みに訪れるにはとっても便利。

久留里街道沿い北側にある田丸家の名水スポット

 街道を挟んで斜め向こう側には別の個人所有の井戸がありました。久留里の街はいたるところに名水が湧き出しています。周囲は米作りも盛んですから酒蔵が多いのもうなずけます。

街道の南側にある川名家の名水スポット

どの名水も流れてくる地層は一緒ですので味は似ています。まろやかで飲みやすい軟水で、米を炊くのに適しているとのこと。まだまだ久留里には自噴井戸がありますが、水でお腹がパンパンになてしまうので次は命の水を探しにバイクを走らせました。

 無料になった房総スカイラインを通ってたどり着いたのは君津市にある小泉酒造です。昨年1月に水仙を見に佐久間ダムに行った帰りに立ち寄った酒蔵で、今回が二度目の訪問。観光バスが複数台停められる大きな駐車場を備えた売店を持ち、ソムリエハウスと名付けて観光客を呼び込んでいる房総の酒蔵では珍しい蔵元です。

広大な駐車場を備えたソムリエハウス酒匠の館、小泉酒造の直販店です

広い店内には蔵で醸造された日本酒の他、土産物などもたくさん並べられています。試飲コーナーには出来たばかりのうまそうな新酒がずらりと並んでいて、喉が鳴りましたがバイクのため我慢。最近飲み過ぎ気味なので、本醸造しぼりたて「東魁盛(とうかいざかり)」の四合瓶を購入しました。

本醸造しぼりたて「東魁盛」

 帰宅後に早速味見してみました。本醸造の生酒らしく濃厚な口当たりです。冷やでもぬる燗でもいけそうな味。純米酒や吟醸酒もいいですが、親しみやすい本醸造も旨いですね。



勝手に「房総の地酒」を応援するTVコマーシャル風動画を作ってみました


個性ある房総の地酒の良さが少しでも伝われば幸いです。





房総酒蔵バイクツーリングのインデックスはこちら


房総酒蔵マップ
千葉にある約40軒の蔵元を順に巡っています。青色の酒蔵マークをクリックすると該当する投稿記事にジャンプします。







2016年3月6日日曜日

谷津道探検サイクリング 東金崖線を超えて雄蛇ヶ池まで


 走りやすくて自然豊かな谷津道ですが、川沿いだけではどうしてもたどり着けない場所があります。川の源流部の先、分水嶺を越えたところに行こうとすると谷津道からしばし離れて進むしかありません。東京湾沿いの千葉市中心部から下総台地にある昭和の森までは谷津道を中心にして快適なルートを見つけることができました。しかしさらに東の九十九里浜方面まで足を伸ばそうとすると、東金付近を南北に走る東金崖線が行く手に立ちはだかります。一気に標高差50〜60メートルの下りがあり、大きな国道や県道以外になかなか良いルートが見つかりません。さらに急な登りとなる帰路を考えると、東金の崖を下る勇気が出ませんでした。

 先日昭和の森から東金崖線の下にある小中池まで足を伸ばしてみましたが、帰りの登りもなんとか足が持ちました。これに気を良くして、今回は東金ICの東にある雄蛇ヶ池まで行ってみました。千葉市内から国道126号を走ればそのまま東金ICへ行けますが、大型車が多い片側一車線の国道はサイクリングでは最も使いたくない道です。ゴルフ場と大規模な宅地が拓かれた季美の森まで谷津道をたどり、その後一気に崖を下りました。

初めての雄蛇ヶ池
東金崖線の下にある雄蛇ヶ池、自転車で初めて来ました

崖を下ると地形は一変します。広い田んぼが増え、道路の勾配も緩やかになります。雄蛇ヶ池は江戸時代に作られた農業用の貯水池です。ぐるっと一周回れる遊歩道があり、ウォーキングを楽しんでいる人が大勢いました。小中池は釣りが禁止されていますが、ここは大丈夫です。

雄蛇ヶ池案内図
十和田湖に形が似ている雄蛇ヶ池、房総の十和田湖とも呼ばれているそうです

水深は4メートル程度の浅い池だそうですが、なんとなく神秘的な雰囲気が漂います。この池に伝わる幾つかの悲話もあり、心霊スポットとして有名なのもうなずけます。

雄蛇ヶ池で水を飲む野良猫
野良猫が池の水を飲んでました

周りの田んぼよりやや高い場所にあるため池の周辺を走ると適度なアップダウンが楽しめます。あちらこちらにある切り通しを走るとこの地区の地質が一目瞭然です。

雄蛇ヶ池付近の切り通し
池の周りの切り通しの道

途中、山あいの田んぼや池が赤くなっているのを目にしました。最初は散った紅梅の花びらかと思ったのですが、びっしりと隙間なく赤くなっている水面を見ると花びらではなさそうです。

雄蛇ヶ池付近の一面真っ赤な田んぼ
田んぼが一面赤くなっていてびっくり

近付いてよく見ると、小さな浮き草が一面を覆っています。浮き草で緑色になった池は見たことがありますが、こんな色の浮き草は見たことがありません。

田んぼを赤くしているアゾラ(オオアカウキグサ)
小さな浮き草がびっしりと水面を覆っていて一面赤色

帰宅後に調べてみると、オオアカウキグサという植物であることがわかりました。アゾラとも呼ばれています。この浮き草、共生するバクテリアの働きで空気中の窒素を固定してくれるため肥料として役立っているそうです。田んぼにレンゲソウ(ゲンゲ)を植えるのと同じ効果があるのですね。中国、東南アジアでも稲作の肥料として利用されている植物で、日本でも以前は普通に利用されていたそうですが、化学肥料が広まると自然に姿を消していったとのこと。在来種は環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されていると知り驚きました。

 帰りはどのルートを選んでも最初に急な上り坂が待ち構えています。たまたま選んだ細い道は山を直登していて、坂の途中で自転車を押して歩く羽目になりました。やっぱり東金崖線は只者ではありません。Google earthで標高グラフを見てみると東金崖線と雄蛇ヶ池の間は一気に標高が変わっていて、最大18%くらいの激坂になっています。きついはずですね。

東金崖線から雄蛇ヶ池までの標高差 ©Google

車やバイクでこの辺りの道路を走っていてもかなりの勾配があることに気づきます。自転車にはきつい坂道ですが、ほとんど車の来ない裏道を見つけ、ゆっくりと走ってなんとか乗り切りました。

東金付近を通る高速道路
山や崖の合間を縫うように走る東金付近の高速道路、自転車はここを横切る道を進む

 東金の崖を行き来する快適な道さえ見つければ、そこから先の九十九里浜までは好きなルートを選べます。季節も良くなるこれからは千葉市から太平洋まで走ることが多くなりそうです。



 東金崖線の上部にある季美の森から一気に坂を下ったところにある雄蛇ヶ池までのルートをGoogle Earth Proで作った空撮映像とGoProの実写映像を使って紹介してみました。サイクリング時の雰囲気が伝わるでしょうか?


(2016年3月14日追記)


2016年3月4日金曜日

東日本大震災後に自転車で撮った近所の写真を改めて見直してみました


 あの大震災からもう五年が経ちます。地震発生当時は出張先の大阪から帰る途中で、静岡付近を走る新幹線の中でした。トンネルの中で突然車両が停止し、長い揺れを感じながら一時間以上もそのまま。運転再開後も発進と停止を繰り返し、五時間遅れの夜八時にやっと東京駅にたどり着きました。そこから先の電車は全て運休で、駅舎内は人でいっぱいです。周辺の道路を埋め尽くした車はピクリとも動かない状態のまま。緊急車両のサイレンが虚しく響く中、大勢の人たちが無言で帰宅を急いでいました。地震による目立った被害は出ていない首都圏でしたが、いとも簡単に社会が麻痺するのを目の当たりにしました。徒歩で船橋の自宅にたどり着いたのは空が明るくなり始めた頃です。

 震度5弱の揺れで済んだ自宅に被害はありませんでした。家族も無事で、水や電気などのライフラインにも支障はありません。ホッとしながらもテレビから流れてくる映像に驚きの連続でした。その後しばらくの間、慣れ親しんだサイクリングコースを走る度に目に入る地震の爪痕を写真に残してきました。被害のない自宅からさほど離れていない場所でも、地盤の違いからかかなり大きな被害が出ているところがあります。五年経って改めてその時の写真を見直してみました。

利根川支流の堤防上の道、地割れで走れなくなっていました

 川の下流域は地盤が軟弱なのか、かなりの被害が発生していました。利根川の両岸の堤防にも所々亀裂が入り、今大雨が来たらやばいだろうと心配になるような状況です。この地域の民家は古い農家が多く、大半の家の屋根瓦が崩れ落ちています。雨対策のためブルーシートで屋根を覆った民家があちらこちらに点在していました。

屋根が落ち、ブルーシートをかけた民家が点在

東京ディズニーランド近くの浦安へ行ってみると、電柱が斜き地下から吹き出した砂が道路上に散乱しています。道路が波打っていたりマンホールが路面から浮き上がっている場所もあり、ところどころ通行止になっていました。

電柱が斜めになっている浦安付近

首都圏のベッドタウンとして急速に発展した浦安には真新しい家が立ち並んでいますが、液状化で家が傾いたりライフラインが全て使えない状態になっていました。どの家も応急の対応に追われていたようです。

新しい住宅が立ち並ぶ浦安、液状化後の対応に追われています

浦安のすぐ横を走る首都高湾岸線を横切る歩道橋を渡っていたら、広大な道路上を車が一台も走っていません。3月11日の揺れで一旦全線通行止めになった首都高ですが、湾岸線の葛西〜新木場区間は22日まで補修のため通行止めが続きました。物流の大動脈としてひっきりなしに大型トラックが行き交うこの道に一台も車が走っていない光景を見たのは初めてです。

工事関係の車両しかいない広大な首都高湾岸線葛西付近、初めて見る光景です

江戸川サイクリングロードからよく見える東京スカイツリーにも足を伸ばしてみました。当時はまだ開業前で、大きなクレーンが上部に乗ったままのタワーがどうなっているのか気になりましたが、さすが日本の技術の粋を集めた建造物です。何事もなかったかのように工事が継続されていたのには驚きました。

完成間近の東京スカイツリー、大震災でも無事でした

 こうして当時撮影した近所の写真を改めて見てみると、震度5〜6強の揺れだった東京や千葉県でも場所によって被害の程度が大きく異なることがわかります。さらに揺れによる直接の被害がない場所でも、その二次災害として液状化による上下水道の停止や電気、ガスの供給停止などライフラインに甚大な被害をもたらし、その後の生活に多大な影響を与えました。

 公共交通機関が安全を最優先するために一斉に運休したことにより、代わりに使われた車が首都圏のターミナル駅付近に殺到して見たこともない大渋滞が発生しました。最近では大雨や爆弾低気圧などの異常気象発生時に、安全を考慮して運休や間引き運転を決めた鉄道が却って混乱の原因になるケースがありました。ある程度予測の可能な気象現象の際にもこれだけの混乱を引き起こしているのですから、突然やってくる大地震の場合はさらにレベルの違う備えと対応が必要だと感じました。


被害の大きかった福島・宮城も訪問してみました


 後日、最も震源に近かった福島県や宮城県を訪問するチャンスが出来たため、少し足を伸ばして被災地を訪れてみました。

 福島県相馬市を訪れたのは震災の一年半後です。最短距離である常磐自動車道は原発事故の影響で通行止めが続いていたため、内陸を走る東北自動車道からアクセスしました。山間部を越えて海に近づくにつれて景色は荒涼たる一面の平野になります。草がぼうぼうと生えていてまるで昔からの荒れ地に見えますが、よく見ると建物が流された家の土台や折れた道路標識などが残っていて、以前ここが住宅地や市街地であったことを物語っています。倒れた松川浦漁港の道路標識の先に、有名な松林が跡形も無く流された砂州を目にして改めて津波の恐ろしさを感じました。

道路標識が津波で押し倒された福島県相馬市の松川浦

 第一回のツールド東北に参加して宮城県石巻市の被災地を自転車で走り抜けることもできました。すでに大地震発生から二年半以上も経っていましたが、倒れたビルがそのまま残されているのを見て津波の威力を思い知らされました。住宅を失った地元の皆さんが仮設住宅の前で手を振って応援してくれる姿に、こちらの方が力をいただいているようで胸が熱くなったのを覚えています。

ツールド東北で駆け抜ける女川の街、津波で倒れたビルがそのまま残る

 翌年の第二回ツールド東北にも参加し、車で帰宅する際にやっと通行できるようになった国道6号を走ってみました。放射線量がまだ高く、バイクは走ることはできません。車も特別に許可を取得した場合を除いて途中で停車することは許されず、写真を撮ることもできませんでした。福島第一原発近くの浪江町、双葉町、大熊町に入って目にした光景は今でも忘れられません。国道沿いのコンビニ、ガソリンスタンド、食堂などが全て地震発生時のままの姿で残されていました。まるで映画のセットのような光景です。原発への道路封鎖を監視している警備の人以外、国道沿いには誰もいません。過疎で住民のいなくなった村とは異なる、本当のゴーストタウンを見た思いでした。

 東北地方の桁違いの被害状況に胸を打たれながらも、あまりにも脆弱な首都圏で次の災害にどう備えるべきなのか思いを巡らせるきっかけになりました。


五年が経過して


 つい最近、千葉県柏市の大堀川沿いをサイクリングしていたら放射線量が基準値を超えているため河川敷への立ち入りを禁止する看板を目にしました。

柏市の大堀川に放射線についてのお知らせが今も出ている

福島の原発から遠く離れた千葉県ですが、事故直後の風で柏市周辺にかなりの放射性物質が飛来したそうです。わずか20〜30キロしか離れていない自宅周辺では全く騒ぎになっていませんが、柏市では震災直後から除染作業やら、廃棄物の処理やらで色々大変な事態が続いています。

 今もこうして災害の爪痕が残っている場合は何年経とうが忘れることはありませんが、大きな被害のなかった自分の身の回りでは当時感じた災害への備えの重要性が忘れかけられているようです。保存用の飲料水も当初は一年おきに取り替えていましたが、今はすっかり交換を忘れています。非常持ち出し袋も家庭に合わせたものを準備しようと思ったままで、未だに必要なものが家の中にバラバラに置いてあります。そうこうしているうちに次の災害がやってきてしまうんですね。反省しきりです。