春から夏にかけては草木が開花して次々に実を結ぶ時期になります。里山の風情を残す谷津道を探検しながらのサイクリング途中で、赤や黄色の小さな果実を目にすることがあります。人の手で栽培されているリンゴや梨などとは違い、目立たない場所にひっそりと実をつけていることが多いため気付かずに通り過ぎてしまうこともしばしばです。
この時期に食べられる木の実といえばキイチゴ類が代表でしょう。谷津の茂みに小さな白い花が咲いた後に赤や黄色の実をつけます。たくさんの種類があり、それぞれ実の形が微妙に違いますが、どれもそのまま食すことができます。だんだん蒸し暑い日が多くなるこの季節に、甘酸っぱいキイチゴの実を頬張ると、口の中がさっぱりとしてリフレッシュできます。キイチゴ類以外にもそのまま楽しめる木の実は結構あるものです。谷津道探検サイクリングの途中で、実際に口にしたことのある自然の恵みをまとめてみました。
木の実などを見つけた谷津の場所 |
1. 何と言ってもキイチゴが一番(5〜6月)
田園地帯の農道を走っていると、林と道路の間の茂みで見つけることができます。バラ科のため棘のある枝や特徴的な葉、白い花を目印に探せば簡単に見つかります。場所を覚えておけば5月頃熟す実を楽しむことができます。比較的大きな枝振りで、黄色い実をつけるモミジイチゴや地面近くの枝に赤い実がなるナワシロイチゴが美味しいキイチゴです。
黄色い実が美味しいモミジイチゴ |
地面を這うように枝が伸びて赤い実をつけるナワシロイチゴも美味しい |
ナワシロイチゴに似ていますが、もう少し日当たりの悪い湿気の多い場所でつぶつぶの細かい赤い実をつけているのはヘビイチゴです。名前のせいか有毒だと思われていますが、毒はありません。他のキイチゴとは別の種類になり、実は水ぽっくて美味しくありませんので間違えないようにしましょう。
毒はありませんが美味しくないヘビイチゴ |
キイチゴが群生している場所を見つけておけば毎年味わうことができます。谷津の中でも比較的民家に近い場所にも生えていて、自転車で走りながらでも見つかるので、回り道をしないで自然の味が楽しめます。
2. 桑の実もいける(6〜7月)
養蚕を行う農家が減ってしまいましたので最近は大きな桑畑を見なくなりましたが、放置された桑の木や川の土手などに植えられた木にも立派な実がなります。5月ごろから緑色の葉っぱに混じって赤い実が目立ち始めますが、食べて美味しいのは実が真っ黒になってからです。
実が赤くなった桑の木、まだ酸っぱい |
6〜7月になると実が真っ黒になります。ちょっと不気味な姿ですが、勇気を出して口に放り込んでみると甘い味が口いっぱいに広がります。一本の木に大量に実りますので、食べ始めるとやめられません。
真っ黒に熟した桑の実 |
民家のそばで殺虫剤をまかれた桑の木もありますので、実を食べる時は注意が必要です。できるだけ人里離れた場所に生えている木を選びましょう。
3. 市街地のヤマモモ(6月)やヤマボウシ(8〜9月)も狙い目
谷津地形の広がる里山にも自生していますが、人の手で街路樹や庭木として植えられたヤマモモやヤマボウシも美味しい実をつけます。何しろ見つけるのが簡単です。今の時期には近所の幹線道路沿いに植えられたヤマモモがたくさんの実をつけています。
ヤマモモの実、甘酸っぱくて美味しい |
実をつけるのは雌の木ですが、結構な確率で発見できます。自転車で走っていると道路にたくさんの赤い実が落ちているのですぐにわかります。公園などでもよく目にします。
大きな道路の街路樹として植えられているヤマモモ |
車の排気ガスを気にしてか、ここでヤマモモの実を食べている人を見たことがありません。先日サイクリングの途中で食べてみましたが、甘酸っぱくてとっても美味でした。洗ってから食べた方がいいかもしれませんが、味見するくらいなら大丈夫でしょう。
果実を楽しめるのはもう少し先(8〜9月)になりますがヤマボウシも人気の植木です。公園などでは必ず目にします。この実も見つけたらそのまま手軽に味わうことができます。
今は白い花が楽しめるヤマボウシ、夏の終わりにできる実は美味しい |
何と言っても街中に植樹されている木ですから、遠出しなくても簡単に見つけられます。サイクリング中に果実をそのまま楽しむのもいいですが、たくさん集めてヤマモモ酒やヤマボウシ酒として楽しむのもいいですね。持ち帰れば洗えますし。
4. 谷津の奥で見つけたコウゾの実も甘い(6月)
谷津を流れる川に沿って上流に向かうと、やがて田んぼもなくなり雑木林が広がる谷津地形の最奥部にたどり着きます。そこまで舗装された農道が続いていることは珍しいのですが、国道126号を付かず離れず九十九里浜まで走ることができる道は最後まで舗装された谷津道サイクリングが楽しめるルートです。先日ここで黄色いキイチゴのような実を見つけ、いつものように口に放り込みました(良い子は真似をしないように)。
実はモミジイチゴのように見えますが木や葉っぱは全く別物 |
甘みのある美味しい味ですが、果汁はヌルヌルとして糸を引きます。実を掴んでいた手にも透明な液体がびよ〜んとまとわりつき、何とも気持ちの悪い状態に。何だこりゃ〜と、慌てて実を吐き出しました。念のため実以外に枝や全体の写真を撮って帰宅後に調べてみたら、コウゾであることがわかりました。ミツマタなどと同じ和紙の原料となる低木です。
自生しているコウゾの木、黄色い実がたくさんなっています |
実は甘みがあって食用できるとあったので一安心ですが、粘ついて舌触りが悪いとも書かれていました。全くその通り。塩水で洗ってから食べると良いようです。
5. 秋にはアケビも楽しめる(9〜10月)
サイクリング中に見つけてすぐに楽しめるということでは、秋のアケビもまた自然の恵みをその場で味わえる果実です。キイチゴとは違い、林の中の高い木の上に巻きついた蔓にできますので、見つけられる場所が根本的に異なります。体を前傾させて走っているロードバイクでは滅多に見つかりません。蔓や葉の形を覚えておいて、それを頼りに頭上を探すと見つかることがあります。
成田の山道を走っていて見つけたアケビ |
見つけた後もアケビは大変です。高い場所にできていますので、長い棒などを探してきて下から絡めて取らなければなりません。まあ、サイクリング中にアケビをとって食べることはないかもしれませんが、場所を覚えておいて後から取りに行きましょう。上品な甘みがあり、皮も漬物などに利用できます。たまにお店で売っていますが結構なお値段がします。紫色になり、ぱっくりと口を開けたら食べ頃ですが、採るのはその直前が良い頃です。
6. 果実ではないがなかなか楽しめるイタドリ(4月)
まだキイチゴなどが実を結ぶ前に、春の訪れとともにそこらじゅうに生えてくるイタドリもサイクリング中に気軽に味わえる自然の味です。田んぼのあぜ道や小川の岸など、どこでも見つかります。
サイクリング中どこでも見つかるイタドリ |
若い茎の部分の皮をむいてからかじると、爽やかな酸味が口の中に広がります。シニアには懐かしい味でしょうし、若い人には新しいスポーツドリンクのように感じるかもしれません。
先の柔らかい部分の皮をむいてかじる |
汗をかいた後に水を飲みながらイタドリをかじれば十分リフレッシュできそうです。ほうれん草と同じようにシュウ酸を多く含むため食べ過ぎは良くないそうですが、こんなものをサイクリング中に食べ過ぎることはありません。喉が渇いた時の口直しにひとかじりで十分です。
持ち帰りまで含めればもっとたくさん見つかる自然の恵み
サイクリング途中で見つけたら、その場ですぐに味わえる自然の恵みを挙げてみました。全て試食済みで有毒なものはありませんが、生えている場所によっては洗うなどの前処理が必要かもしれません。その場で食べられなくても、持ち帰って楽しむというものまで対象を広げれば、相当な数の自然の恵みに触れることができるのが谷津道探検サイクリングの楽しみの一つです。
春と秋が中心になりますが、良く走る谷津道で実際に目にしたことのある自然の恵みを思い出してみました。キイチゴなどのようにその場で口にするわけにはいきませんので、ほとんどの場合はそのままですが、栗を拾って帰ったことはあります。最近よく行く長柄ダムにつながる支川村田川の快適谷津道ではクレソンの群生を見つけました。今度ビニール袋を持参して持ち帰ってみようかと思います。
春のサイクリングで見つけた自然の恵み
- ふきのとう
- たらの芽
- のびる
- クレソン
秋のサイクリングで見つけた自然の恵み
- 栗
- 銀杏
- ムカゴ
- ヤマブドウ
これらは全てサイクリングルートの近くで見つけたものばかりです。自転車を降りて林や高台の中に足を踏み入れれば、さらに多くの自然の恵みに出会えます。サイクリング用の服や靴で山の中に踏み込む気にはなれませんが、すぐ近くでもこれだけの自然の恵みを楽しめる日本の里山はまだまだ捨てたもんじゃありません。
ご注意!
くれぐれも他人の敷地内で植物や果物を無断で採らないようにしてください。
住宅地近くで桑の実を食べるクマが目撃されてます
今年はクマによる被害が多く発生しています。死亡者も出ているようで、クマの活動エリアには近づかないよう注意が必要です。住宅地近くの桑の実を食べている子グマが撮影されていました。サイクリングで木の実を探す際にも注意した方がいいようですね。
(2016年6月17日追記)
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