2015年10月1日木曜日

NHK BSでやっている「にっぽん縦断こころ旅」の隠れファンです


 俳優の火野正平さんが個性的なファッションを身にまとい、ヒーヒー息を切らしながら自転車旅をする番組「にっぽん縦断こころ旅」のファンになってしまいました。自分が自転車乗りだからかと言えば、ちょっと違うような気がします。チャンネルを切り替えていた時に偶然見つけた時の第一印象は「なんか変な番組」というものでした。”チャリオ”と名付けられたロードバイクで田舎道を走る火野さんの後ろ姿を、後続の自転車に取り付けたビデオカメラから撮影したシーンが中心の紀行番組です。長い登り坂が続くと文句を言い出す火野さん。快適な下り坂では『人生下り坂サイコー!』と叫び、滅多に聞けない火野さんの歌まで飛び出します。さすがBS、こんな番組まであるんだというのがその時の正直な感想でした。
 その後、時間が合う時にたまに見るようになると、徐々に番組の趣旨が理解できるようになりました。回数を重ねていくうちに、次第に次の放送を楽しみに待つようになり、今では見逃さないように録画までして楽しんでいます。一体何に心を掴まれたのか、自分なりの分析をしてみました。

秋の旅シリーズがスタートしたばかりです(番組とは関係ありません)

「にっぽん縦断こころ旅」の面白さ


 子供の頃、電車の運転手になりたいと思っていました。理由はいろいろなところにいけるから。でもよくよく考えてみたら電車は行く場所が決まっているし、大抵は同じ場所を行ったり来たりしているだけです。日本全国から届く視聴者からの便りを基にして、北海道から沖縄まで旅をする「こころ旅」は多くの大人たちが夢見ていたいろいろなところを旅してみたいという夢を叶える番組なのかもしれません。

  • 視聴者個人の全く私的な思い出の場所を訪問
 視聴者の心の中にしまわれた思い出の場所「こころの風景」を火野さんが自転車で訪れるというのが基本コンセプトです。視聴者個人の全く私的な思い出話しの上に成り立っていますが、見ている人たちにも『あるある』と思わせる内容をうまく選んでいるのでしょう。投書に多少無理な部分があったとしても、間髪入れずに火野さんが突っ込んでくれるので、視聴者は安心して見ていられます。

  • 移動手段は自転車
 電車でもバスでもない適度な速度の自転車旅というのがポイント。途中で輪行のため電車やバスも利用しますが、最後は必ず自転車で火野さんにヒーヒー、ハーハー言ってもらった後に目的地に到着(番組中では『トウチャコ』と言っている)することに意義があるようです。
 どこにでも入って行ける自転車の小回りの良さと、道中の景色や草花、小さな生き物にも目を配れる適度な速度がバス旅番組などとは異なります。自然と道草が増えますが、そこがまた単なる自転車旅ではない面白さです。

  • 火野正平さん
 何と言っても火野正平さんを起用したところが肝でしょう。昔浮名を流した俳優が還暦を過ぎた今、ハーハー言いながらペダルを漕いで坂を登っている姿は視聴者の胸を打ちます(?)。中高年の健康志向ブームという現在の潮流も手伝って、火野さんの後ろ姿に自分を重ねて見ている人も多いはずです。

 珍しい草花や小動物を見つけた時の火野さんの子供のような顔、木の実を見つければとりあえず口に入れてしまう冒険心、スタッフが怖がって近寄れない蛇も簡単に手づかみしてしまうヤンチャさ、どれも火野さんの自然に対する造詣の深さを感じます。

 若い女の子を見つけて自分の歳も顧みずに大胆に近づいていく時と、おばちゃん達が握手を求めて次々にやってくる時の態度の違いがあまりにも大き過ぎて笑えます。大きな橋を渡る時に見せる泣きそうな顔が、女の子を見つけた時に見せる顔とは別人のようです。

  • ちょくちょく顔を出す撮影チーム
 バス旅や鉄道旅番組では撮影スタッフはまず出てきません。こころ旅ではそれこそ毎回のように出てきます。仲間でツーリングしているという雰囲気が全開です。火野さんのすぐ後ろにカメラマン、次に音声、その次はメカニックでしょうか。最後尾は監督かなと想像しています。火野さんを含めて5人のグループ走行です。

 火野さんの自転車にはGoProが取り付けられていて、火野さんの顔を撮影しています。後ろの自転車に取り付けられたデジタルビデオカメラの映像が番組の中心になっていますが、振動の多い自転車での撮影は相当苦労されていると思います。かなりしっかりとした固定器具がハンドルに取り付けられているのを見ました。GoProの映像に切り替わると色調が変わり、ローリングシャッターによる画像の歪みが目立ちますが、自転車の走行時に邪魔にならないようにこのアングルで撮影するにはこの方法が一番なのでしょう。今自分がやっている撮影方法と同じで、自信が持てます。なにしろプロと同じ方法ですから。

  • ほぼ毎回出てくる食事シーン
 旅番組の常で、旅先での食事シーンは重要です。こころ旅のちょっと違うところは、食べ物の内容より食堂の人たちとの交流や店の雰囲気が中心になっているところでしょう。その証拠に、メニューにオムライスかスパゲティナポリタンがあれば、火野さんは必ず注文しています。普通の旅番組ならそんなもの食べているところは絵になりませんもんね。さらにナポリタンにタバスコをしこたま振りかけ、火野さんがむせるシーンでは周りのスタッフが大笑いしています。こんな旅番組、他にはありません。

  • テーマ曲がいけてる
 この番組を見るようになるまで知りませんでしたが、池田綾子さんという方がテーマ曲を歌っています。番組の映像にマッチしたとても良い曲です。さらに他では滅多に聞けない火野さんの歌が流れます。そういえば火野さんも歌ってたんだよなーと思い出させてくれる貴重な番組です。


 9月から四国徳島県をスタートに秋の旅シリーズが始まりました。この時期はサイクリングには絶好の季節ですが、四国の道路は高低差が大きく、火野さんがどんな文句を言いだすか毎回楽しみに見ています。一回の走行距離はそれほど長くはないのですが、これを平日毎日走るのかと思うと頭が下がります。

誰でも「こころの風景」を持っています(番組とは関係ありません)

 番組が始まった頃は道中出遭う地元の人々も「こころ旅」という番組だとは知らず、火野さんを見て『どこかで見たことのある顔だな』という反応が多かったと記憶しています。最近ではすれ違う車から手を振られ、立ち寄る先ではぞろぞろと見物人が集まってきて握手攻めにあっています。かなりの人気番組に成長したみたいです。

 長年日本全国を自転車で旅してきて、事故がないというのも素晴らしいことです。安全確認、一時停止、手信号などなどしっかりとした安全動作を心がけています。小学校の交通安全教育でも番組映像を使って欲しいくらいの内容です。大雨の日、強い季節風の日、猛暑の日、どんな日にも走り続けてきたことも驚異的です。自分だったら『今日は止め!』と予定を変更してしまうでしょうが、撮影のスケジュールは簡単には変えられないのでしょう。本当にお疲れ様です。

 視聴者の思い出を読み上げる火野さんの朴訥とした声、投書してくれた視聴者へ『来たよ』と最後に語りかける声の優しさがこの番組の魅力だと思います。火野正平さんなしに「にっぽん縦断こころ旅」は成り立ちません。還暦過ぎても若い女性に無意識に惹きつけられる火野さんであれば、あと三十年くらいは全国を旅していけるでしょう。これからも頑張ってください。応援しています。

初めての場所を訪れるのは楽しい(番組とは関係ありません)



最近は辛くても文句の少ない火野さんです


 最近の放送を見ていると気づくことがあります。以前ならボロクソに文句を言い出すような場面でも、あまり出てきません。むしろそんな状況も含めて楽しんでいるようにさえ見えます。急な上り坂でも、長くて高い橋を渡るときも、一応文句らしい言葉は聞かれますが、その顔はなんとなく楽しそうです。

 番組が始まって既に5年目に入りました。火野さんもいよいよサイクリストの喜びに目覚めたのかもしれません。見ている方もますます楽しくなってしまいます。火野さんの成長を見ながら自分ももっと頑張らなくっちゃと気合を入れています。

(2015年10月20日追記)


え〜、火野正平ってやっぱり歌手だったん?


 放送500回記念の火野正平コンサートをBSでやっていました。本物の池田綾子さんを見たのも初めてですが、火野さんが生バンドで歌っている姿も初めて見ました。とってもいいですね。年輪を重ねた火野さんの声に数々のサイクリングシーンが浮かび上がってきます。なんだか火野さんのアルバムが欲しくなってしまいました。

(2016年1月2日追記)


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