2017年11月5日日曜日

捨てなくてよかった SONYのFMチューナーST-S333ESXIIが復活


 iPhoneなどで手軽に楽しめるネットオーディオ全盛の昨今、従来型のオーディオ機器を買うことはほとんどなくなってしまいました。10〜20年以上も前に購入した重量級のコンポーネント製品を大切に使い続けていますが、だいぶ年月が経って故障も増えてきました。プリメインアンプのDENON PMA-2000IVが故障した際は、修理するまでの代役で設置した二千円程度のデジタルアンプキットの音が存外に素晴らしく、いつの間にか主役に。壊れた重量級アンプはそのままオーデォラックの飾りになっています(^ ^)


24年間使ったソニーのFMチューナーが故障


 音楽ソースとしてFM放送は手放せない存在になっています。N響のライブ放送などは他の媒体ではなかなか楽しめません。1988年に当時最新鋭のSONY AM/FMチューナー(ST-S333ESXII)を手に入れてFM放送を楽しんできました。

30年近く前に購入したソニーのAM/FMシンセサイザーチューナーST-S333ESXII

しっかりとしたアンテナを繋げば、当時としては驚くほどのクリアな音やステレオ感が楽しめるチューナーでした。当初はカセットにアナログで、その後DATやSDカードにデジタルでエアチェックを楽しんできました。お気に入りのチューナーだったのですが、24年程経った2012年頃から、ステレオにならなくなったり、時々ミュートされて音が途切れたりするようになり、音楽の鑑賞にはとても耐えられない状態となっていました。

ST-S333ESXII故障の状況

調子が悪くなる少し前に、この機種の修理サービス終了がソニーから発表されていましたので、仕方なく新しいFMチューナーを探しましたが、当時ほとんどのオーディオメーカーはハイエンドのFMチューナーの開発と販売を行なっていませんでした。唯一見つけたのがAccuphaseのT-1100です。フルデジタル処理のFM専用チューナーで、めちゃくちゃ高価でしたが、FM放送を高音質で楽しむために思い切って購入に踏み切りました。

Accuphase T-1100を後継系として購入

思い返してみれば、ちゃんとしたオーディオ用のコンポーネント製品を購入したのは、5年前のこのFMチェーナーが最後となりました。その後、ヘッドホンなどの小物の購入はありますが、こんな高額なものの購入は一度もありません。


ST-S333ESXIIはAM専用にしていたが、やっぱりFMが聴きたい


 買い換えた当初は、オーディオラックのスペースを空けるため、故障したソニーのチューナーは廃棄する予定でした。しかし、AMの受信は何の問題もなかったため、T-1100では聞けないAM放送受信用としてオーディオラックに残しましたが、ほとんど電源が入ることはなし。一方のT-1100は、電波を受信してから復調までフルデジタル処理されているため、そのままSDカードレコーダーにエアチェックできます。再生する時に好みのDACで音作りが楽しめるため、メインシステムとして大活躍しています。

 FM電波はケーブルテレビの再送信サービスを経由して受信しています。強力なテレビ帯域の影響をできるだけ避けるために、FM帯域のバンドパスフィルターを入れてT-1100に接続してあります。T-1100についているマルチパスメータを見ても、ほとんどマルチパスはありません。快適な受信環境で、素晴らしいFMの音が楽しめています。

 人間の耳というものは長年聴き慣れた音を忘れないようです。20年以上もST-S333ESXIIで聴いてきた東京FMのジェットストリームが、T-1100だと違って聴こえてくるため、何と無く違和感がありました。クラシックなどではT-1100で何の不満もありませんでしたが、ST-S333ESXIIのFMの音も蘇らせたいとの思いが募り、修理の方法を探り始めたのは最近のことです。そんな時に見つけたのが、メーカーがすでに修理サービスを終了してしまった多くのFMチューナーを復活させている「ひろくんのホームページ」です。記事を参考にしながら、故障したソニーのチューナーの内部を覗いて勉強してきました。

整然としたST-S333ESXIIの内部、素人にも見やすい部品配置

ST-S333ESXIIの保守・調整記事を何度も読んでいるうちに、何と無く問題点も見えてきました。MUTINGとAUTOチューニングをオフにして、ダイヤルで周波数を変えていくと、本来の放送周波数から0.2MHz離れた所で、ステレオインジケーターが点灯します。これは記事にもあった同調点のズレが原因だろうと思い、調整にチャレンジしてみることにしました。


IF回路のFM同調点トリマーを調整したらバッチリ


 アマチュア無線をやっていますので、ダブルスーパーやトリプルスーパー受信機のIFTを適当に回してしまったら、とんでもない状態になることは知っています。ひろくんのホームページでは標準信号発生器を使って、調整のために必要な電波をチューナーに入力していますが、そのような高価な機器は持っていません。同調点の調整だけなら、実際のFM放送を受信しながらでもできると考えて挑戦してみました。回すべきIFTの番号や、測定すべき箇所についても詳しく説明されていますので、大変助かります。

同調点の調整はIFT205を回すだけ

IF用IC LA1235の7-10番ピン間の電圧を測りながら、IFT205をゆっくり回すとテスターの値が変化します。この値が最小になるように調整したところ、本来の放送周波数で、ステレオインジケーターが点灯するようになりました。

正しい周波数でステレオインジケーターが点灯するようになった

東京FM以外の放送局でも同様に、正しい周波数でステレオになってくれます。MUTING動作も正常になり、基本的な受信動作は問題なくなりました。たった一箇所のズレでも使い物にならない状況を引き起こすんですね。さすが精密機器です。ひろくんのホームページでは、FM同調点調整以外にもフロントエンド・PLL・MPXなどの調整方法が紹介されています。チャンネルセパレーションや歪みなどにも影響する調整のようで、ぜひやってみたいのですが、満足な測定器もないままにいじるととんでもない結果になりそうですので、これ以上はやめておくことにしました。しばらくこの状態で、深夜零時からのジェットストリームをじっくり聴いてから、今後の方針を決めようと思います。

 すでに購入後29年も経過したソニー製のFMチューナーですが、ジャンルによっては最新モデルのT-1100よりも聞きやすい音を出してくれます。T-1100購入後、一度は処分しようかと思ったST-S333ESXIIですが、捨てなくて本当に良かったと思っています。



ステレオ時のヒスノイズが気になったので調整範囲を拡大


 FM同調点の調整だけでFMステレオ放送がちゃんと受信できるようになり、しばらくその状態で利用していましたが、クラシック番組などで演奏が始まる前になんとなくヒスノイズが気になっていました。故障する前にSDカードにデジタル録音しておいたものと聴き比べると、以前は全くヒスノイズは出ていません。モノラルにするとヒスノイズは気にならなくなります。これは同調点以外にも調整が必要だと感じました。FMステレオ用の信号発生器などありませんので、先ずは代わりになる機器類の準備です。PLL制御で周波数が安定していて、パイロット信号のオンオフが可能な秋月電子のNS73M使用FMステレオ・トランスミッター・キットを入手して組み立てました。

秋月電子のFMトランスミッターキットを利用

さらに、1KHzの信号発生と受信音のスペクトル表示のためにefu氏のフリーウェアWaveGeneWaveSpectraを利用させていただきました。この二つはWindows XPパソコンの頃から便利に利用させていただいている大変優れたソフトです。これ以外にオシロスコープとテスターも用意していざ再調整開始です。PLL検波部、MPX部、WOIS(歪補正)部の調整を行いました。PLL検波部にかなりのズレがありましたが、それ以外はあまり変わらない(よくわからない)調整となってしまいました。やはり間に合わせの機器では細かな調整は難しいようです。

 特にMPX部のチャンネルセパレーション調整では苦労しました。ノートパソコンにインストールしたWaveGeneで1KHzの信号を発生させFMトランスミッターのLチャンネルに入力、同じノートパソコンのWaveSpectraでRチャンネルの受信音を解析しましたが、全く意図したものが出てきません。色々調べてみると、ノートパソコン内部のミキサーがループバック状態になっていてWaveGeneの信号が直接WaveSpectraに入力されていました。さらに、ノートパソコンのマイク入力がモノラルだったことも後になって気づきました。WaveSpectraでLチャンネルしか正しく表示できなかったことの原因はこれです。FMチューナーの調整作業前に、用意した機器類の動作をちゃんと確認しておくべきでした。大反省ですσ(^_^;)

FM信号発生器の代わりにトランスミッターとパソコンでなんとか調整中

ただし、調整後の音質は確実に向上しました。気になっていたステレオ放送時のヒスノイズが改善されました。歪もほとんど感じません。一応成功のようです。手間をかけるほどに良い音を聞かせてくれるアナログFMチューナー、なんだかとっても愛おしくなってきました(^ ^)

(2017年11月30日追記)



3 件のコメント:

  1. 多分、デュオレックス(紫の電解コンデンサ)を交換すれば治りますよ。

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  2. スピード狂の自作マニア さん
    はじめまして、令和の里の南極老人と申します。
    私も SONY ST-S333ESXII を昭和63年に購入以来ずっと使い続けていましたが、3年ほど前から長時間(約4時間以上)電源を入れたままにしていると、スピード狂の自作マニアさんと同様の症状が発生するようになっていました。
    このためネットワークプレーヤーのRadikoで聴いていましたが、やはり長年聴いていたFMの音の方が耳馴染みが良いので、どうにか改善できないものかとネット上で探しまわり、このページに辿り着きました。
    早速、IC(LA1235)の7-10ピンにテスターを繋ぎ、IFT205の同調点調整をしてみました。その結果、まる一日電源を入れたままでも症状の発生がウソのようになくなりました!
    その後1週間以上経過しますが症状の再発はありません。おかげさまで、聴き慣れたFMの音を再び楽しむことができるようになり、とても嬉しく思っております。
    この度は貴重な情報、どうもありがとうございました。心より感謝申し上げます。

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  3. 修理の内容を拝見いたしました。参考になります。
    お手数ですが、修理のヒントをお願いしたいと思っております。
    機種はSONY ST-S510 です。
    電源を入れてしばらく、FMは同調しないがしばらくする(3分くらい)と安定します。電源の不安定が原因なのか?です。
    安定するとその後は支障なく動作します。
    よろしくおねがいします。

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