2017年5月29日月曜日

実践テスト サンキュッパの4Kアクションカムは果たして使い物になるか


 雪山やオートバイ、サイクリングを楽しんでいるときの感動シーンを残したくてGoProなどのアクションカメラを複数台活用しています。GoProの人気が出てくるとすぐに類似品が市場に出回り始めます。中でも中国のSJCAMなどは高いコストパフォーマンスで一定の評価を得ているようですが、それでも一万円前後で売られていますので、気軽に試せる価格ではありません。さらに安価なSJCAMのコピー品も度々見かけるようになっていました。


秋葉原で3,980円の4Kアクションカメラを発見


 用事もないのに時々秋葉原をぶらついては掘り出し物を探しています。いつものパーツ屋を覗いたら、4Kという文字が輝くアクションカメラのパッケージを発見。何と税別3,980円の価格で、4K・30FPSまで撮れるカメラが売られていました。今使っているGoPro HERO3+ Black Editionでも4Kは15FPSまでしかサポートしていませんので、それ以上の性能です。見た目はSJCAMにそっくりですが、メーカーの名前は書いてありません。一瞬「偽物?」との不安がよぎりましたが、試して見たいという興味が勝りました。

4Kの文字が光る3,980円のアクションカメラ

外箱から取り出すと、しっかりとした(でもありませんでした:2017年5月30日追記)ハウジングに収まったカメラが出てきました。ハウジングのデザインもSJCAMにそっくりです。

SJCAMにそっくりなカメラ本体とハウジング

カメラ本体をハウジングから取り出してみると、アルミ面に細かい傷が複数見えます。やっぱり中華品質だとの思いを抱きながら付属品を取り出します。

小さな傷がたくさんついているカメラ本体

落下防止用のワイヤーや固定のためのタイラップも含めた、豊富なアクセサリーが出てきました。基本的にGoPro用と互換ですから、仮にカメラ本体が使い物にならなくてもアクセサリーを購入したと思えば諦めもつきます。

すごい種類のアクセサリーが同梱されてる

GoProの場合は別売品になっているアクセサリーもあり、それだけでこのカメラ価格を超えてしまいそうです。

ロールバーマウントやカメラ三脚マウント、ネイキッドフレームなどGoProでは別売品のものも付属

背面には2インチのカラー液晶がついていて、設定や撮影中のモニター、撮影後の再生に利用できます。これもGoProの一部モデルではオプションです。

2インチのカラー液晶がついている

正面から見たサイズはGoProと同じで、若干奥行きがあります。特筆すべきはめちゃめちゃ軽いこと。バッテリー込みで58gと外箱に書いてありました。振動の多い場所で使うカメラですから軽い方がいいのですが、中身がスカスカなのではとの疑念が湧きます。

ほぼGoProと同サイズ、背面にカラー液晶がついていてもかなり軽い

バッテリーは900mAhのSJCAM用とそっくりなものがついていました。これで90分の録画ができると書いてあります。

SJCAM用にそっくりなバッテリー、これで90分の録画が可能(だそうです)

以上、同梱品を確認した限りでは3,980円の商品とは思えない内容です。あとは果たして動くかどうかですね(^ ^)


液晶パネルでの設定やモニターはやっぱり便利


 先ずは付属のACアダプターで充電を行ってから、いよいよ緊張の電源投入です。奇怪なビープ音とともに、背面の液晶が明るくなりました。言語の設定が可能で、日本語も表示できます。意味不明な表現が一部に見られたため、英語モードで使用することにしました。


動画の解像度指定画面では4K/1080p/720pの三種類が選択できますが、フレームレート (FPS)を指定する場所がありません。どうもFPSは固定?のようです。謎は残りますが、4Kにセットしてテストを進めました。


写真(静止画)の解像度指定もできるようになっています。外箱には16MピクセルのCMOSセンサー使用と書いてありますが、なぜか設定画面では20Mピクセルの指定も可能でした。よくわかりませんが、とりあえず16Mでテストです。


撮影時に映像がモニターできると、とっても楽です。今まではカメラのセット時にスマホとWi-Fi接続してから画角を調整していましたが、液晶モニターがついていれば本体のみで一発で画角を決められます。これは一度使ってしまったら手放せないですね。


決して画質のいい液晶ではありませんが、本体だけで簡単にカメラの設定を行えますし、映像がモニターできるのは便利です。バッテリーの残量や録画モードの確認も撮影中に行えるため、失敗も少なくなりそうです。


実際に撮影してみて感じる「本当に4K?」の疑問


 晴れた日を選んで、格安4Kカメラを自転車にマウントしてテストしてきました。比較のために、いつも使用しているGoPro HERO3+ Black Editionでも同時に録画します。

格安4KカメラとGoProを同時に使って比較

下が格安4Kカメラで撮影した映像です。ホワイトバランスはAUTO設定ですが、青かぶりしていて、編集時に色調整が必要です。空や道路の明るいところに色の縞(バンディング)が現れてしまっています。樹木の葉などの細かい部分がはっきりしません。とても4Kの解像度があるようには思えない映像です。

格安4Kカメラで撮った映像

HD(1080p)で撮影しているGoProの映像と比較しても解像度では劣ります。価格差を考えれば比較するのがかわいそうなほどですが、それでも4Kを謳っている割には見た目の解像度は720p程度しかありません。

HDモードのGoPro映像と比較しても低い解像度

本当に4Kなのかとの疑問が消えず、できあがったファイルの情報を読み取って見ました。4K設定で録画しているはずなのに、なんと出来上がったファイルは横1920、縦1088ピクセルのHD解像度ではありませんか!!! そもそも1088って一体どういうサイズなんでしょう。規格では1080のはずですが.... 8ピクセル分はサービスでしょうか?


音声はモノラルで、サンプリング周波数8KHzです。電話程度の音ですから、音については期待できませんが、もともとアクションカメラの音はよくないので、ここは諦めます。動画ファイルのサイズからビットレートを逆算してみると、GoProのHDモードと同じ約20Mbpsになっていました。これだけのデータを使いながら、あの程度の画質ですから、画像センサーや処理がいかに貧弱かがわかります。


写真(静止画)の解像度も怪しい


 動画がこれだと写真もかなり怪しくなります。16Mピクセル解像度の設定で撮影した写真がこれです。案の定、横1920 x 縦1088のHD解像度で写真ファイルも出来上がっていました。

16M設定で撮影した写真のサイズは2M

これは設定可能な写真解像度の中で最低の2Mピクセル時のサイズです。2Mを超えるどの設定で撮影しても、出来上がる写真はこのサイズで一定でした。外箱には「16Mega Pixels CMOS Sensor」と表記されていますが、どう考えても2Mega(HDサイズ)のセンサーしか使っていないように思えてなりません。この基幹部品をケチれば相当原価が抑えられますから、考えられないことではありません。

箱に記されているスペックは一体どこへ


この格安4Kカメラの使い道を考えなくちゃ


 税別3,980円の格安カメラですから画質が良くないのは諦めもつきますが、デカデカとパッケージに表記されている4K解像度が、実際は使えないというのはどう考えても納得できません。16MのCMOSセンサー搭載で、設定メニューには20M(笑)までの高解像度モードがあるのに、どれを指定しても最低の2Mでしか写真が撮れないというのも、単なる不具合とは思えません。明らかに人為的なものを感じます。クレームをつけたら「ソフトのバグで、現在パッチを作成中」とか言い訳されそうですが、連絡先もわかりません。

 では、これを返品しに買った店舗に持って行くかといえば、往復の交通費が千円以上かかりますので多分行きません。全く動かないのなら別として、なんらかの活用方法を考えることにしました。


USBケーブルでパソコンに繋ぐと、Mass Storage/PC Camera/REC_modeの三つから選べます。PC CameraモードにすればWebカメラなどの用途に使えます。VGA解像度程度の使用目的であれば、過不足はないと思います。REC_modeを選べば、USBから給電しながら録画が続けられますので、ドライブレコーダーなどの活用方法が考えられます。

 SJCAMの外箱に書かれているスペックを真似して、中身は安い模倣品というのが実情だと思いますが、わざわざ設定メニューを偽装?してまで売り上げを伸ばそうという根性がすごいですね。さすが何でもありの中華製品です。かかわっている人々のエネルギーを感じてしまいます。スペックを偽ることは今の日本ではあってはならない犯罪行為でしょうが、伸び盛りでイケイケの国では当たり前に行われているんでしょうね、きっと。いろいろ考えるきっかけとなった3,980円でした。

 走行中の実写映像を含めて格安4Kアクションカムの紹介ビデオを作りました。よろしければ参考にしてください。




よく見るとハウジングの作りもいい加減だった


 見た目はGoProやSJCAMの純正品にそっくりのハウジングですが、よくよく見るとかなりいい加減なことが分かりました。カメラのレンズをカバーする部分は、映像に歪みが出ないよう精度の高いアクリルやガラス板を別部品として取り付ける構造になっているのが普通です。この部分までハジング本体と一緒に成型してしまうと、どうしても歪みが残ってしまいます。格安4Kカメラのハウジングにもネジ止めされたレンズカバーが付いていますので、すっかりそうなっていると信じ込んでいましたが、よくよくレンズ部を見ると歪んでいるのが分かりました。

レンズ保護部が別パーツで取り付けられているようなハウジングだが....

裏側から覗くとレンズ部分も含めた一体成形になっています。ネジ止めされている表の黒いカバーは単なる飾りでした。無くてもハウジングとしての機能は全く変わりません。光学系の機器とは思えない、いい加減な作りになっています。厚さも薄く、本当にこれで水深30メートルまで耐えられるのか不安です。

裏から見るとレンズ部も一体成形されている


GoProにもないMotion Detection機能は面白い


 設定メニューをいじっていたら「Motion Detection」という項目を見つけました。読んで字のごとく、画像センサーで動きを検知した場合に自動的に撮影を開始する機能です。この機能、GoProにはありませんがSJCAMには以前から備わっていたようです。


里山に持ち出して野生動物の撮影にも活躍しそうな機能です。カメラの周りに餌をまいて、野鳥が集まってくるのを撮影して見るのも楽しそうです。暇さえあれば居眠りしている愛犬の前にカメラを置いてみました。

怪訝な顔の愛犬の前に動き検知をオンにしてカメラを置いてみた

動き始めを検知してから録画が始まるまでに若干の時間がかかるようで、起き上がった瞬間は撮れませんでした。カメラの向きや距離を工夫してやらないと狙ったシーンを撮るのは難しそうです。日付と時間を映像に入れることもできますので、防犯カメラ的に利用することもできそうです。

Motion Detection機能で自動撮影してみた

動きを検知し撮影を開始してから20秒経つと自動停止します。設定メニューを探してみましたが、撮影時間の指定はありませんでした。いろいろ制限はありますが、3,980円の格安アクションカムの使い道が少しずつ見えてきました。

(2017年5月30日追記)



SACのAC600と全く同じ外箱だった


 後日、家電量販店のアクションカメラコーナーを覗いていたら、見覚えのあるパッケージを見つけました。使われている写真などが微妙に異なりますが、書かれている文字やデザインは今回つかまされた「嘘っぱち4Kカメラ」と全く同じです。商品名はSAC社のAC600となっていて、9,800円で売られていました。ハウジングや付属オプション類も非常に似ています。秋葉原で手に入れたサンキュッパのなんちゃって4Kカメラは、どうもSAC社の製品をパクったようです。

(2017年7月21日追記)


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