2015年10月20日火曜日

マウントの鬼 バイクへのアクションカメラ取付け試行錯誤の記録


 ビデオカメラがデジタルになり、どんどん小型化されていくうちにアクションカメラなるカテゴリーの製品が出現しました。子供の成長記録を撮るための家庭用小型ビデオカメラが一斉を風靡しましたが、その後今まで見たこともないようなスポーツシーンを記録できる小型・軽量のアクションカメラ(ウェアラブルカメラ)が次々に発売されています。スポーツを楽しむ人にとって、自分が見ている感動シーンを他の人と共有できたらどんなに楽しいことでしょう。この夢を実現するための道具になり得るのがアクションカメラです。

現在使用中のアクションカメラ

 若い頃にバイクの免許は取ったものの、親の反対や当時の社会状況から乗るのを諦めていました。最近になって良い歳をして大型バイクに乗り始め、その魅力に改めて虜になっています。車で行ったことのある場所でもバイクで走ると全く違った印象を受けます。広い視界や吹き付ける風、その場所の温もりや香りまで直接感じることができます。バイクの感動を少しでも記録しておきたいと思い、GoProを始めとするアクションカメラを入手して動画を撮影するようになりました。

 最初にGoPro HERO3+ Black Editionを購入し、ツーリング中の走行シーンを撮影してみた時には、その臨場感や画質の良さに驚きました。その後、取り付けられる場所を増やしたり、複数のアングルを一度に撮影するために追加購入したアクションカメラは以下の二台です。

最初は正攻法でバイクの正面に取り付けてみた

 バイクを運転しながらビデオ撮影するにはカメラをどこかに据え付ける必要があります。手持ちでの撮影は不可能です。セットする場所は大きく二つに分類されます。一つはバイク本体のどこか。もう一つはライダー自身です。下の図はGoPro購入後一年間に試行錯誤した取付け場所、使用したマウント機材、有効な撮影方向を示しています。もちろんこれ以外にも様々な場所と用具を試してみましたが、振動で動画が見るに堪えないものや撮れる映像が面白みに欠けるなどの理由でボツになった装着位置や方法は数え切れません。当初の試行錯誤の様子はYouTube動画(GoPro + バイク取付箇所と映像サンプル)としてアップしてあります。約一年間の試行錯誤で実用になる動画が撮れるポイントとそのコツも見えてきましたので、この辺で一旦まとめておきたいと思います。



実用的な映像が撮れるバイクへの取付場所と使用マウント


 取付け出来ても撮れる映像に面白みや迫力が欠けたのでは意味がありません。比較的ブレが少なく、尚且つ狙ったアングルが実現できるバイクの取付け場所をイラストにまとめてみました。その際に使用したマウントは下の表のとおりです。取付け場所によって撮影の方向が限定されますので、実用的に撮れる方向を矢印で表示しました。



使用したマウントベース
略号 製品名称・型番・実購入価格 外観 主な取付け場所
BB REC-MOUNTS
GoPro用ボルトベースマウント
  REC-B28(M6/M8)
各1,730円
・フロントフェンダー
・マフラー固定部

BM REC-MOUNTS
バーマウントタイプ4(17〜64mm)
  REC-B46-GP
2,082円
・フロントフォーク
・リアリザーバータンク
・フレーム下部
CH GoProチェストハーネス
  GCHM30-001

5,372円
・ライダー胸部
CM GoPro接着式カーブマウント


付属品
・ヘルメット横
MF RAMマウント
ミラーフレームベース11mm穴
  RAM-B-252U
1,512円
・ミラーフレーム(穴)
RC REC-MOUNTS
回転式クリップマウント
  REC-B53
2,140円
・ヘルメットバイザー部
SC GoProサクションカップマウント
  AUCMF302

4,860円
・フロントカウル
  →ブレ多い
・ガソリンタンク上部
SM GoProスポーツマンマウント
  ASGUM-001

8,939円
・グラブバー
・ミラー支柱
  →ブレ多い
・タンデムステップ




バイクへアクションカメラを取付ける際の考慮点


 エンジンや路面からの振動の影響をできるだけ受けない取付け方法を採用する必要があります。気を付けなければならないのは細かい周期性の振動です。道路の段差を越える時のような一時的に大きな振動は、カメラがしっかり固定されていればすぐに影響はなくなります。それより、周期的に続く細かな振動でカメラが共振してしまうと、不快な画像の歪みがずっと続いてしまいます。振動を吸収するというマウントも売られていますが、共振しやすかったり、大きな衝撃を受けた後に長く揺れ続けたりします。バイクへの固定はダイレクトにガッチリとが合言葉です。
 ライダーの体やヘルメットに取り付ける場合は振動の影響はありません。撮れるアングルや風景以外のヘルメットやバイクの映り込みを考慮して位置を決めてやればOKです。

1.エンジンの振動の影響が少ない場所を選ぶ


 取付け場所はエンジンからの細かな振動の影響をできるだけ受けない場所を選びましょう。意外かもしれませんが、マウントとカメラの取付けがしっかりとできれば路面からの振動の影響はオンロードではあまり気にする必要はありません。アイドリングでも振動しているフロントカウルやミラー、ハンドル端部はアクションカメラの取り付け場所としては適当ではないことがわかりました。

カウル下にサクションカップマウントで取り付けたPanasonic HX-A1H

フロントカウル周辺は進行方向全景が見渡せ、バイクも写り込まない絶好の取付け位置なのですが、樹脂製で絶えず振動しています。動画には向きませんが、十分な光量のある日中に静止画を撮影するだけなら十分活躍できる場所です。

2.バイクに密着し一体化させる


 マウントはバイクの取付け部分にできるだけ密着し、バイクと一体になるような固定方法が望まれます。最も確実な方法はマウントをボルトでバイクに固定することです。上の表の中ではBB(REC-MOUNTS GoPro用ボルトベースマウント)が最良の結果となりました。

フロントフォークのフェンダー取付け部にネジ止めしたマウント

 ボルト締めができない場所では、バイクへの接触面が大きくて締め付けが確実に行えるものが良好な結果となりました。BM(REC-MOUNTSバーマウントタイプ4)も応用範囲が広く、比較的ブレの少ない映像が撮れます。バイクに傷をつけないよう薄いゴムを貼り付け、手で調節できるホースバンドに交換すると格段に使いやすくなります。傷防止のゴムは必ず薄いものにしてください。厚手のものはNGです。

手回し可能なホースバンドの内側に薄いゴムを貼り付け

 付けたり外したりを簡単に行いたい場所ではSM(GoProスポーツマンマウント)が活躍しています。他のマウントに比べて高価なのが玉に瑕ですが、素材が硬くしっかりと作られています。グラブバーやタンデムステップなどの単純なパイプ形状ではない場所でも力ずくで固定できてしまいます。滑り防止のため、薄いゴムを貼り付けておけばベストです。

強い力ではさめるためテーパー状の場所でもOKのスポーツマンマウント

3.マウントとカメラは直結が最良


 マウントベースとカメラとの間にはアームなどのパーツはできるだけ入れず、直結する方が振動の影響が少なくなります。いろいろ便利なアームが売られていますが、マウントベースとカメラ本体の距離が長くなればなるほど振動の影響は大きくなりました。

 RAMマウントは種類も多く、ナビやスマホをバイクに固定するには最適な結果を得られます。ボールジョイント部がゴムで覆われていて、ここが振動を吸収するショックアブソーバーのような役割も持っています。しかし、エンジンや路面からの細かい振動を遮断することはできません。むしろ重量のあるアームとゴムの関節部分が振動を共振させてしまうようで、アクションカメラには逆効果でした。自在に向きを変えられるため、自撮りやハウツー物ビデオの撮影には大変役に立つマウントです。停止中や低速での撮影時には重宝しています。

アングルを自由に変えられるRAMマウント

 GoProを固定する時にマウントとの間にどうしても複数のアームが必要な時があります。どんなにネジをきつく締めても直結に比べてカメラの振動が大きくなり、映像に歪みが生じます。横向きのマウントに直結できる構造のGoPro HERO4 Sessionをテストしましたが、振動の影響は格段に小さくなっていました。

金属製マウントにカメラ(ハウジング)を直結したSession

4.マウント機材は金属製がベスト


 使用するマウントやアーム類は金属製がベストです。プラスチック製であれば寸法精度の高い純正品がより良い結果でした。GoPro HERO3+取付の際に90度傾けてやる必要があり、初めから90度の角度が付けられたサードパーティ製のアームとGoPro純正アーム二本を繋いだものを比較してみたら純正品の方が良い結果が出ました。接続部の精度に大きな違いがあり、素材の硬度にも差があったからだと思います。

左がサードパーティ製の一体型90度アーム、右がGoProの組み合わせ

どうしてもアーム類を利用する場合は、精度の高い純正品をできるだけ少なく使うのがコツです。


 これらが約一年間の試行錯誤で得られた、実用的な映像を撮るためのアクションカメラ取付け方法です。現在、ツーリング時の撮影で主に利用している取り付け場所(使用マウント)は以下の五箇所です。

  • フロントフェンダー取り付け部(REC-MOUNTS GoPro用ボルトベースマウント)

     バイク前方の景色を安定して撮影することが可能ですが、どうしてもフェンダーの一部が写り込んでしまいます。ライダーの視線に比べて低い位置からの撮影になりますので、実際にライダーが見ている景色とは異なってしまうのも課題です。

  • グラブバー(GoProスポーツマンマウント)

     バイクとライダーの体の一部を画像の右か左に映したまま流れる景色が撮影できます。カメラをより外側に向ければ、コーナリング中の横方向の景色も撮れるため観光地などでは役に立ちます。ただしこの構図の画像だけを長々と見せられてもすぐに飽きがきます。他のアングルと切り替えながら作品を作るマルチカム編集の素材としては面白いものです。

     カメラを後方に向けることも可能で、遠ざかる景色を撮影できます。グループでツーリングする際には、後ろにいる仲間を撮影するのに都合の良い取り付け場所です。

  • ヘルメット横(GoPro接着式カーブマウント)

     自分のバイクを映さず風景だけを撮りたいときに利用しています。ライダーの目の位置に一番近く、見ている通りの映像が残せます。安全確認などで頭を動かすと景色がゆらゆらと動いてしまうのが課題です。

  • タンデムステップ(GoProスポーツマンマウント)

     路面に近い位置でスピード感を出したいときにはタンデムステップの下側に取り付けると迫力のある映像が撮れます。タンデムステップは折りたたみ式で簡単に動いてしまいますが、カメラやマウントの重量が加わり意外に揺れません。安定して撮影が可能でした。

  • フロントフォーク(REC-MOUNTSバーマウントタイプ4)

     進行方向を路面に近い位置で、バイクの映り込みを少なく撮影するにはフロントフォーク下部にマウントすることもあります。ワインディングを左右にカーブしながら走る映像は迫力があります。金属製のホースバンドで強力に固定されますので、途中に余計なアームをかませなければ振動の影響もそれほどではありません。




 試行錯誤を続けていますが、映像がブレず尚且つバイクが全く写り込まない場所は未だに見つかっていません。ネイキッドバイクであればヘッドライトの周りに候補が一杯ありそうですが、さすがにバイクを買い換えることはできません。

 各場所への取付けで経験したことや尚残っている課題、撮影した映像例などについては順次投稿していきたいと思います。



GoPro JAWSフレックスクランプの格安コピー品も試してみました


純正品は5千円前後もしますがコピー品なら千円くらいから出回っているJAWSフレックスクランプ(グースネッククランプ)をバイクで試してみました。GoPro HERO4 Sessionに付属するボールジョイントバックルとの組み合わせで十分実用になりました。

(2016年6月8日追記)



小型・軽量なSessionでマウント方法を再評価


 本体の重量はHERO3+とそれほど変わらないSessionもハウジングまで含めればかなり軽くなりました。さらにHERO3+や最新のHERO4では難しい横方向への固定もSessionでは簡単にできるようになり、余計なアーム類を間に挟む必要がないため振動に強くなっています。HERO3+の時にあまり評価の良くなかった取付方法を、Sessionを使って改めてテストしてみました。カメラの重量や固定方法が変わると同じマウントでも振動の影響が微妙に変わってきます。新たにテストした取付方法と映像サンプルを動画にまとめました。


(2016年6月29日追記)



市販品に満足できずオリジナルマウントを自作


 市販のマウントで撮影を行っていると、どうしても満足できない場合やもう少し手軽に使いたい場合がでてきます。今まで経験してきた市販マウントの短所を改善すべく、3Dプリンターで自分専用のマウントを自作して使うようになりました。自転車やオートバイ用に自作した最近のマウントをご紹介しています。売っていなければ作ってしまえる時代ですので、皆さんも是非チャレンジしてみてください。

余っていたGARMINのサクションカップ用にGoProマウントを自作

(2016年11月6日)



ボールジョイント部を持つ自作マウントも役立ちそう


 ベースマウント固定部からカメラの重心までの距離をできるだけ短くすることが、振動に対しての影響を少なくして安定した映像を撮るための必要条件であることがわかりました。その場合でもカメラの向きや水平の調整がちゃんとできなければなりません。それらの条件を満たすボールジョイント部を持つマウントを自作してみました。

GoPro取り付け部を1インチのボール状にしてしまう自作マウント

(2017年9月7日追記)



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