2017年9月27日水曜日

快適自転車生活 ライト沼レポート(中華ライトは単燈式か多燈式か)


 秋の夜長を迎えて、どっぷりとハマっているライト沼からのご報告です。高輝度LEDを一つ使った格安の中華ライトが思った以上に明るく、灯りの全くない夜の農道でも何とか走れたことに気を良くして、さらに明るそうな三つのLEDが搭載されている中華ライトをまたポチってしまいました。ほとんどビョーキですσ(^_^;)


中華ライトの製品仕様は何が本当なのか分からない


 Amazonで目についたライトはRioRandというブランドで『1800Lm 3x CREE XM-L U2 高輝度LED 防水充電自転車ヘッドライト 自転車ライト+ヘッドライト2in1機能! 18650バッテリーと充電器付き 明るさは4段階で調節可能!』という見出して売られていました。1,800ルーメンのLEDバルブが三つも!ということで、トータル光束は計算上5,400ルーメンになります(マジかよ)。→ 記事を書いていてふと気付いたのですが、1,800が三つではなく、三つで1,800とも読めます。微妙な表現だ....

1800ルーメン?のLEDバルブが三つも付いている格安中華ライト

大容量Li-ionバッテリーやヘッドライト用のベルトなどの豊富なオプションがついてきます。それでいて、売値は税込2,539円なり。この価格設定では日本の専業メーカーは太刀打ちできませんね。ただし、それは謳っている製品仕様がその通りだった場合です。

大容量バッテリーや充電器などの豊富な付属品がついてくる

入っていた取扱説明書を見ると、LEDバルブはCREEXM-L U2ではなくT6となっていました。さらに、Amazonの商品説明ページには3,000mAhのバッテリー容量となっていましたが、取説では6,400mAhと倍以上になっています。一体どれが本当なの???と疑問だらけですが、どれも怪しいと思った方が間違いがありません。

 LEDメーカーであるCREE社の資料を見ると、U2の場合は700mAの電流を流した時の最低保証値は300ルーメン、T6の場合は280ルーメンです。電流をLEDの許容値である3,000mAまで流しても、光量は3.25倍までしか上がりません。U2で975ルーメン、T6で910ルーメンです。LEDメーカーの最低保証値ですから、LEDライト商品の代表値として中華メーカーが1,200とか1,300ルーメンと謳っているのは何となく理解できますが、一つのLEDバルブが1,800ルーメンはどう考えても多過ぎです。

 バッテリーの仕様についても同様のことが言えます。電圧や外装サイズから、内部の使用電池は18650Li-ion充電池だと思われます。以前買ったLED一個の中華ライトや今回のLED三個の中華ライトに付属してきたバッテリー容量を見ると、ますます疑心暗鬼になってしまいます。

格安中華ライト付属のバッテリー

18650充電池を二本直列とし、それをさらに二組み並列に接続してあると思われます。一本の電圧が3.7V、容量が2,000〜3,200mAh程度の18650Li-ion充電池が一般的ですので、上のバッテリーパックは7.4Vの電圧で、4,000〜6,400mAhの容量というのが妥当な仕様だと思います。まあ、格安の中華製品ですので、一・二回使ってみて自分で判断するしかありませんが(^ ^)


LED一個に比べて三個の中華ライトは明るいか?


 灯りの全く無い、夜の谷津道を複数回走ってその性能を確認済みのLED一個の中華ライトに比べて、LED三個の実力やいかにということで比較テストを行いました。

実力は体験済みのLED一個の中華ライト

CREE社のXM-L T6 LEDを一個使ったこのライトは光束1,230ルーメンとして売られていました。以前から使っているDOSUNのA1(200ルーメン)と比較しても、1,230ルーメンというのは大げさではありませんでした。Vokulというブランドで『自転車ライト ヘッドライト サイクルライト 900LM USB充電式 高輝度 IP-65防水 六つ点灯モード調節 コンパクト 軽量 夜間外出 防災用』という見出しをつけて、税込2,499円で売られていたものです。見出しには900ルーメンとなっていましたが、商品説明には1,230ルーメンと記されていました???。

 比較の第一歩として、Hiモードで点灯中の消費電流・電力を計測してみました。バッテリーとライトの間に電流計・電圧計を入れて一番明るいHiモードで点灯します。電圧計は先日作った18650サイズの通過型電圧計が活躍しました。

LED一個の中華ライトの消費電流と電圧を計測、約1.1A流れている

計測した電流と電圧を元に消費電力を計算して見ると、7.58V x 1.07A = 8.11W となりました。同様にLED三つのライトの電流と電圧を測定します。

LED三つの中華ライトでは約1.9Aも流れている

LED一個に比べて約二倍近い電流が流れています。消費電力を計算すると、7.42V x 1.87A = 13.88W となりました。LEDの数が三倍になったからといって、消費している電力が単純に三倍になるわけでは無いようです。約1.7倍の消費電力でした。この消費電力だけを見てもとても5,400ルーメンの明るさになるとは思えません。

 数メートルの距離から壁を照らしてみた時のパターン比較です。全体的な明るさ感はLED一個の方がほんの少し明るく感じました。三つのLEDを横に並べている割に、光は横には広がらず、LED一個と同じように中心の一点が明るくなっています。肉眼では気づきませんでしたが、iPhoneで写真撮影してみるとLED三つのライトには縞模様が浮き出ていました。高速で明滅しているのかもしれません。

消費電力の差ほど明るさに差はない

1,800ルーメン?のLEDが三つとの謳い文句でしたが、LED一個の1,230ルーメン製品と同等か、若干暗く感じるというのが比較テストの結果です。それでいて、バッテリーは1.7倍も消費します。横方向を広く照射してくれるわけでもなく、何のための多燈式ライトなのかというのが結論です。


(2017年10月1日 訂正)

 日没後の谷津道で三連式のライトを実環境テストしてきました。家の壁に照射した時に感じたように、1,800ルーメン x 3の明るさは間違いなくありませんが、多燈式の効果か、中心部の明るいところと周辺部の明るさの差が少なくなっているようです。家でのテストで単燈式に比べて暗く見えたのは、中心部の明るさが際立っていなかったためだと思われます。中心部と周辺部の明るさの差が少ないと、広い範囲が見やすくなります。単燈式よりも見やすいのは間違いないようでした。

実環境でのテストでは明暗差の少ない多燈式の方が見やすかった

でも1.7倍の消費電力でこの差では、今後継続使用するかどうかちょっと悩みます。


高輝度LEDライトはバッテリーと駆動回路が重要


 格安中華ライト製品が売り文句にしている明るさを実現するには、LEDの限界ギリギリの電流を流す必要があります。CREE XM-Lファミリーで1,200ルーメンも光らせるには、2,800mA以上の電流をLEDに流しているようです。この状態では驚くほどの発熱をしますので、放熱のための設計が重要です。

LED一個の中華ライトの放熱部、熱伝導グリスもちゃんと塗られている

さらに、Li-ionバッテリーの残量が少なくなるに従って電圧が徐々に下がっていきますが、その場合でも安定して一定の電流が流れるように定電流駆動回路が付けられています。この定電流駆動回路の良し悪しがLEDの明るさを左右します。

一つの定電流駆動回路を三個のLEDが共用している多燈式中華ライト

LEDを三つ使った多燈式中華ライトでは、三つのLEDが一つの定電流駆動回路を共用していました。それぞれのLEDに限界値ギリギリまでの電流を流す回路にはとても見えません。一つが1,800ルーメン、それが三つだから云々というのは全くの誇大表示だと思いますが、誰も警告しませんし改善の兆しもありません。中華製のLi-ion充電池やLEDライトはいい加減のオンパレードですね。

 格安中華ライトの中にはUSB端子経由でモバイルバッテリー(モバイルブースター)を電源にするものも売られています。モバイルバッテリー内部には18650Li-ion充電池が使われていることがほとんどで、電圧変換回路で5Vを作り出しています。ここから電力を供給して使う場合、中華ライトの中でさらに定電流駆動回路を経由しますので、それぞれの回路で20〜30%程度の電力損失が発生してしまいます。損失が二重に発生してしまうとバカになりません。

モバイルバッテリー(ブースター)は手軽だが、高輝度LEDライト使用時は効率が悪い

ライトが対応しているのであれば、バッテリー側は5Vのモバイルバッテリーではなく、7.4V仕様のものを使った方が効率が良く、長い時間明るく使用できます。ただし、標準のバッテリーと異なるものを使用するわけですから、電圧の管理などに十分注意する必要があります。Li-ion充電池は過放電時に寿命が短くなるばかりでなく、電池内部の圧力上昇などに伴う液漏れや破裂などの危険もあります。格安の中華ライトを安全・快適に使用するためにはコツが必要なようです。



写っている自作電圧計をお分けしています


 怪しげな無印バッテリーの電圧監視のために自作した小型電圧計ですが、使ってみると大変便利でした。透明パイプやコネクターなどの部品が余っていますので、残っている分をお分けすることにしました。「18650サイズの自作通過型電圧計を頒布」ページで使い方や入手方法を解説してあります。必要な方はお早めにどうぞ。

(2017年9月29日追記)



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