強力なゴムの吸盤で平らな面に固定できるGoProサクションカップマウント。エンジンの振動がうまく吸収できている自動車では、どこにつけてもブレの少ない綺麗な動画が撮影できます。しかし、バイクでは取り付けられる平面部が少ない上に、エンジンの振動がダイレクトに車体各部に伝わることが多い為、活躍する場面は多くはありませんでした。GoPro純正のサクションカップマウント(AUCMT-302)は五千円近くもする高額なマウントです。購入したからには、もう少し出番が増やせないものか考えていました。
GoPro純正のサクションカップマウントは高価 |
GoPro HERO3+を購入した当時、バイク動画を撮る為にサクションカップをテストしましたが、画像のブレが想定以上に大きく評価は今ひとつ。その後ほとんど利用せずに仕舞い込んでいました。最近になってより小型軽量のGoPro HERO4 SessionやPanasonic HX-A1Hを購入。使っていなかったサクションカップマウントを再度テストしてみました。
フロントカウル正面にサクションカップで取り付けたHERO3+、ブレブレで即ボツ |
直径85mmほどの大型吸盤ですので取り付けられる場所は限られます。さらに撮影の向きや映像の水平を考えれば、バイクに取り付けられる場所はごく一部になってしまいます。HERO3+での過去のテスト結果は一旦忘れ、小型軽量になったSessionを使用して改めて取り付け可能な場所をテストしました。試したのは以下の取り付け場所です。
GoProサクションカップ + Sessionでテストした場所 |
進行方向をバイクの写り込みなしに撮れる場所
バイクの写り込みなしで、前方の景色だけを撮れるカメラの取り付け場所は多くはありません。フロントカウルやウィンドスクリーンがベストであることは見ただけでわかりますが、フレームに細いステーで固定されているだけの樹脂製カウルはエンジンの振動の影響を強く受けます。そこにビニール製の吸盤を介して固定されたマウントを使用するわけですから、振動の影響から逃れることは不可能です。問題は見ていて不快に感じる影響がどれだけ出るかという点です。荒れた路面を走っている時に画面が振動で激しく揺れるのは臨場感にもつながりますので、必ずしも悪いブレではありません。では信号待ちで停止している際に、アイドリング状態で画面が周期的に歪むのはどうでしょうか?小型カメラに利用されているCMOSイメージセンサーは、周期的な振動により映像にローリングシャッターと呼ばれる歪みが出やすくなっています。走ってもいないのに画面の各部がブルブルと震えているようなローリングシャッター歪みはとても不自然です。少なくともこの歪みが出ない取付方法を探ることにしました。
フロントカウル下(結果:及第点)
ネイキッドバイクであればヘッドライトステー取付ボルトにカメラを取り付ければ良い結果が出そうですが、バイクを買い換えるわけにもいきません。CB-1300SBのフロントカウル周りで一番安定していそうなカウルの下にサクションカップを取り付けてみました。ここは平らで、サクションカップは簡単に取り付けられます。この部分の上側(裏側)にはユピテルのバイクナビMCN46siのレーダー受信ユニットが取り付けられています。
フロントカウル下は平面で吸盤がつけやすい |
実際に撮れる画像はこちらです。状況によってはブレも残っていますが、不快というほどではありません。この場所とフロントフェンダー上部からの映像は、編集を前提にしてブレの少ない部分を使用すれば十分活用できそうです。
フロントカウル下からのカメラアングル |
ヘッドライト(結果:ブレブレ)
フロントカウルの中央部に別パーツとして設けられているヘッドライトの正面も、サクションカップが取り付けやすい形状をしています。夜間は光量が落ちてしまいますので、取り付けて走行はできませんが、日中であればテスト可能です。
ヘッドライトへも取り付けやすい |
結果はエンジンと路面からの両方の振動でブレブレの映像でした。ここからの動画はちょっと使う気になれない状況です。
スクリーン(結果:ブレブレ)
スピードを出すと風の影響でブルブルと振動しているのがわかるウィンドスクリーン。ここは厳しいだろうなと思いながらも、ライダーの目線に近い位置から進行方向が撮影できる数少ない場所です。スクリーンの少し下の位置にサクションカップでSessionを取り付けてみました。
進行方向全体を撮るには絶好の位置なんですが、映像のブレが目立つ |
結果は事前の予想通りブレブレの画像となりました。エンジンの振動による共振や道路の段差からくるショックで画面が大きく揺れます。もう少しなんとかならないものか眺めていたら、曲面部に貼り付けられているサクションカップの横に大きな隙間ができていることに気づきました。机などの平面部に貼り付けた場合はほとんど隙間はできませんが、曲面ではどうしてもできていまします。
サクションカップのフレームと吸盤の間に隙間ができてしまう |
手で動かしてみると、この隙間ができている方向にかなりグラグラすることがわかります。ここを埋めてやればブレが小さくできないかと考えて、硬質ゴム(水道栓のパッキン)を挟んでみました。
左右にできている隙間にこのゴムを挟み込んでみました。手で動かすと先ほどよりしっかりとしています。期待しながら走行テストをしてみました。
結果はほとんど改善されませんでした。サクションカップ部分の揺れよりも、取り付けられているウィンドスクリーンそのものの揺れの影響が大きいものと思われます。
家にあった水道栓のゴムパッキン |
左右にできている隙間にこのゴムを挟み込んでみました。手で動かすと先ほどよりしっかりとしています。期待しながら走行テストをしてみました。
硬質ゴムを隙間に入れてサクションカップを固定 |
結果はほとんど改善されませんでした。サクションカップ部分の揺れよりも、取り付けられているウィンドスクリーンそのものの揺れの影響が大きいものと思われます。
フロントフェンダー上(結果:及第点)
フロントフォークに取り付けられたフェンダー上部もそこそこの幅があり、なんとか吸盤がつきました。フロントフォークそのものにカメラを固定すると良好な結果が得られることは経験済みです。ただし画像の一部にタイヤが写り込んでしまうのが悩みでした。フェンダー上部に取り付ければ景色だけを撮れそうです。
ギリギリでフロントフェンダー上部にサクションカップが取り付け可能 |
エンジンが載っているフレームから物理的に分離されているフロントフォークですので、フロントカウル下よりもエンジンの振動に対しては強いようです。心配していた路面からのショックも、思ったほど影響は出ていません。ここも編集を前提にすれば活用できる動画が撮れそうです。
ご注意
フロントカウル下やフェンダー上部に取り付けた場合、フロントフォークが大きく沈み込んだ際にカメラが挟まれる可能性があります。カメラの落下、破損やバイクの損傷につながる恐れがありますので注意が必要です。
バイク後部ではリアフェンダーくらい(結果:合格)
バイクの後部でサクションカップが取り付けできそうな平面部があるのはリアカウル上部くらいでした。車種によってはリアフェンダーが候補になるかもしれません。エンジンんから離れているため、あまり周期的な振動の影響は出てきません。路面の振動がどれだけ影響を及ぼすか心配でしたが、それほど不快に感じるブレは出てきませんでした。
CB-1300はリアカウルに広大な平面部があり取り付けが簡単 |
バイクの写り込みなしで、後方の景色がバッチリ撮れます。無線機のアンテナが邪魔ですが、撮影時だけ取り外せば問題なしです。HERO3+の時よりも軽量になったSessionの方がブレも少ないようです。ここは使えます。
ガソリンタンク上部(結果:合格)
タンク位置が高く、胸に迫ってくるような場所にあるSSタイプのバイクでは、この位置にカメラをセットして撮影された動画をよく目にします。比較的アップライトな運転姿勢のCB-1300ではガソリンタンク上部よりもメーターやフロントカウルの位置が高く、撮影には適さないと思っていましたが、あえてテストしてみました。
サクションカップに延長アームを使ってやっと前方が写せる状態に |
サクションカップ本体だけでは高さが足りず、付属している延長アームを入れました。それでももう少し高さがあった方が前方の景色は見やすくなりそうです。
もう少し高い位置にセットしたいガソリンタンク上部からのカメラアングル |
固定されているサクションカップ基部から延長アームを入れてカメラを取り付けていますので、大きなブレが出るかと心配しましたが、予想に反してかなり安定した画像が撮れました。ガソリンタンクそのものがフレームからゴムで浮いている状態です。これがサクションカップから先への振動を吸収してくれているようです。もう少し高い位置にセットした方が景色が楽しめますが、バイク走行中のワンカットとしての利用なら十分実用になりそうです。
タコメーターにサクションカップを貼り付け(結果:合格)
サクションカップの吸盤とメーターを見比べると同じくらいの大きさです。メーターに取り付けられるかなと思い、やってみたらバッチリ固定できました。スピードメーターに貼り付けると速度がわからなくなってしまいますが、タコメーターは見えなくてもなんとかなります。
メーターの大きさにぴったりのサクションカップ |
メーター周りは手で触ってもグラグラするほどの場所です。当初は全く期待していませんでしたが、実際に映像を撮ってみるとここがなかなか優秀な結果を出しました。ガソリンタンク同様、メーター取り付け部が振動を吸収をしているようです。週刊バイクTVなどで放映されるものに引けを取らない安定した映像が撮れました。運転中に頻繁に視線を送るメーターですので、ライダーを撮影するには最適の場所でしょう。
メーター付近から後方を写せば運転者も含めてバッチリ撮れる |
自撮りは好みではありませんが、バイクらしさを演出するためのカットとしては撮っておいても良い映像です。編集でほんの少しだけ使えば、バイクツーリングの雰囲気が増します。
タコメーターからの画像、安定した自撮りが可能 |
カメラを反対に向ければ、ウィンドスクリーン越しに前方が撮れます。CB-1300SBのスクリーンは比較的濃い色に着色されているため、撮った映像は編集時にカラー調整をした方が自然になります。
前を向ければスクリーン越しに進行方向の映像が撮れます |
RAMマウントなどでハンドルバーに取り付けるのと違い、ハンドルを切ってもカメラの向きは変わりません。振動の排除も結構できていて、アイドリング時に共振するようなこともありませんでした。今後活躍しそうな場所です。
ウィンドスクリーンの色が付くため、編集時にカラー調整がおすすめ |
平面部が少ないヘルメットにも固定できた(結果:合格)
普段一番よく使うヘルメットには、横にGoProの接着式カーブマウントを貼り付けたままにしています。ここにPanasonic HX-A1HやSessionを取り付ければ、出っ張りも少なく目立たずに撮影が可能ですが、他のヘルメットを使う時に一時的にカメラをセットしたい場合があります。そんな時にサクションカップが利用できれば便利ですので、試してみました。全体が丸く、デザインや風の整流のため段差が設けられている場所もあり、取り付け可能な場所は限られています。写真のヘルメットの場合は、上(頭頂部)と後ろ(後頭部)に吸盤がつきました。サイドにつけたかったのですが、段差があってくっつきません。もう少し小型のサクションカップを使用すれば、取り付け可能な場所は広がりそうです。
ヘルメットの頭頂部に取り付けたサクションカップマウント |
ライダーの体に取り付ける場合はエンジンの振動の影響は出てきませんが、安全確認のため左右に視線を動かすとヘルメットも大きく揺れてしまいます。好みにもよりますが、この場所から取られた映像はサブとして使用した方が見やすいのではないかと思います。
おなじみのヘルメットからのカメラアングル |
各取り付け箇所からの実画像
GoPro HERO4 Sessionをサクションカップでバイクのテスト箇所に取り付け、実際に撮影した画像はこちらです。映像のブレの状況やカメラアングルの比較が可能です。あわせて音声の録音状況がわかるようBGMは入れてません。
必要な時だけさっと取り付けられるサクションカップマウントは、他のマウントに比べて手軽に利用可能です。もう少し利用機会を増やし、臨場感あふれるバイク動画の撮影に役立てたいと思います。
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