2017年9月14日木曜日

いつの間にか身の回りに溢れてるLi-ion充電池といかに安全に付き合うか


 Li-ion(リチウムイオン)充電池は小型軽量のモバイル機器を支える、二次電池の王様のような存在です。単に蓄電容量だけなら車やバイクの鉛蓄電池の方がはるかに大容量のものが手に入りますが、あんなに重たいバッテリーを電子機器と一緒に持ち歩く人はそうはいません。エネルギー密度が高く、小型・軽量にできるため最近のモバイル機器ではほぼ100%Li-ion充電池が使われています。


モバイルバッテリーの発火事故が多発


 つい先日も電車に乗っていた学生が背負っていたデイバッグから発火する事故が発生しました。ホームで煙を上げるデイバッグに駅員が消火器を向けている映像がニュースで流れ、衝撃を受けました。火元はバッグの中に入っていたモバイルバッテリーだったようです。

背負っていたバッグからいきなり火が出たらまるで「カチカチ山」、モバイルバッテリー怖いよ〜

大容量化と低価格化が進み、スマホをよく利用する人達は大抵持ち歩いている機器になりました。10,000mAh以上もあるような大容量モバイルバッテリー(モバイルブースターなどとも呼ばれている)が数千円で手に入る時代です。満充電して持ち歩けば、スマホを複数回充電し直すことが可能で、スマホのヘビーユーザーばかりでなく、ナビ代わりにスマホを利用するサイクリストなどにも重宝がられています。この大容量モバイルバッテリーには、ほぼ例外なくLi-ion(リチウムイオン)充電池が使用されています。

 モバイルバッテリー以外でも、内蔵バッテリーの不具合で発火・発煙事故が続発したサムスン電子のスマホや、取り付けた車が火災になってしまったユピテルのドライブレコーダー、パソコン用バッテリーのリコールのニュースなどで出火原因として報じられるのは毎回Li-ion充電池です。


複数の自転車用ライトを試していたらLi-ion充電池だらけに


 スポーツ自転車(ロードバイク)で遠出をするのが趣味になってから大分経ちます。秋の訪れとともに日没も早くなり、帰宅が遅くなった時など期せずして夜間走行を余儀無くされることも増えてきました。真っ暗闇の田んぼ道を安心して走れる自転車ライトになかなか巡り合えず、色々なライトを購入して試しているうちに、気づけば身の回りにLi-ion充電池が溢れかえっていました。

安価で明るい中華ライトを色々試しているうちに....

わずか二千円ちょっとで1,000ルーメンを超える光量を持つライトが手に入ります。しかも大容量のバッテリーを含む豊富なアクセサリーも付属していますので、国内専業メーカーも安穏としていられません。

さすが中華製の自転車ライト、大容量バッテリーの他にも色々なアクセサリーが付属

ライトを購入する度に大容量バッテリーも付いてきますので、いつの間にか増えてしまったバッテリーの活用を考えます。国内専業メーカーが出荷する自転車ライトのバッテリーは専用設計であることが多く、他の用途に使い回しすることは難しいのですが、中華ライトに付属してくるバッテリーは汎用品である場合がほとんどです。

いつのまにか増えてしまった大容量バッテリー

バッテリーには何の表示もありませんが、電圧を測ってみれば8V程度ありますので、Li-ion充電池二本を直列にして、さらにそれを二組並列に接続してあるタイプだと思います。合計4本の円筒型充電池が使われていますが、サイズ的には18650という規格の汎用品のようです。

18650汎用充電池(写真上)4本を組み合わせたバッテリー(下)がおまけでついてくる

ハンディライト型のものも試してみました。使い勝手は自転車専用品の方が格段に上ですが、家庭の非常用ライトとしても利用価値がありますので、複数本のハンディライトも持っています。このハンディライトにもLi-ion充電池が付属してきました。

高輝度LEDハンディライトにもLi-ion充電池が付属


18650サイズのLi-ion充電池が多い


 複数本を組み合わせた大容量バッテリーも、ハンディライトについてきた円筒形充電池も18650と呼ばれるLi-ion充電池です。単三乾電池よりも大型で、ずっしりと重みがあります。18650の最初の「18」は電池の直径を表しています。「650」は長さで、65.0mmという意味です。ただし、実際の電池の長さは下の写真のように65mmを越えることがほとんどです。

18650充電池の長さは65mmよりも長い場合が多い

これは65mm長の電池の下部に数ミリの厚さのある保護回路を取り付けてあるためです。この保護回路のない電池のことを生セルなどと呼んで区別しています。単体での電圧は公称値3.6か3.7Vとなっていますが、実際には残容量に応じて4.2〜2.7V程度の間で変動します。汎用電池として使用する場合は、機器側がこの電圧変動に対応していなければなりません。容量は2,000〜3,500mAh程度が一般的で、2.0〜3.5アンペアの電流を1時間取り出せる蓄電量になります。エネループに代表されるニッケル水素電池と比べても大電流を取り出すことが可能です。

一般的な保護回路付きの18650サイズLi-ion充電池

上の写真の電池に記載されているラベルからは、満充電時には4.2Vになること、放電を続けて電圧が2.75Vまで下がると放電を停止する保護装置が働くことが読み取れます。

 この18650充電池を利用している製品は多いのですが、製品専用の交換バッテリーは大変高価です。冬季のオートバイ乗車時に愛用している電熱ベストの交換バッテリーもメーカー純正品は一個5千円もします。中身は18650が二本直列に接続されているだけでしたので、余っている18650を収納できるバッテリーケースを自作して利用しています。安く作れた上に、電池が劣化しても汎用品ですので取り替えれば新品に生まれ変わります。

18650充電池を二本収納できる電池ケースを自作して活用中

格安の中華ライトを買う度に増えてくるLi-ion充電池が活用できれば、色々なモバイル機器の交換バッテリーを安く揃えることができます。ただし、おまけでついてくる中華Li-ion充電池には色々な不安がつきまといます。


18650Li-ion充電池は危険な電池?


 日本にはパナソニックやソニー、日立、東芝などの大手電池メーカーがあります。これらのメーカーは乾電池やニッケル水素充電池は販売していますが、18650のような汎用のLi-ion充電池を一般消費者向けには販売していません。現在消費者が入手できる18650充電池は、大半が中国製です。中にはパナソニックが生産した生セルを使っていることを売りにした中国製の18650製品もあります。なぜ日本のメーカーは18650充電池を一般に販売しないのでしょう? Li-ion充電池は使用されている電解液が可燃性で、外部に漏れだすと大変危険です。過充電や過放電で内部にガスが発生して圧力が高まり、ケースに亀裂が生じたり破裂することもあります。エネルギー密度が高く、電極間をショートさせた場合大電流が流れて発熱し、発火に至る場合があります。どれも普通の乾電池しか扱ったことがない一般消費者には、思いもよらない危険性です。充電池を正しく扱わないと、これらの危険が顕在化する可能性があるというのが、日本の大手メーカーが消費者向けに汎用のLi-ion充電池を販売しない理由のようです。

 国内メーカーが参入しなくても、市場は有象無象の中華製品で溢れています。先のモバイルバッテリーの発火事故も特殊な事例ではありません。否が応でも身の回りに溢れているLi-ion充電池と安全に付き合う方法はないものでしょうか? 充電池には次のような使用上の注意が書かれています。
  • 火中に投入したり、加熱しない
  • 変形させたり、分解、改造しない
  • 新旧の電池を混ぜて使用しない
これらは他の種類の電池でも同様に喚起されている注意点だと思います。Li-ion充電池が最も他の電池と異なるのは、充電・放電時の電圧が厳密に指定されていることです。下の図は法人向けにパナソニックが公開しているLi-ion充電池の保護回路の電圧指定です。充電時には4.3Vを超えない、2.3Vになったら放電を停止する保護回路を生セルに付加するように指定されています。充電池を利用する機器側では4.2〜3.0Vの範囲内で動作させるように決められています。

Li-ion充電池の保護回路電圧範囲 出典:パナソニック法人向けサイト

例えば、LEDライトをLi-ion充電池に接続して使用する場合、3.0Vまで電圧が下がったらライト側が自動停止することが求められているわけです。それができないと、さらに電圧が下がっていき、2.3Vになって充電池側の保護回路が働きます。この2.3Vというのは電極が劣化し始める過放電領域ギリギリの値です。ここまで使ってしまうと電池寿命を縮めることに繋がります。落としたり、踏みつけたりの物理的なダメージを与えないことはもちろんの事、電極間がショートしないように保存・運搬に気をつけること以外では、充電・放電中の電圧が規定範囲にあることがLi-ion充電池を安全に使用するために重要なこととされています。通常はLi-ion充電池本体、接続する充電器、さらに電池を使用する機器それぞれの安全装置が電圧管理を行っていますので、利用者が電圧を気にする必要はありません。

 ただし、格安で売られていたり、他の商品に付属してくるLi-ion充電池の中には保護回路が初めからつていないものや正しく機能しないものも存在します。中にはパッケージには保護回路ありと謳っているにも関わらず、実際には付いていないなんてケースも散見され、もうメチャクチャです。充電時の電流を決めるのに大切な電池容量についても、理論的にありえない10,000mAhなんて18650充電池も売られています。はっきり言って虚偽表示だと思いますが、咎められる様子もないし改善も見られません。日本国内で流通するLi-ion充電池に関する規制や罰則などの法整備が追いついていないようです。


不安な中華製Li-ion充電池を使うなら電圧常時監視


 保護回路による電池電圧の自動監視に不安があるのなら、残された手段は自分の目で確かめながら使用することくらいでしょう。中身をバラして見なければ保護回路があるのかどうかも判断できない、中華ライト付属の大容量バッテリーを充放電させる際に、電圧を監視できるように電圧計を作成しました。常時持ち運んでも苦にならない大きさと形状にして、バッテリーと機器間に簡単に挿入できるようにしてあります。(作成したと言っても、秋月電子で買ってきた超小型2線式LEDデジタル電圧計を透明パイプに収めただけですが....)

ほぼ18650サイズに仕上げた電圧計、電池と機器の間に接続して電圧を常時モニター可能

保護回路がついていない(かもしれない)バッテリーの電圧を常時モニターし、充電時には上限値を超えないように、放電時には下限値を下回らないように注意しながら使用すればバッテリーの劣化や発火・発煙などの事故を防ぐことができます。

Li-ion充電池の電圧を常時モニターできる自作小型電圧計

内部で直列接続してある上の写真のバッテリーの場合には、18650充電池一本分の上限4.2Vと下限2.3Vを二倍した値を基準値としました。電池間のばらつきなどもあり、単純に二倍となるわけではないようですが、8.4〜4.6Vを一応の基準とします。さらに、100%まで充電せず、残容量30%程度で放電を中止するようにすれば電池の寿命を伸ばすことができるそうです。充電中はじわじわと電圧が上がり、4.2Vになった時点で充電を終了すれば約80%の充電量になります。3.0V程度で放電を終了すれば残容量は30%程度だそうなので、一本の場合は4.2〜3.0Vを、二本直列の場合は8.4〜6.0Vを目安に電圧を監視して使用すれば、安全と長寿を同時に追い求める一石二鳥のLi-ion充電池活用法になるはずです。これで格安中華ライトにおまけでついてきた正体不明のLi-ion充電池を安全に利用できるかな?


ご注意:
電圧計自身が最大18mA程度の電流をバッテリーから消費します。使用していない時には取り外しておく必要があります。また、充電器が充電の完了を知るためにバッテリーに流れる電流をモニターしていますが、この電圧計の分だけ電流が増えます。そのため、充電の完了を検知できない場合があります。その場合は電圧計を外して充電してやる必要があります。




ACアダプターの電圧確認にも便利だったので追加作成


 作成した18650サイズの通過型電圧計がLi-ionバッテリーの電圧管理だけでなく、家じゅうに溢れているACアダプターの電圧確認にも大変役立つことがわかりました。あちらこちらに置かれているACアダプターの電圧を使用前に確認できるよう、複数の電圧計を作って置いておくことにしました。老眼の進んだオヤジにはACアダプターに書かれている電圧表示の文字が小さすぎて読めなかったため、安全のためにも役立ちそうです。

表示が小さくて読み取れないACアダプターの電圧を直読できる

(2017年9月23日追記)



パーツ在庫分を組み立ててお分けします


 やっと見つけた18650サイズの透明パイプなどのパーツが少し余りましたので、必要な方に組み立てたものをお分けいたします。「18650サイズの自作通過型電圧計を頒布」ページにて使い方や入手方法を解説しています。内部は単純な電圧計ですので、簡単に作れますが、18650サイズにパッケージングするのに苦労しました。一つ持っていると便利ですので、この機会にいかがでしょうか。在庫がなくなり次第終了させていただきます。

(2017年9月28日追記)



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