2017年5月22日月曜日

谷津道探検サイクリング 国道や県道を使わずに目的地を目指せるか?


 ロードバイクに乗り始めてから八年の間に、サイクリングロード中心から谷津道中心に移り変わって行った経緯については前回の投稿で書きました。ロードバイクに乗り始めたばかりの初心者が、大型トラックに怯えながら国道126号や交通量の多い県道を乗り継いで九十九里浜を目指し、二度と走りたくないと思ったのもちょうど八年前でした。その後、千葉県の下総台地を走り回っているうちに、短いながらも安全で快適な谷津道や高台の林道をつなぎ合わせて行くと、国道を使わなくても東金の九十九里平野西端にたどり着けることを発見。国道126号に付かず離れず九十九里浜を目指せる快適ルートが見つかると、今まで足が遠のいていた千葉県東部へも頻繁に訪れるようになりました。自宅のある船橋から九十九里浜までのサイクリングルートを例にして、どのように車道中心から谷津道中心にルートを変えていったのかを振り返ってみました。

国道・県道だけを走り、初めて九十九里浜に行ったのは今から八年前のこと(赤色のルート)


ロードバイク初心者が国道126号で九十九里浜へ


 それまで乗っていた折りたたみ式のミニサイクルと比べると巡航速度は雲泥の差で、さらに転がり抵抗が少ないため、下り坂では重力でぐんぐんと加速してくれます。同じ体力でも一日に走れる距離が格段に増えました。ロードバイクに乗り始めた最初の夏、自転車で一度も行ったことのない九十九里浜を目指してみました。船橋から千葉市中央部までは狭くて混雑する国道14号の裏道を探しましたが、千葉市街を抜けてからは国道126号をただひたすら進んで東金にたどり着くことしか頭にありませんでした。市街地を抜け、京葉道路と交差する辺りまでくると道幅が一気に狭くなり、追い越していく大型トラックの風圧に恐怖を感じながらひたすらペダルを漕ぎました。初めての道はそれなりの楽しさもあるものですが、後ろから迫ってくる車に追い立てられているようで、途中の景色を楽しむ余裕はありませんでした。

「九十九里」の案内が見えた時にはホッとした

東金手前で一気に坂を下り、国道126号から離れて九十九里平野の県道に入った時にはホッとしました。そこから先は真っ直ぐで単調な県道をただひたすら進み、真夏の九十九里浜に到着した時は喜びもそこそこで、帰りに同じ道を走ることが憂鬱になっていました。

海水浴客で溢れる炎天下の九十九里浜に到着

心配していた帰路、最初の東金の登りで既に疲労困憊。炎天下に大汗をかいてしまったためか、少し走っては休憩して水をがぶ飲みという状態でペースが上がりません。千葉市中心部にたどり着いた頃には体力が底をついていて、そこから船橋の自宅までは歩くような速度で戻ったと記憶しています。ロードバイクで初めて九十九里浜まで行ってきたという満足感はありましたが、このルートは二度と走りたくないという思いが残ったロードバイク一年目の冒険サイクリングでした。


国道126号を度々横断しながら新ルートを物色


 その後は国道126号を走ることはなくなり、サイクリングロードと一般道や谷津道を組み合わせて、新しいルートの発掘を楽しんでいました。印旛沼辺りまでサイクリングロードを使い、そこから鹿島川沿いの谷津道を探検しながら南下すると、国道126号を横断して泉自然公園や昭和の森などに行くことができます。この頃には国道や車の多い県道は横断のみにするという自主ルールを決めて新しいルート開拓に励んでいました。度々国道126号を横断していると、その前後に国道に沿った快適そうな道がいくつもあるように見えます。帰宅後にGoogleマップやGoogle EarthにGPS軌跡を表示し、気になった道を拡大しながら念入りにチェックしました。

度々横断する国道126号(赤線)に並行する気になった道を繋ぐと....

例えば、上図の四角で囲った部分を拡大すると国道126号のすぐ南側に典型的な谷津地形が広がっているのが分かります。小川(都川)の両側に水田が広がり、その外側が若干の高台になっています。国道126号はこの高台部分を走っていて、水田と高台の間にくねくねと農道が続いているのが分かります。

Google Earthの拡大図、典型的な谷津地形であることが分かる

この農道が自転車で走りやすい道かどうかは実際に行ってみないと分かりません。泉自然公園や昭和の森からの帰りにこの農道を走って見ると、実に快適な谷津道であることが判明。

国道126号南側の谷津道はこんな感じで走りやすい

国道126号を横断する際に見つけた気になるルートを電子地図でチェックし、使えそうであれば実際に走行してみるということを繰り返し、徐々に国道沿いのルートを伸ばしていきました。


開発された市街地でも谷津地形の痕跡は残る


 千葉市中央部を通り抜ける国道14号は以前に比べてだいぶ走りやすくなりましたが、それでも幕張を過ぎる辺りまでは道が狭くて危険です。道が広くなる千葉市街でも単調で面白くありません。時間を節約したい時以外は、あまり走りたくないと思っています。この千葉市街地を抜けるまでのルート選定にも試行錯誤を繰り返しました。船橋から国道126号付近まで行くのに、国道14号は最も分かりやすい道なのですが、何度も走っているうちに千葉市中央部を通らず、北にある千葉動物公園横を通り過ぎるルートを見つけました。千葉動物公園から先は都賀の住宅地を通り抜け、坂月川沿いの谷津道を走れば、千葉市中央部を通ることなく、国道126号の大草交差点に出ることができます。国道51号も信号のある交差点ではなく、アンダーパスで横断することができ、その先は加曽利貝塚などがある坂月川沿いの快適ルートとなります。今では千葉県東部に出る際の主要ルートになっています。

千葉市街を抜けるルートもできるだけ国道や車の多い県道は避けたい

千葉市の国道をバイパスするルートを探す時にもGoogleマップやGoogle Earthなどの航空写真と谷津地形の知識が役に立ちました。例えば、上図の四角で囲んだ部分を拡大したものが下の図です。

市街地の中でも走りやすそうな道を探す

人工的に流れを変えられたような水路(草野水路)の両側は高台になっています。土地の高低はGoogleマップを地形に切り替えれば一目瞭然です。その高台に沿って曲がりくねった道が続いていますので、これはもともと谷津だった場所が開発されたものと考えられます。もともとの農道が生活道路として利用されていて、自転車走行に向いていそうなルートであることが想定されます。

開発後にも形跡が残る谷津地形

谷津の高台の方から徐々に開発が進み、最後に低地の田んぼが埋め立てられ、小川が流れを変えられたり暗渠になったりしていますが、もともとの農道は生活道路として残る場合が多く、開発後にも谷津地形の形跡は残っています。市街地の中にこんな痕跡を追いながら、走りやすそうな道を探しました。


平坦な九十九里平野部は車の少ない車道を選ぶ


 東金にある雄蛇ヶ池まで国道126号を使わない快適なルートを見つけられれば、その先の九十九里平野は比較的自由にルートを選べます。2015年には国道126号の南側、2016年には北側の快適ルートを開拓することができました。平野部に入る直前に東金崖線の高低差50〜70メートルほどを一気に下ります。

雄蛇ヶ池から先の九十九里平野は好きな道を進む

季美の森のある南側(青線)の方が北側(緑線)より標高差が大きいため、帰路は北側を選んだ方が楽に登れます。

季美の森から雄蛇ヶ池への下り坂、ここを登るのはきつい

九十九里平野に入ると谷津地形はありませんので、どの道を選んでもほぼ平坦です。川沿いの道もありますが、途中で舗装がなくなったり、中洲で行き止まりになったりしますので、車の少ない車道を走る方が効率が良いようです。


谷津道がないところは林間の道や畑の中の道を見つける


 小川沿いに残る谷津道だけで目的地に行ければそれに越したことはありませんが、大抵は途中で途切れてしまいます。今回のように分水嶺になっている東金崖線が途中にあれば、当然川は無くなります。そんな時に役に立つのが林間の道や畑の中の道ですが、林間の道は航空写真を拡大しても見つからないことがほとんどです。

川沿いの谷津道に比べて見つけるのが難しい林間の道

国道126号北側の高台にある林間の道(緑線)を見つけたのは、大草谷津田生きものの里を何度も訪問していた時です。林の中の細い道が東側に伸びているのを発見し、ダメ元で走り始めたらいつも南北に走っている鹿島川支流の平川沿いの谷津道にひょっこりと出られた時でした。国道南側の谷津道ルート(青線)しか知らなかった時に、北側台地の林間ルートを見つけられたのは全くの偶然です。強い日差しを遮ってくれる林間ルートは、その後夏場の快適ルートとなりました。

どこまで行けるか不安だが走って確かめるしかない林間の道

高台にある畑では、小川も森林もありません。単調ですが車道を走るよりは安全です。広大な畑が広がる八街を通過する際には、直線の単調な道をしばらく我慢して進みます。

八街の畑の中の道は単調だが安全

谷津道の最奥部などでは、人の出入りも少なく道が荒れていることもあります。車やオートバイでは先に進むのに躊躇してしまいますが、自転車ならいざとなれば担いで進むこともできますし、戻るのも簡単です。新しい道を開拓する際には臆することなく先に進んでしまいます。

谷津道の最奥部、先に進むのに躊躇する場所

わずかに残された狭い谷津地形です。我慢して前進すれば、大抵はひらけた場所に出ることができます。狭いながらも豊かな自然が残された場所ですので、期せずして珍しい動植物に出会うことも度々です。アケビやキイチゴなどの自然の恵みを発見して、サイクリング中に道端で木ノ実を貪っていたこともあります。


 国道や車の多い県道を避けた快適ルートの完成までにはかなりの回数の見直しが必要になりましたが、その過程も含めて楽しんでしまいます。行止りも迂回も探検サイクリングの醍醐味だと思えば苦になりません。どうしても谷津道や林間道が見つからない場合は、無理に車道を避ける必要もありません。いざとなれば歩道を使わせてもらいましょう。郊外の国道沿いなどは歩行者がほとんどいませんので、安全に気をつけて走れば大丈夫です。

 長い時間をかけて安全で快適なルートを見つけ、谷津や森林に残された自然を楽しみながら走るサイクリング。単に体を動かすだけの運動とも異なる、知的で好奇心にあふれた非日常の体験が楽しめる谷津道探検サイクリングに夢中になっています。



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