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2018年2月16日金曜日

快適動画編集 Motion5で動く部分を切り取るマスクの作り方


 動画の編集に少し慣れてくると、カット編集ばかりでなくマスクを使った画像の合成などにも挑戦したくなります。クロマキーやマスクを使った画像の合成が出来るのは、ある程度高機能な編集ソフトに限られるようですが、作品の幅がぐっと広がります。利用している動画編集ソフトはプロも使用しているFinal Cut Pro X(FCPX)のため、機能的には問題ありませんが、使う側の技術と経験がついて行きません。FCPXとMotion5のマニュアルと格闘しながら試行錯誤する日々が続いています。


最初に挑戦した動画の合成は実に単純だった


 マスクを利用して動画の合成を試してみたのは二年ほど前のことになります。Motion5を購入して3ヶ月程度が経過した頃でした。オートバイで山道を走っているシーンを撮影した動画素材が手元にありましたので、何か作れないか考えてみました。山道で競争しているような映像にするために、時間をずらして同じ動画を複数重ねてみることにしました。

 まず最初に行った作業は、切り抜く部分を囲むベジェ曲線を描くことです。作図自体は簡単なのですが、動画の中のオートバイは動いていますので、映像の初めから終わりまで位置と大きさをオートバイに合わせて変えてやらなければなりません。Motion5には動くものの軌跡を自動的に追いかける「モーショントラッキング」ビヘイビアを持っていますが、対象が画面奥から手前に移動するような場合、サイズや見え方がかなり変わってしまうため途中で追跡不能になるようです。この処理をキーフレームを使用した手動で行いましたが、かなり苦労しました。プロの世界では一フレーム毎にマスクを手動調整することも行われているようですが、とてもそこまでやる根気はありません。

描いたマスクをキーフレームでオートバイに追随させる

オートバイの影も含めた全体が入るようにマスクを描画し、何点かのキーフレームでコントロールします。大きさや向きが時事刻々と変わる動画では、どうしても対象に比べて大き目のマスクとなってしまいます。

 マスクで切り取られた動画は、下図のようにマスクの内側だけ映像が残り、外側は真っ黒になります。この黒い部分がアルファで透過するため、他の映像に重ねると下にある映像が透けて見える部分になります。

マスクを使用して切り取られた映像

本当に必要な範囲よりだいぶ外側にはみ出していることがわかります。この映像を複数並べていくと、一つの画面上に複数のオートバイが走っているように見えます。ただし、それぞれの映像を近づけすぎると一部が不自然な場所で隠れてしまいます。

下の映像が何もない部分で隠されてしまい、とっても不自然

それぞれのオートバイの間を開けなければなりませんので、追い越しやすれ違いなどの合成は不可能です。そんな制限のある中で、やっとの思いで出来上がったのが下の作品です。実に単純な作品ですが、たった一本の動画素材を時間をずらして並べるだけでレース気分が出るのは不思議でした。




After Effectsの「異なるマットエフェクト」が欲しい


 その後、色々な作品を作りながら勉強を続けてきましたので、Motion5やFCPXにもだいぶ慣れてきました。動いているものを切り取るマスクを、手動で作成するなんてとんでもないということもだんだんと分かってきました。AdobeのAfter Effectsには「異なるマットエフェクト」という機能があり、動かない背景画像とその中で動いている部分を切り分けられるそうです。「これだ〜」と思いましたが、残念ながらAfter Effectsは持っていません。Motion5にはいくら探しても同じ機能は見つかりませんでした(泣)。同じ事が出来ないかMotion5のマニュアルをもう一度読み直しです。

・動かない背景と動いている前景の差分を取ればいいのでは?


 After Effectsが行ってくれるのは、動きのない背景画像と一部が動いている動画を比較し、動いている部分だけをマスクとして抽出してくれるというものです。であれば、Motion5でも同様の機能を組み合わせてみればできるはずです。考えてみたのは次のようなワークフローでした。

AEの「異なるマットエフェクト」と同じ事をMotion5でやるにはこのフローかな

背景が動いている動画には向きませんので、三脚を利用して撮影した映像を使います。その中で、オートバイが写っていないフレームを静止画として書き出し、背景画像として利用しました。前景は使用予定の動画クリップそのものです。

1. レイヤーのブレンドモードを「差分」に


 グラフィック系の編集ソフトでは、レイヤーを重ねる際に上にくる映像の重ね合わせオプションを変えてやる事が出来ます。Motion5でもブレンドモードで色々な重ね合わせオプションが選べます。数が多すぎてとても全てを理解できていませんが、動いていない背景と動きのある前景を重ねる際に「差分」を選んでやれば、違う部分だけを抽出できるはずです。

上にくるレイヤー(画像)のブレンドモードを「差分」にする

すると動いていない背景部分はほとんど真っ黒になり、動いているオートバイ部分が見事に抽出されています。ただし、だいぶ色の薄い状態で、このままマスクとして利用すると、合成された映像も幽霊のようにうっすらとしてしまいます。バイク動画で幽霊出現では縁起でもありませんので、対策が必要です。

2. 「しきい値」フィルタを適用して無理やり白黒に


 マスクとして利用しますので色の情報や明るさの情報は必要ありません。背景と少しでも違う部分は真っ白になって欲しいのですから、差分に対してしきい値以上の部分は100%の白色にしてしまいます。それ以外の部分は真っ黒になってもらいます。そのためには「しきい値」フィルタを使います。背景と前景の「差分」が反映されているグループレイヤーに対して「しきい値」フィルタを適用し、パラメータを調整して理想の形に近付けます。すると薄くなっていたオートバイの形のマスクが、白と黒のはっきりとしたイメージとなりました。

差分が得られたグループレイヤーに「しきい値」フィルタを適用

内側が全て真っ白になっているのがマスクとしては理想的ですが、効果的なフィルタが見つかりませんでした。

3. 自動作成したイメージマスクで映像をくり抜き


 自動で作成できたイメージマスクを、使用する動画クリップのマスクとして指定します。すると下のようなイメージが現れました。オートバイやライダー、影の部分がちゃんと切り取られていますが、タイヤ・カウル・ライダーなどの一部分に小さな穴が空いてしまいました。どうしても差分からだけでは埋められない穴が残るようです。

自動作成のマスクで切り抜かれた映像

背景の部分にも、風で揺れる木の枝や草などが差分として小さく現れています。少し気になる映像ですが、最後に元の背景画像をこの下に置いてみると嘘のように目立たなくなりますので安心してください。動画から自動生成されたマスクで切り出していますので、オートバイが動いてもちゃんとそこだけ切り取られて表示されます。

4. 切り取られた映像を自由に配置して作品にする


 ここまでで、必要な部分が切り取られた動画クリップが出来上がります。一つのクリップを時間をずらして配置するも良し、別のクリップをシナリオに沿って重ねるも良し、編集者の思いのままです。作品として不自然にならないようにする必要はありますが、おかしな重なり方で悩む必要はありません。二年前の習作では一方向に間隔を開けてオートバイが走るだけでしたが、今回は反対方向に走るオートバイとのすれ違いもあります。不自然さもありません。

切り取られた複数の動画クリップを重ねて作品にする

最後に、背景となるクリップか静止画を置きます。すると、マスクに残るゴミのように気になっていた部分が見事に分からなくなりました。差分を取る際にできてしまった穴なども、元々背景にあった映像が透けて見えるだけですから、不自然ではない訳ですね。逆に言えば、元々の背景とは全く異なるものを持ってきて合成する場合は、仕上がりにかなり粗が目立つことになります。

背景を置くとマスクの不具合もカモフラージュされる

拡大してじっくり観察すると、見えてはいけない後ろのものが見えているのですが、高速で移動しているバイクの映像ですからほとんど気付きません。動く部分のイメージマスクをなんとか自動で作成できました。メデタシ、メデタシ。


新たな手法でマスクを用意した合成動画作品


 動く映像のイメージマスクが手間をかけずに作成できました。必要な部分のみを正確に切り出してくれますから、合成時の自由度が格段に向上します。映像作品を編集する際に次元の違う合成ができますので、作品のレベルが格段に向上....するはずなんですが....


あとはセンスの問題ですね.... そこが一番問題だったりしてσ(^_^;)



「しきい値」の前に「ブラー」を適用すればさらに良好


 YouTubeに習作をアップした後も、もっと良いマスクが自動的にできないか試していました。イメージの輪郭をぼかしてくれる「ブラー(ガウス)」フィルタを使ってみたところ良好な結果が得られました。左が「しきい値」のみで作成したもの、右が「しきい値」を適用する前に「ブラー(ガウス)」を適用したものです。バイクの中の細かな穴が少なくなっているばかりでなく、背景に現れていた小さな点も消えてくれています。画像の合成結果もさらに良好になりました(^ ^) 先に「しきい値」を適用したものに「ブラー」を使ってもそれほど効果はありません。二つのフィルタ適用の順序が大切です。

しきい値の前にブラー(ガウス)を適用したところさらに良いマスクが生成できた

考えてみればこの手法は理に適っていますね。AEが持っている「異なるマットエフェクト」機能もこの手法を使っているのかもしれません。Motion5でかなり強力な自動マスク生成の手順がわかりましたので、今後の作品作りに役立ててみようと思います。

(2018年2月17日追記)



2018年1月25日木曜日

快適動画編集 FCPXのワイプでルート表示アニメーションを実現


 最近精を出しているのが、自転車で走り回って見つけた下総台地の快適サイクリングルートを紹介する動画の製作です。GoProの実写映像ばかりではなく、Google Earth Proで生成したツアー動画地図上で動くルート表示などの素材と組み合わせて、できるだけルートの雰囲気が伝わるように工夫しています。動画の編集はFinal Cut Pro X(FCPX)を中心に行っています。それだけでは実現できない映像効果やFCPXテンプレートの作成のために、Motion5も追加導入しました。趣味の映像編集には十分すぎる機能を持っていますが、まだまだ知識と経験不足で、勉強しながらこれらのソフトと格闘している日々です。


Motion5ならルートのアニメーション表示は完璧


 Motion5の「なぞり書き」というビヘイビアを利用すると、描いた線に沿ってペンで書いているように表示することができます。地図映像の上にこの線を表示させれば、サイクリングルートのアニメーション表示になります。

Motion5の「なぞり書き」で出発地点からゴールまでルートを順に表示させていくことができる

ベジェ曲線を描ければ、後はMotion5のビヘイビアで簡単に動きをつけられますので、それほど難しい作業ではありません。最終的にFCPXで編集を完成させますので、Motion5から中間ファイルに書き出してやらなければならない点が面倒です。長さによってはかなりのディスクスペースも使います。

Motion5での作業は難しくはないが、中間ファイル作成の手間とHDDスペースが勿体無い


FCPXだけでルート表示のアニメーションは可能?


 ルートの形状が複雑な場合はMotion5の「なぞり書き」を使わざるを得ませんが、ほぼ一定方向にルートが伸びているような場合は、FCPXのワイプを使えばアニメーション表示ができそうです。どんな編集ソフトでも場面展開でよく使うトランジションの機能は必ず持っています。FCPXにも「ワイプ」トランジションが備わっていますので、ルートのない開始画像とルート全体が描かれた終了画像の二枚をワイプして動きをつけてみました。

上のような画像の場合は、左下から右上方向にワイプしてやればルートが徐々に表示されてアニメーションのように見えるはずです。

FCPXで二枚の画像をワイプしてルート表示アニメーションを作る

タイムラインに並べた二つのクリップ(静止画)を徐々に切り替えるだけですから、まさにトランジションの機能そのもので実現できます。ルートが途中で戻ってくるような複雑なものは無理ですが、一方法に動くだけならMotion5を使わずに簡単にできました。


ルートがオーバーレイの場合はどうする?


 地図とルートが別々に用意され、オーバーレイして使うような画像の場合もあります。別途、イラストソフトでルート有りと無しの二つの地図画像にしておけば、前の方法が使えますが、オーバーレイのままFCPXで扱う方法も検討してみました。

この場合、FCPXのタイムライン上には基本クリップとしてベース地図があり、その上に接続クリップとしてルートのオーバーレイが乗っています。前の方法と同じ「ワイプ」トランジションをオーバーレイクリップに適用すると、クリップの前後にトランジション部分が出来てしまいます。片方しか必要ありませんから、後ろのトランジション部分を削除し、前のトランジション部分の長さを調整します。
 トランジッション適用後にクリップがストーリーラインとなりますので、多少使いにくい部分もあります。クリップが独立していればいいのですが、他のクリップと隣接していると、勝手にそちら側にも適用されてしまいます。トランジションですから当たり前の動きですが、意図している作用とは異なりますので多少面食らいます。

接続クリップにトランジションを適用するとちょっと不自然に

その後、トランジションの向きと境界の幅とぼかしを調整すれば、ワイプでのルート表示アニメーションが完成です。

オンスクリーンコントロールでワイプの向きと境界を設定

それほど作業としては難しいものではありませんが、隣接クリップがある時には意図しない結果を招くことがあります。トランジションのように隣接しているクリップにも影響を与えるものではなく、目的のクリップだけに効果を与えるエフェクトとしてのワイプが欲しくなりました。


Motion5でアニメーション専用ワイプを作成


 FCPXのトランジションやエフェクト、タイトル、ジェネレータなどは大半がMotionで作成されており、標準で用意されているものを自由に変更して利用できます。標準のものを右クリックすると「コピーをMotionで開く」というメニューが出てきます。

ほとんどのトランジションやエフェクトは右クリックすると「コピーをMotionで開く」が選べるが...

ところが「ワイプ」には出てきません(泣)。標準の「ワイプ」は変更不可のようです。仕方がないので一から作ることにしました。

 先ず、回転させてもフルHD画面が収まる正方形マスクを作成します。フルHD画面の対角線の長さに相当する2,203ピクセルを一辺の長さとしました。このマスクを反転させて使い、マスクがかかっていない部分が見えるようにします。

フルHD画面より少し大きいマスクを準備して反転

マスクを必要に応じて回転させてから、縦横に移動させてワイプを実現します。マスク画像位置XとYを、二つの「ランプ」ビヘイビアで制御します。

マスク画像に「ランプ」ビヘイビアを二つ適用し、位置XとYを制御

ワイプの方向を垂直や水平から傾けてやりたいときは、マスク画像そのものを回転させるのではなく、その上位グループの回転を使います。ここがMotion5の奥深いところというか、難しいところですねσ(^_^;) こうすることによりマスク画像が動く方向も一緒に回転してくれます。レイヤー階層の異なる座標の取り扱いは慣れると面白いです。

正方形マスク画像の移動と回転は別のレイヤーで制御する

自作のアニメーション・ワイプでさらに簡単に


 オーバーレイ式ルート表示のクリップに自作の「アニメーション・ワイプ」エフェクトを適用してみました。エフェクトですので、隣接するクリップに影響を与えることもなく、安心して利用できます。ワイプの角度と境界を調整するだけで即使用可です。

エフェクトとして作成した「ワイプ」をオーバーレイクリップに適用

アニメーションの速度はクリップの長さで調整します。遅くしたい場合はクリップの継続時間を長くします。早くしたい場合は逆です。地図とルートの静止画像二枚を素材にして、FCPXだけでルート表示アニメーションの完成です。複雑なルートの動きは表現できませんが、作業効率は大幅にアップしました。


百聞は一見に如かず(実物を見てください)


 作業の手順と出来上がったルート表示アニメーションを見比べるために動画を作成しましたので、実際に見ていただければわかりやすいかと思います。


また、作成しました「ワイプアニメーション」エフェクトは他の自作FCPXテンプレートと一緒にGoogleドライブで公開してあります。Motion5をお持ちの方は、実際に中身を見ていただければ簡単にご理解いただけると思います。改良のアイディアなどがありましたら、ぜひお知らせください。



開始オフセット機能を追加しました


 ワイプする図形が画面の端の方にある場合、ワイプ効果が始まるまで無駄に時間が経過してしまうことに気付きました。ワイプの開始ポイントをオフセットできる機能を追加しました。縦方向や横方向に自在に開始点をオフセットできるようになりました。

「アニメーションワイプ」エフェクトにオフセット機能を追加

Googleドライブで公開しているファイルもアップデートしてありますので、是非お試しください。

(2018年1月29日追記)



2017年12月24日日曜日

カスタムLUTがサポートされたFCPXでProtuneの色調整に再挑戦


 プロの世界では編集はFinal Cut Pro X(FCPX)で行っていても、色補正はDaVinci Resolveなどの他のソフトで行うのが一般的だそうです。他のソフトに比べてFCPXのカラー調整機能や操作性が劣っているためだと思いますが、GoProで撮影した動画のカラー調整くらいしか行わない動画初心者にとっては、複数のソフトを使いこなすのはハードルが高過ぎます。迫力のあるスポーツシーンの撮影ではGoProの標準設定のままで満足な映像が撮れますが、桜や菜の花などの映像には不満が残りました。そんなことがきっかけになり、GoProのProtuneモードを初めて試してみたのは、購入してから三年も経った頃です。記録された眠たい映像を見て驚きましたが、正しい後処理をしてやれば花の色も標準設定では得られない品質にすることができました。問題はこの後処理の方法と手順です。色補正の知識も経験もない動画編集初心者には、ほぼ自動でProtuneの色補正が完成するGoPro Studioが最も使いやすいツールでした。ただし、その後の編集作業には機能不足で、どうしても使い慣れたFCPXを使わざるを得ません。初めからFCPXだけで作業できれば完璧です。

Protune素材の色調整はGoPro Studioが簡単だが、FCPXの新機能で再挑戦してみた


FCPX 10.4の新機能が使えそう


 つい先日、FCPXがアップデートされて10.4になりました。「360 VR編集」と「高度なカラーグレーディング」の二点が主な新機能として紹介されています。360度映像は撮影機材もVRゴーグルも持っていませんので、今回は関係なしですが、高度なカラーグレーディングは大いに期待できます。中でも「カスタムLUT」が利用可能になったことと、複数の調整パネルに分かれていたカラーコントロールが一つのカラーホイールパネルに統合されたことが再挑戦の意欲を掻き立てました。

・カスタムLUT


 LUT(Look Up Table)は色変換のためのテーブルで、カメラメーカーが自社の製品用に提供しているものと、ユーザーが独自に作成したものとに大別されます。SonyやCanon、Panasonicなどのカメラメーカーからそれぞれの製品向けにLUTが提供されていますが、残念ながらGoProのメーカーからは提供されていないようです。調べて見ると、独自に作られた色々なProtune用LUTがネットで公開されていました。今回は、その中からGROUNDCONTROLのFREE GOPRO PROTUNE TO REC.709 LUTを試してみました。

 使い方は超簡単です。LUT適用の方法は二通りあり、一つはブラウザーにあるクリップに適用する方法。もう一つはタイムライン上のクリップに適用する方法です。ブラウザー上でLUTを適用してしまえば、その後そのクリップをタイムライン上で利用する際にも全て同じLUTが適用された状態となります。

ブラウザーのクリップにLUTを適用

一方、実際に使用するクリップ毎にLUTを適用したい場合は、エフェクトの「カスタムLUT」を該当するタイムライン上のクリップにドラッグ&ドロップします。その後、インスペクターで適用するLUTを指定します。

タイムラインの個別クリップに「カスタムLUT」エフェクトを適用

・統合カラーホイール


 前バージョンまでは色補正を行うには、カラーボードの「露出」、「サチュレーション」、「カラー」の三つのパネルを切り替えながら調整を行う必要がありました。作業に慣れない初心者にとって、この三つを行ったり来たりしているうちにわけがわからなくなり、一旦全部リセットしてからやり直しという事態に何度も陥り、そのうちやる気が失せてしまったものです。DaVinci Resolveの統合されたカラーホイールを初めて見たときは、いかにも使いやすそうで憧れてしまいました。今回のアップデートでFCPXにもやっと、この統合カラーホイールが備わりました。

三つのパネル切り替えが必要だったカラーボードから統合されたカラーホイールへ

調整後の画面やビデオスコープを見ながら、この一枚のカラーホイールパネルだけで調整が進められますので、格段に使いやすくなりました。さらにパネル下部には、色温度や色合い、ヒューの微調整も可能なスライダーが用意されています。思考を中断することなく色補正作業が継続できます。カラーホイール以外にも、「カラーカーブ」と「ヒュー/サチュレーションカーブ」が追加になっており、これでやっと他のソフトと肩を並べたという印象です。


実際のProtune素材の色補正作業


 実に眠たい感じのProtune素材を、FCPXを使って手作業のみで色補正するのは大変でした。偶然、希望に近い色が出せたとしても、それが正しい色なのかどうかも自信が持てません。LUTを使うことによって、ある程度標準的な補正はワンタッチで完了しますので、その後にカラーホイールなどで微調整して仕上げます。

Protuneで撮影した素材画像は実に眠たい色合い

手順1. LUTを素材に適用


 入手したLUTはメーカー提供のものではありませんから、少なからず作者の嗜好が含まれているようです。Protuneで撮影された素材にネットで拾ってきたLUTを適用してみると、眠たい感じは大きく改善されますが、まだまだ満足できる状態ではありません。下の例で言えば、全体の明度が低く、赤と青のバランスが悪いようです。

LUT適用直後、まだまだ補正が必要な状態

手順2. ホワイトバランスを調整


 当初、LUT適用後にいきなりカラーホイールで補正作業を始めていましたが、ホワイトバランスの調整を先にしてみたところ、その後の作業がぐっと楽になりました。今回のアップデートで手動ホワイトバランス調整の機能が追加されましたが、先ずは自動で調整してみます。やり方はクリップを選択し、ビューア下部の「補正」ポップアップメニューから「バランスカラー」を指定するだけです。

自動バランスカラーを適用

左側のビデオスコープをLUT適用直後と比べて見れば、RGB各色のバランスが取れていることが一目瞭然です。これは使えます。映像中に明確な白い部分が含まれていれば、手動でホワイトバランスを調整することも可能です。この作業完了後、手動調整しなくても満足できる結果が得られたこともありました。

手順3. カラーホイールなどで手動調整


 LUTとバランスカラーは適用するだけです。パラメータなどの変更はありませんから、ここまでは自動で色補正が進んできました。まだ満足できる色になっていなければ、ここからカラーホイールなどを使用して初めての手動調整に入ります。

最後の仕上げにカラーホイールで調整

今までは、最初の眠たい画像の状態から手動調整を始めていましたので、かなり難しい作業でしたが、最後の微調整のみならば初心者でも何とかなります。「露出」、「サチュレーション」、「カラー」をベクトルスコープと画面を頼りに調整します。これならば、FCPXだけでもProtune画像を活用できそうです。


「ヒュー/サチュレーションカーブ」でもっと色補正を活用


 DaVinci Resolveで多少いじったことはあるのですが、FCPXで一連の作業として「ヒュー/サチュレーション」の調整をしてみました。これ、とっても面白くて使える機能ですね。スポイトで画面から特定の色(ヒュー)を選択します。右のカーブ上にその色に該当する部分がマークされますので、それを上下にドラッグして「ヒュー(色)」や「サチュレーション(彩度)」、「ルミナンス(明度)」を変えることができます。操作は簡単です。

色々使えそうな「ヒュー/サチュレーションカーブ」

 ヒュー対ヒュー

特定の色を別の色に置き換えることができます。上の例では、黄色い菜の花をピンク色に変えてしまいました。まるで別の花になったようです。面白いですね。

 ヒュー対サチュレーション

指定した色の彩度を変化させられます。菜の花の黄色と空の青色の彩度を上げてみました。真っ青な空と黄色い菜の花がより強調された映像が出来上がりです。


 ヒュー対ルミナンス

指定した色の明度が変化できます。上の例では、青空を明るくしてみました。明るくすると色が薄まって見えますので、同時に彩度も上げてやればもっと強い効果が出せます。


これでFCPXだけでProtuneが活用できそう


 FCPXの新機能を使って一通りの作業を経験してみると、Protune映像をFCPXだけで活用することができそうな気分になってきました(^ ^) 使用したLUT以外にも色々出回っていますので、他のものも試して見る価値はありそうです。LUT適用だけで、もっとイメージに近い補正が完了しているものが見つかれば、さらに調整が簡単になります。

LUTが使えるようになり、FCPXのみでのProtune活用に光が差してきた

ただし、カラーグレーディングと呼ばれる自在な色補正までにはまだまだ長い道のりがありそうです。だいぶ前に購入していた入門書ですが、読んでみるととても入門者向けとは思えない高度な内容で、途中でくじけています。今回、LUTやヒューカーブなどに実際に触れることができましたので、改めて読み進めてみようと心に誓いました。

なかなか読破できない「カラーコレクションハンドブック」

実際のGoPro Protune映像とFCPXでの色補正後の映像を動画にしてみました。まだまだ荒削りですが、なんとか使えそうです。





2017年12月15日金曜日

快適動画編集 FCPXのサラウンド機能で音の定位をコントロール


 GoProで撮影した動画を編集する際に、映像の方は色々と手を加えているのですが、音の方は基本的にレベルの調整くらいしかやっていませんでした。ノイズが多い時や一部の音を強調したい時に、たまにエフェクトを使うくらいです。普通のGoProと小型のSessionを使い分けていますが、Sessionの音声はモノラル録音なんですよね。マルチカム撮影で、ステレオ録音された音が別にある場合は、Sessionの音をサブとして使えば問題ありません。しかし、Sessionしか使っていなかった時にはモノラル音しか使用できず、音的に少し寂しい作品になってしまいます。


モノラルしかないSessionの音を何とかしたい


 使用している編集ソフトのFinal Cut Pro X(FCPX)は、5.1チャンネルのサラウンドオーディオが扱えることは知っていましたが、今まで使用したことはありません。Session一台だけで撮影したサイクリング時の動画を眺めていたら、どうにも音が寂しいのが気になりました。

小型で手軽に使えるSessionだが録音はモノラル

勉強も兼ねて、今後のためにFCPXのサラウンド機能を使ってどんなことができるのか試してみました。Sessionで実際に収録された動画とFCPXに入っている効果音を組み合わせて、音をいじってみました。


意外に簡単だった5.1チャンネル・サラウンド化


 映画の効果音のような厳密な意味での5.1チャンネルではありません。重低音専用のチャンネルなどは何もしていませんが、今まで編集時に「ステレオ」モードしか使ったことのない初心者が「サラウンド」モードに初めて挑戦した時の記録です。

1. 最初にプロジェクトのオーディオ設定を「サラウンド」にする


 FCPXでの編集作業の最初に必ずプロジェクトの作成を行いますが、その際にオーディオの種類として「サラウンド」を指定します。通常は「ステレオ」で作成していると思いますので、出来上がったものを変更するにはブラウザーで該当するプロジェクトを選び、インスペクタの変更ボタンを押します。新規作成時と同じプロジェクトの指定画面が出ますので、ここでオーディオ指定を変えてやります。

プロジェクトのオーディオ設定を「サラウンド」にする

2. パン(定位)のモードを複数あるサラウンドから選ぶ


 次に、音の広がりを変えてやりたいオーディオクリップを選択してから、パン(音の定位)のモードを変えます。モードには複数の選択肢が用意されていますので、意図したものに近いものを選びます。

やりたいことに近いサラウンドモードを選び、パンの動作を指定する

まだまた使いこなせていませんので十分な説明はできませんが、それぞれのモードは概ね次のような働きだと思います。*マークの付いたモードでは音が動いて聞こえることを狙っていますが、そのままでは動きません。パンの量などのパラメーターをキーフレーム等で変化させてやる必要があります。

 基本サラウンド: 

元の音声がモノラルであればサラウンドのセンターに、ステレオであれば前方の右と左のチャンネルに配置されます。形式はサラウンドに変わりますが、聞こえ方は元のままです。

 スペースを作成: 

元の音声を汎用のサラウンド空間を考慮した配分にします。とりあえずサラウンド空間の音に変えたい場合はこれを使います。

 ダイアログ: 

サラウンドのセンターに多めに音を集めます。人の話し声などが前方中央から聞こえてくる状態を作ります。

 ミュージック: 

音楽が空間に広がるように信号を各チャンネルに配分します。コンサートホールなどの状態にしたい場合に使用します。

 アンビエンス: 

周りに広がる自然の音を再現するために、後方のサラウンドチャンネルに多くの音を振り分けます。街中のざわめきなどを再現するのに役立ちます。

 円形*: 

聴く人の頭の周りで蜂がブンブンと飛び回っているような効果を出します。

 回転*: 

円形に似ていますが、こちらは聴く人が回転している状態を作ります。上の円形との違いがいまひとつはっきりしていません。

 後方から前方*: 

後ろから前に音が移動するような効果が出せます。

 左サラウンドから右前方*: 

左後方から右前方へ移動しているような効果が出せます。

 右サラウンドから左前方*: 

右後方から左前方へ移動しているような効果が出せます。

3. サラウンド空間内での位置やパラメータを調整する


 パンのモードを選んだ後に、音の動きをつけたり効果の調整を行います。音源が動いているような効果を出すためには、パンの量を時間の経過とともに変化させる必要があります。再生しながらスライダーをマウスで動かしてやれば感覚がつかめますので、あとは必要なタイミングにキーフレームを追加して、その時の値を決めます。

音に動きを出すためにパンの量(回転や位置)を時間とともに変化させる

パンの量を変化させるだけでも大変面白い効果が出せますが、さらに自分(聞く人)の位置を変えてみたり、スピーカーの一部を止めてみたりして、効果を確認してみます。丸いサウンドパンナーの中心にある点をドラッグすると、自分の位置が変わります。

サラウンドパンナーで聞く位置と周りのスピーカーをコントロールできる

さらに細かなパラメーターが用意されていますが、この段階では試してみる余裕がありませんでした。そもそも、5.1チャンネルオーディオをちゃんと再生できる環境を持っていません。編集作業はヘッドホンを使用して行いましたので、これ以上は別の機会に試してみたいと思います。

4. サラウンドオーディオで書き出す


 サラウンド空間で必要な音づくりができたら、その状態を保ったままでファイルに書き出しておきます。FCPXの共有ボタンを押せばいつものように動画ファイルが保存できますが、オーディオがステレオになっている場合があります。その場合は「設定」を押して、オーディオ・フォーマットを5.1チャンネルに変えてやる必要があります。いつも使っている「Webホスト」ではステレオ以外選べませんでした。

オーディオが5.1チャンネル(サラウンド)になっていることを確認してから保存


でもYouTubeにアップするとステレオに戻っちゃう


 いつも完成した動画はYouTubeにアップしています。今回の習作を一度アップした後にダウンロードして確認したみたところ、ステレオに変換されていました(泣)。サラウンドのままでYouTubeに置いておけるのか現時点では不明です。

サラウンドの動画をYouTubeにアップしてからダウンロードするとステレオになってしまう

ただし、一度サラウンド空間で音を配置してやったものと、最初から最後までステレオで左右の位置調整しかしていないものとでは、完成後にステレオで聴いても明らかに違いがありました。サラウンド空間で音をパンさせると、全てのチャンネルが複雑に絡み合っているようです。最終的にステレオになったとしても、途中で付加された空間の音はそのまま残ります。百聞は一見に如かずです。ストーリーが何も無い動画ですが、サラウンド空間での音の編集効果を聴いてみてください。音圧は低めで編集してありますのでボリュームを上げ気味にし、できればヘッドホンかサラウンドシステムで聴いていただければ、より効果が確認しやすいと思います。




2017年10月21日土曜日

快適動画編集 映像の一部を強調するライフルスコープジェネレータ


 動画編集の際に、映像の一部を強調したい時があります。色々なものが写っている映像の一部分を、何らかの方法で目立たせるテクニックです。動画編集を始めたばかりの頃は、Final Cut Pro X(FCPX)に付属しているシェイプジェネレータを使って丸で囲んだり、矢印を表示したりしていました。少し慣れてくると、そのシェイプを点滅させて、目立たせるようにもしましたが、映像表現という意味では今一つです。Motion5を購入して、自分でジェネレータテンプレートを作成できるようになると、動く矢印で一点を示したり、動くマンガ線で中央部を強調できるようになり、FCPXで作成する動画作品の表現が豊かになったような気がします(あくまでも”気がする”レベルです....σ(^_^;)

Motion5で作成した強調用ジェネレータテンプレート


サスペンス調の強調表示をしたい


 マンガ線や動く矢印などはちょっと軽いイメージがします。もう少しサスペンス調か、ミステリアスな場面でも利用できる強調表示の手法が欲しくなりました。スパイ映画のオープニングなどでしばしば使われる、ライフルのスコープ(照準器)から見た映像です。何かを探して動いているスコープの映像が、ターゲットを見つけた瞬間にピタッと止まるイメージです。スコープの止まった場所が、その後のストーリーの中心になることは誰の目にも明らかな演出になります。

スコープが動き、ターゲットを捕らえた瞬間に止まる


Motion5の「リグル」ビヘイビアで簡単にできそう


 Motion5の持つ豊富なビヘイビアを利用すれば、色々な動きを持つテンプレートが作成できます。獲物を探して上下左右に動くスコープを実現するには「リグル」が使えそうです。動きはランダムに生成させますが、最後は必ず指定した位置で止まってもらわないと困ります。そのため、「リグル」ビヘイビアで生成したパスを「反転」ビヘイビアで前後逆にします。これで、ランダムに動いた後に止まる場所は必ず、指定した位置になります。

Motion5で「リグル」と「反転」を使い、動くライフルスコープを実現

スコープの画像はイラスト作成ソフト(AutodeskのGraphic)で描きました。マスクを利用して、スコープの内側と外側の明度を別々に変えられるようにします。

 「リグル」のパラメーターはたくさんありますが、「量」を調整して画面からあまり飛び出さないようにして、「周波数」で速度(パスの長さ)を決め、「ノイズ量」で細かさを指定します。狙撃手が狙いをつけるような動きですから、あまり細かい動きにならないよう「ノイズ量」は少な目にします。

「リグル」ビヘイビアのパラメータは多いが、難しくはない

それぞれのパラメーターを変えると、キャンバスに表示されている「リグル」のパス(赤線)が変化しますので、それを頼りに最適なものを指定します。パラメータのうち「周波数」と「ノイズ量」はFCPXに公開して、利用時に変更できるようにしました。

キャンバスに表示されるパスを見ながらパラメータを調整

パスは乱数で決められますので、気に入らなければ「ランダムシード」にあるボタンを押して再生成できます。このランダムシードも公開します。


FCPXからの利用は他のジェネレータ同様簡単


 一度ジェネレータテンプレートにしてしまえば、FCPXからの利用は超簡単です。タイムライン上の必要な場所にドラッグして、必要な長さに調整し、公開されているパラメータを調整するだけです。

ジェネレータテンプレートをドラッグすれば即利用できる

パラメータ調整で一番重要なのは、スコープが最後に停止する位置(ターゲット)を指定することです。同時にスコープのサイズも調整します。ジェネレータをドラッグした直後は、「ターゲット設定完了」にチェックがありません。これは「リグル」が無効になっている状態です。この時には、スコープは最終位置となる場所に表示されています。「スコープサイズ」及び「最終位置」を変更して、強調したい部分に合わせます。その後、「ターゲット設定完了」にチェックを入れると、「リグル」が有効になり、ランダムに決められたパスの開始点に移動します。

テンプレート使用時に一番大切なスコープの最終位置とサイズの指定

「リグル」ビヘイビアの「周波数」は公開パラメータでは「サーチ移動量」に、「ノイズ量」は「サーチ複雑さ」という名前にしてFCPX側に公開してありますので、動きに変化をつけたい場合はこれらのパラメータも調整します。最初と最後は15フレーム長のフェードイン・アウトをするようになっていますが、不要な場合はチェックボックスを外します。これだけで、狙いを定めて動き回るライフルスコープ映像が追加できます。あとは適当な効果音を付けてやれば完璧です。実際の動画で使用しているサンプルはこちらです。テンプレートにすると本当に便利ですね(^ ^)/



詳細は公開しているテンプレートの中をご覧ください


 「快適動画編集」というカテゴリーのブログ記事で紹介している自作のFCPXテンプレートをグーグルドライブで公開しています。記事中では作り方の詳細までは説明していませんが、Motion5で中身を開けば、ご理解いただけると思います。Motion5をお持ちでないFCPXユーザーも、ファイルを解凍して所定の場所に置いていただければ、テンプレートの機能を利用できます。改善のアイディアなどがありましたら是非お知らせください。



2017年10月10日火曜日

快適動画編集 神アプリVIRB Editのバージョンアップ&徹底活用


 GPSデバイスを併用しているアクションカメラユーザーにとって神アプリとなっているガーミンのVIRB Edit。位置情報だけでなく、GPSデバイスが収集・記録する様々な情報を、動画にオンスクリーン表示できます。サイクリストの多くが使用しているガーミンのEdgeシリーズであれば、走行軌跡以外に速度・標高・気温やペダル回転数・心拍数などのデータが衛星からの正確な時刻情報と共に収集でき、さらに対応する自転車パーツを購入すれば、使用しているギアのポジションやペダルを回す仕事量(ワット)まで記録されるため、録画された動画を見る際の情報量・臨場感がまるで変わってきます。


VIRBユーザーでなくても利用可能な神アプリ


 VIRB Editはガーミン社のアクションカメラであるVIRBシリーズ用に作られた無料編集ソフトですが、動画のファイル形式が.mp4であれば読み込み可能です。さらに、GPSログファイルは.gpx.fitの拡張子が読み込めますので、ほとんどのGPS機器のデータが取り込み可能です。つまり他社のアクションカメラやGPSデバイスユーザーでも、ファイル形式さえ合えばこの無料編集ソフトが利用可能になります。GoProユーザーである私も、動画編集の際に簡単にGPSデーターをオンスクリーン表示させるツールとして今やなくてはならない存在となりました。太っ腹なガーミン社に感謝しつつ、便利に利用させていただいています(^ ^) VIRB Editを最初に使ってみた作品がこれです。よく走る周回トレーニングコースの映像に、現在位置・速度・高度・距離・ケイデンス・心拍を表示させただけですが、勾配と心拍数・速度を振り返りながらトレーニングすれば気合が入ります。

VIRB Editを使った最初の作品(クリックするとYouTube動画が再生されます)

ただし、動画編集ソフトとしては無料ツールの域を出ていません。カット編集やタイトル挿入などの基本的な機能は持っていますが、高度な編集には向きませんので、ゲージのオーバーレイ作成のみをVIRB Editで行い、編集作業はFinal Cut Pro X(FCPX)などの本格的な編集ソフトで行なっている人も多いようです。


安定した新バージョン(5.2)をインストール


 だいぶ前にバージョンが4から5に上がっていましたが、最初のリリースである5.1をインストールしたらバグだらけで、バージョン4に戻して使っていました。新バージョンで追加された機能も、360度映像が撮れるVIRB360のサポートがメインだったので、急いでバージョンアップする必要もありません。最近になって5.2がリリースされましたので、インストールしてみました。多くのバグが修正されているようで、今の所不具合は出ていません。まず目につくのが、新しいテンプレートやゲージが追加になっていることです。

モダンなテンプレートが追加になっているVIRB Edit 5.2.0

今までにないモダンなテンプレートが複数追加になっています。驚いたのは、一つのテンプレートが「データプリセット」という選択項目を使って、複数のアクティビティで共用されていることです。見た目が同じテンプレートでも、「データプリセット」項目に応じて「サイクリング」や「ランニング」用の表示項目に変わるようになっています。今までは別々のテンプレートを用意しなければならなかったので、大変スッキリしました。

 さらに驚いたのが、ゲージの大きさや傾きが変えられるようになったことです。今までは初めから「大・中・小」の大きさのゲージを別々に作っておく必要がありましたが、新バージョンではその区別がありません。必要な大きさに変えるためのスライダーが用意されました。同様にゲージの傾きも変えられます。かなり自由度が増しました。

自由にゲージの大きさと傾きが変えられる

今までは色の部分しかカスタマイズできなかったゲージですので、この新機能はかなり使えそうです。

 一番感動したのが、エクスポート(レンダリング)の速度です。今まではレンダリングにGPUを使っていなかったらしく、かなりの時間を要していました。新バージョンで数分の長さのオーバーレイ合成をレンダリングしたら、あれよあれよという間に終了しました。新機能の説明書きには見つからなかったのですが、どうもGPUを利用するようになったようです。試しにMacのアクティビティモニターで調べてみたら、ちゃんとGPUが必要だと出てきます。前バージョンでは「いいえ」となっていましたので、改善されたようです。

Macのアクティビティモニターでは高性能GPUが必要だと出てくる

今までレンダリングにかなりの時間がかかっていましたので、このGPU利用レンダリングだけでもバージョンアップした甲斐がありました。


アイディア次第で作品の可能性は無限に広がる


 Windows版にしかありませんが、既存のゲージを編集したり独自のゲージを作成したりすることも可能です。動画作品で何を表現したいのかによって、GPSデバイスが記録したデータの見せ方が変わってきます。ゲージの編集までできますので、作品の不出来をVIRB Editのせいにはできません。今まで挑戦してきたVIRB Editの面白い使い方をまとめてみました。

・伝えたいことをゲージで表現する


 自転車できつい坂を登ってゼーゼー言っている動画では、どの程度の坂なのかがわかるようにゲージを表示します。一緒にその時の心拍数を見せれば、大抵の人は意図を理解してくれます。

毎回辛い思いをしている登り坂を表現(クリックするとYouTube動画が再生されます)

VIRB Editのゲージで一つだけ不満をあげれば、グラフ表示の横軸が時間軸しか選べないことです。坂のきつさをグラフで表現するには、横軸は時間ではなく距離でなければなりません。時間のままだと、早く走れる下り坂はきつく、時間のかかる登り坂はゆるく表現されてしまいます。この横軸を距離にするオプションは現時点ではサポートされていません。

・運転中の心理状態を示すために心拍データを利用


 年甲斐もなく大型バイクに乗り始め、乗車の度に緊張の連続です。サイクリング用の心拍センサーを身につけてバイクに乗ってみたら、どんな場面で緊張しているのかが心拍データから手に取るようにわかりました。

バイク乗車中の緊張度合いが心拍からわかる(クリックするとYouTube動画が再生されます)

危険な場所や苦手な動作時に心拍が大きく上昇していました。安全運転のために自分の運転を振り返るのにも役立ちそうな動画作品が出来上がりました。

・標高と山の紅葉の進み方を表現


 オートバイで山の紅葉を見に行った時の動画に標高データを表示すれば、標高が上がるに従って紅葉が進んでいく様子が手に取るようにわかります。単純なゲージの使い方ですが、山の紅葉の映像を見ただけでは気づかないこともわかります。

紅葉の進み方が標高により変化することを表現(クリックするとYouTube動画が再生されます)

走行ルート全体と現在位置も表示できます。サーキットなどのように、誰が見てもわかるルートならこのままでも大変役立ちますが、通常はあまり意味をなしませんね。

・本物の地図にルートと現在位置を表示させる


 VIRB Editが表示してくれるルートは単純な線です。ただし、GPSの位置データを元にしていますので、その曲線は正確な移動の軌跡を示しています。そのルートに現在位置が点で表示されていますので、これが本物の地図上に表示されたら臨場感が格段に向上します。

Googleマップ上にルートと現在位置を表示(クリックするとYouTube動画が再生されます)

VIRB Editの作業手順を工夫して、GoogleマップやGoole Earthなどの画像の上にルートと現在位置を表示させてみました。ただラインとしてルートが表示されるのと比べると、今どこを走っているのかが一目瞭然です。

・同じ場所を走る映像を並べてバーチャルレース


 同じ登り坂を自転車で何度も走れば、徐々に速く走れるようになるのが普通です。毎回動画とGPSデータを記録していましたので、少しは早く走れるようになったかを検証するために、半年毎にゲージを合成した映像を並べてみました。独りバーチャルレースの開催です。

三回の登り坂映像を並べて比較(クリックするとYouTube動画が再生されます)

さらに、比較しやすいようにそれぞれの現在位置を一つの地図上に重ね、当日の最大心拍数から求めたその時点での運動強度を示すバーグラフを並べて表示しました。ゴールまでのタイムを比較した結果は、徐々に遅くなっているという悲劇的なものです.... orz

・近未来のサイクリング用ナビに導かれて


 VIRB Editによるゲージのオーバーレイと共に、Google Earth Proによるツアー動画を合成し、自転車用のナビゲーションを表現した作品です。カーナビのように速度や回転(ケイデンス)・外気温・心拍数が計器として表示されています。タッチスクリーンで操作すると、画面の表示項目が切り替わり、上空からの映像が拡大されたり、車のルームミラーのように後方視界がピクチャー・イン・ピクチャーで表示されるというシナリオです。

画面・音声などカーナビをイメージした作品(クリックするとYouTube動画が再生されます)

わざと機械的な音声をMacで作り、よくあるナビの音声を真似ています。自転車用のルートナビという想定ですが、もっと色々な状況のナビが考えられますね。


 これらの作品はVIRB Editによるゲージのオーバーレイがなければ実現できなかったと思います。イラスト作成ソフトやMotion5などのツールでゲージ自体を描くことはできますが、実際の動画に同期したゲージの動きを作り出すことは不可能です。GPSデバイスが収集したリアルタイムのデータをベースにしているからこそ、ゲージの示す数値やメーターの指針に迫力が生まれます。『優れたツールに囲まれている割に、面白い作品が見当たらないぞ』という声が聞こえてきそうですので、この辺でやめにしたいと思いますが、VIRB Editはとっても役に立つ神アプリです。太っ腹なガーミン社には感謝してもしきれません(でも製品の値段が高過ぎるぞo(`ω´ )o)。