2017年9月7日木曜日

マウントの鬼 理想のGoProマウントを追い求めて自作に走る


 GoProを代表とするアクションカメラを使い始めて三年が経ちました。自転車(ロードバイク)やオートバイでのツーリングシーンを中心に撮影しているため、振動の多い場所へのマウント方法に三年間悩み続けて来ました。メーカー純正のマウントから、サードパーティ製の変わり種マウントまで試したマウント類は数えきれません。振動のない場所でなら便利に使えるだろうマウントも、路面からの振動がダイレクトに伝わるロードバイクや、エンジンが発生する激しい周期振動が続くオートバイでは、画像が歪んでしまい見るに耐えない映像になってしまう場合が多々あります。


三年間のGoProマウント試行錯誤で学んだこと


 激しい動きの中で、迫力ある映像を安定して収録するにはカメラを取り付ける場所と、取り付ける方法が大変重要です。オートバイへのアクションカメラ取り付け試行錯誤の記録自転車へのアクションカメラ取り付け試行錯誤の記録はすでに記事にまとめてありますが、そのどちらにも共通する重要なポイントは可能な限りベースマウントの固定箇所とカメラとの距離を短くすることだと考えています。もちろん取り付ける場所自体が振動していないことが重要ですが、せっかく振動の少ない場所に取り付けても、カメラまでの距離が長いとそこで余計な振動を拾ってしまいます。

エンジンからの影響が少ないフロントフォークに取り付けたGoPro(悪い例)

上の写真は悪い一例です。前輪の一部を写し込みながらオートバイの進行方向を撮影するために、フロントフォークのフェンダー取り付けボルトを利用してGoProのベースマウントを固定しました。ここにGoPro SessionやPanasonic HX-A1Hなどをダイレクトに取り付けると、路面やエンジンからの振動がほとんど気にならない安定した映像が撮れますが、GoPro HERO3+ではそうはいきません。サイズが大きく、尚且つ本体横では固定することができない構造のため、延長アームやら90度向きを変えるためのアームを入れなければならず、この部分で振動を拾ってしまい画像がブレブレでした。

 GoProのハウジング下部にある取り付け部はカメラを前後に傾けることはできますが、左右に向きを変えることはできません。画面に映り込む前輪の位置を変えたいと思っても、この状態ではカメラの首を左右に振ることは不可能です。正方形のGoPro Sessionや円筒形のHX-A1Hでは本体真横で固定が可能ですので、カメラの向きを変えることができます。

本体横で固定できるSessionならではのマウント方法

ただし、今度は上下方向には動かせません。上下に向きを変える場合はベースマウントを固定しているネジを六角レンチで緩めてやる必要があります。それでも、固定部分に垂直または水平面があればカメラの水平・垂直の調整も簡単です。問題になるのは、ハンドルバーやミラーステー、グラブバーなどの複雑な傾斜のある場所にベースマウントを固定する場合です。撮れる映像の水平など気にしないという強者もいますが、シーンによっては水平になっていないと気持ちの悪い映像になってしまいます。

 下はGoPro純正のSportsmanマウントでミラーステーにカメラを固定している様子です。しっかりと固定できるのですが、90度向きを変えるアームも含めて三つの軸を活用してやっとカメラの水平を調整しています。GoProのマウントでカメラの水平を保つためには、アームを複数利用する必要があり、どうしても振動に対して弱くなります。

Sportsmanマウントでミラーステーに固定

 Sessionの発売と同時に画期的なアクセサリーが出てきました。ボールジョイントバックルです。スイベルマウントという呼び名で、ヘルメット取り付け用にも発売されています。今までのGoProマウントの常識を覆す、360度どの方向にもカメラを向けることができます。さらに5度程度ですが、どの方向にも傾斜(チルト)させることができるため、微妙に傾いている場所に固定した場合にも水平を出しやすくなっています。

画期的なGoProボールジョイントバックル

強いて難点をあげれば、この機構がバックルとしてしか用意されていないことと、価格が高いことでしょう。発売当初は4千円以上もしました。使用するベースマウントはバックル式のものにしか対応しませんので、そこにこの高価なバックルをセットして利用します。バックル式でないベースマウントもたくさんありますので、その場合は今まで通りになってしまいます。サードパーティ製で類似の機構を持つ延長アームが発売されていましたので、いくつか購入して試してみましたが、固定箇所とカメラ本体の間の距離が不必要に伸びてしまい、振動でブレブレになってしまいました。

自由関節を持つものや90度変換用の延長アームも売られている

 カメラの向きを自在にセットしたい場合にはRAMマウントシステムが大変便利です。1インチのボールをアームで挟み込んで固定する構造で、ベース用のボールが固定できればどこにでもつけられます。ナビの取り付けにも利用できるため、オートバイには3個のRAMボールを常設して走っています。

向きのセットは自在だが、振動の影響が大きいRAMマウントシステム

ただし、アームやボールに重量があり、ゴムコーティングされたボールを利用しているため、結構振動を拾います。編集素材として短いシーンを利用するだけであれば利用価値は高いのですが、メインで利用する映像としては少しブレが大きい取り付け方法だと感じています。


最も利用頻度の高い最近のマウント方法


 自転車やオートバイへの取り付け易さ、取り付け可能な場所の豊富さ、振動の影響の少なさ、取り付け後の向きの調整のし易さなどを考慮し、三年間経験してきたたくさんのマウント方法の中で現在最も活躍しているのがこの方法です。

一番活躍しているJAWSフレックスクランプとボールジョイントバックルの組み合わせ

JAWSフレックスクランプに付属してくる長いグースネック部は使用せず、ボールジョイントバックルを直接取り付けたマウントです。5センチ程度までの厚板やポールを挟んで固定します。バネが大変強力ですので、多少テーパー状になったグラブバーやタンデムステップなどへもガッチリと固定できます。いい加減な向きに固定しても、ボールジョイントバックルのお陰で好きな向きに変えられますし、水平の調整も可能です。本体横で固定できるSessionと組み合わせれば、リザーバータンクなどへも、最小のパーツ構成で取り付け可能です。ほとんど振動の影響を受けない安定した映像が撮れました。

リザーバータンクに取り付けたSession

自転車やオートバイでの走行中の撮影ばかりではなく、観光地での記念撮影でも周りの建造物に取り付けて三脚代わりに利用できるため、持参する荷物を減らすことができます。非常に応用範囲の広い、安定した映像が撮れるマウント方法だと思いますが、クリップ部分が大きいため狭い場所には入りません。常設するには目立ちすぎるのと、クリップもバックルも高価で、追加購入するのはちょっと躊躇します。


小型で安価なボールジョイントのマウントが欲しい


 ボールジョイントバックルと同等の機能を持つ、小型のマウントを探しましたが、ベース固定部とカメラとの距離を最短にできる製品は見つかりませんでした。3Dプリンターを使って市販品にない実用的なマウントを自作できることを経験していますので、今回も自分で作ることにしました。いつものようにAutodeskのFusion360で設計開始です。

Fusion360で設計中のボールジョイント部分

GoProの取り付け部分をボール状にしてしまうパーツと、そのボールを固定するパーツで基本的なジョイント構造としました。GoProで使われているM5ネジで締め付け、固定できるようにしてあります。出来上がったデータをDMM.makeに送付して3Dプリントしてもらいます。一番価格の安い白色のナイロン素材を使いますが、適度な柔軟性のある優れた材料です。粉末状の素材にレーザー光線を当てて焼き固めて成形しますので、サポート材が不要で、中空形状のものも作れます。部品の配置を工夫して、X/Y/Z方向の投影面積を最小にすれば費用を抑えられます。金型を準備して大量に生産する市販品とは違い、たった一個しか作らない自作マウントですが、工夫次第で市販品に負けない価格を実現できます。

GoProに取り付けた自作ボールジョイント

せっかくの自作ですから、持っているRAMマウントシステムのパーツも活用できるように、ボールの直径を1インチにしました。これで、RAMマウントの各パーツともごちゃ混ぜで使用できます。

RAMマウントと同じ1インチサイズにした自作ボール部分

 ベースマウント部分は取り付け対象物によって形状を変えてやる必要があります。今回はパイプや角柱などにタイラップで固定するようにしました。円柱でも角柱でも、テーパー状の棒でも、タイラップを締め付ければしっかりとセットできます。ベースマウントの固定箇所とカメラの重心間の距離が最短でマウントすることができました。水平の調整やカメラの向きを変えるのも一発でできます。

微妙な傾き・太さのポールでも水平が簡単に出せる自作ボールジョイント

ロックを緩める機構のついたタイラップを使えば、使用した後に簡単に外すことができます。常設する場合は、余った部分を切り落としてしまえばスッキリします。

タイラップを台座の穴に通しておけば取り付け作業中に落とすことはない


市販マウントを改良して理想に近づける


 一万円近い定価のGoPro純正Sportsmanマウントは、本来は釣り竿やライフル銃、アーチェリーなどに固定して前方もしくは後方を狙うためのものです。そのため、上下方向へは簡単に向きを変えられますが、左右への首振りはかなり難しい構造です。強力な万力部でオートバイのグラブバーにしっかりと固定できますが、取り付けたGoProの水平を保ったままカメラの方向を左右に振るのは困難です。もう少し外側に向けて、バイクの写り込みを減らしたいのですが、今までは諦めていました。

バイクのグラブバーに取り付けたGoPro-Sportsmanマウント

GoProを載せる部分を、今回設計したボールジョイントのものに取り替えてやれば水平調整も含めて左右の首振りも自由に行えます。ボールジョイント部分の設計はそのままで、下部の構造を変えてやれば、すぐに出来上がりです。

市販品の一部を自作のボールジョイントに置き換えればさらに理想に近づく

3Dプリントで出来上がったものがこれです。カメラを取り付けるボール部分は別の形状に変えてみました。これならGoProと微妙に寸法の異なる格安中華カメラでも問題なく取り付けられます。一定の方向にしか向きを変えられない元々のカメラ固定部をネジごと自作したもの(白いパーツセット)に交換してしまえば、自在ジョイントを持つ新機能マウントの出来上がりです。これで高価なGoPro純正Sportsmanマウントの出番も増えるに違いありません(^ ^)

カメラ固定部をそっくり置き換えれば新機能マウントの出来上がり


 ボールジョイント受け部の下側にM8やM6用のネジ穴を開けてやれば、簡単にねじ止め式のマウントも出来上がります。ジョイントの基本構造が出来上がってしまえば、あとはアイディア次第で色々なものに取り付けられるマウントに変身してくれます。アクションカメラを利用するシーン毎に理想のマウントは異なってくると思いますが、3Dプリンターで自作してしまえば、それぞれのシーンに合ったものが簡単に入手可能です。良い時代になったものです。



DMM.makeクリエイターズマーケットから入手できます


 自分で使ってみて「これは使える」と判断した3Dプリント作品をクリエイターズマーケットに出品しています。せっかく購入したGoProスポーツマンマウントだが、出番が少ないという不満をお持ちの方はぜひご検討ください。活用範囲が大幅に広がりました。下記リンクにて利用方法や入手方法をご紹介しております。

活用範囲を格段に広げるGoProスポーツマンマウント交換アームを出品

(2017年10月1日追記)



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