いよいよ本格的な冬の足音が近づいてきました。ツーリングの目的地によっては、厳冬期の冬支度をして出かけないと後悔することになります。先日、冬用ジャケットの保温性能が数値で計測できるかどうか試してみましたが、今回はグローブのテストにチャレンジです。
テストに使ったグローブ、左から冬用グローブ・レイングローブ・革グローブ |
重ね着で調整できる上下ウェアーとは異なり、グローブは基本的にそれぞれの製品の性能に依存します。いろいろなタイプのグローブをいろいろな外気温でテストしてみたいのですが、先ずは温度計測の手法や測定値の評価方法が妥当性のあるものかどうか確認するため、朝から一日中10℃前後の気温予報が出ていた今にも雨が降り出しそうな日にテストを行いました。
狭い場所の温度が計測できる熱電対型温度ロガーを入手
指定時間間隔で温度を測定し、時刻と温度をメモリーに記録してくれる温度ロガーを前回冬用ジャケットのテストの際に入手しましたが、これは温度センサー内蔵型のためグローブの指先のような狭い場所には入りません。外気温を記録するために、今回は一本をジャケットの胸ポケットにセットしました。
温度センサー内蔵のデータロガー |
グローブの指先の温度を測定するために、長いコードの先にセンサー部がついている熱電対型の温度ロガーを入手しました。標準で付属するセンサーは長いステンレスの棒で覆われていて、これをグローブに入れると指が曲げられません。センサー部がむき出しになっている熱電対を売っていましたので、これを別途購入しました。
熱電対型の温度ロガー、センサー部は色々選べる |
センサー部がむき出しのままでは人の肌に直接触れてしまい、グローブの中の空気の温度ではなく人の体温を計測することになってしまいます。
むき出しの熱電対センサー部 |
直接肌に触れないようにカバーをしてから計測に使用しました。
むき出しの熱電対センサー部にカバーをして使用 |
このセンサー部をグローブの中の左手中指、上側にセットしました。ナックルガード等は取り付けていませんので、バイクで走行中始終風の当たる部位です。
手袋内、左手中指の真ん中あたりに温度センサーをセット |
コードを通してジャケットの内ポケットに入れた温度ロガー本体にデータが記録されることになります。
外気との温度差が意外に小さいグローブ内部
計測は一般道で行いました。連続で高速走行をすれば、さらに厳しい条件のテストが行えると思いますが、それは次の機会に。この日はずっと曇り空のため、日差しの影響はないと思います。三種のグローブを取り換えながら、ほぼ11〜12℃の外気温の中を走って、グローブの内側の温度を測定したものが下のグラフです。冬用ジャケットのテスト結果では、内外の温度差が6〜13℃程度あったのに対して、今回のグローブでは2〜3℃程度とかなり小さくなっているのがわかります。
外気温を計測している温度ロガーはセンサーが筐体内部に入っているため、外の温度変化が少し遅れて現れます。それに対して、熱電対型は素早い応答性を持っているため、外気温の変化よりもグローブ内の温度変化が先に現れています。
外気温を計測している温度ロガーはセンサーが筐体内部に入っているため、外の温度変化が少し遅れて現れます。それに対して、熱電対型は素早い応答性を持っているため、外気温の変化よりもグローブ内の温度変化が先に現れています。
グローブ内部の温度と外気温のグラフ(単位は℃) |
冬用グローブでも風を受ければ内部の温度はどんどん下がる
初めは冬用グローブです。室内に置いてあったため走行当初は内部も高い温度を示していましたが、走り始めるとどんどんと温度が下がっていきます。2℃ほどの内外差で安定したようです。グローブ内温度13℃では指先が冷たく感じますが、我慢できない温度ではありませんでした。ジャケット内とは異なり、グローブ内の温度はかなり低いことがわかりました。
スリーシーズン用の革グローブは保温性はほぼゼロ
続いて、道の駅で暖をとりながらスリーシーズン用の革グローブに交換しました。休憩中、グローブから抜いた熱電対センサーをジャケットの袖口に押し込んでいましたので、一気に20℃近くまで跳ね上がっているのはそのためです。
走り出すとグローブ内外の温度差はほぼ無くなりました。わかってはいましたがスリーシーズン用の革グローブに保温性はほとんど無いようです。指先がかなり辛い状況で計測を続けました。
自らの発熱が少ない手にはグリップヒーターが有効
革グローブでの走行がかなり辛くなってきたため、グローブをしたままコンビニで小休止してから、グリップヒーターをオンにして革グローブの計測を続行です。
手の発熱量はとても少ないため、それを補うグリップヒーターは有効 |
ヒーターが温まってくると、薄い革を通して手のひらが温まってきます。指先の温度も冬用グローブを超え、だいぶ楽になりました。短い手首部分から風が入ってくるので快適とは言えませんが、外部の熱源の助けを借りて血行が良くなったのか、風を受けている指先も寒さを感じません。薄手のグローブで操作性も問題なく、風の侵入さえ防げればこの組み合わせは悪くはなさそうです。書類を書く必要のある白バイ警官は、冬でも薄いグローブとグリップヒーターで走っていると聞きましたが、これならなんとかなりそうです。
ゆとりのある手袋は暖かい
最後にレイングローブをテストしてみました。雨の日はめったに乗らないので、このグローブもほとんど出番がありません。交換当初は冷えていないグローブと暖かさが残っているグリップの影響で一気に温度が上がりました。走り出すと内部の温度は下がっていきましたが、それでも冬用グローブと同じ程度の内外温度差は保っています。レイングローブ、結構暖かい。このグローブ、少し大きめで操作性が若干劣るのですが、内部に豊富な空気層ができているようです。雨の侵入を防ぐ構造のため、風の影響も少なく結構保温性が高いことがわかりました。
本当に問題となるのは外気温5℃以下
暖かいと言われる千葉県でも1月、2月の日没後は外気温が氷点下になることもあります。冬用グローブが本領を発揮しなければならないのは外気温が5℃以下のシーンではないかと思います。まだ出番はありませんが、持っているグローブの中で一番厚手なのがPOWERAGEの冬用です。もう少し寒くなったら、このグローブでも計測してみようと思います。
厚手のPOWERAGE冬用グローブ |
厚みがあるため操作性が犠牲になるのですが、背に腹はかえられません。これでも外気温5℃以下で走っていると指先が冷たくて痛くなります。グリップヒーターを併用しても、グローブの厚みが邪魔をして余り暖かさを感じません。グリップヒーターの使用を前提とした場合は、手のひら部分が薄手で風の当たる甲の部分が厚手のものを選んだ方が効率的かもしれませんが、そんなグローブは見たことがありません。これ以上を求めるのなら、グローブ内部を直接温める電熱グローブしかなさそうです。
次はブーツ内外の温度計測かな
ネットでは冬のライディング中につま先の冷えを訴える人が多いようですが、私はあまり気になりません。特別な靴下をはくわけでもなく、普通のブーツにいつもの靴下一枚で乗っていますが、我慢できないほどの冷たさは感じません。多分、つま先に余裕のあるブーツを選んでいるせいだと思います。十分な空間にとどまっている空気(デッドエアー)は高い断熱効果があります。その辺の仕組みを今回入手した熱電対型温度ロガーを使ってブーツ内外の温度計測をしてみようと思います。
グリップヒーター用グローブもあった
その後ネットで探してみると、グリップヒーター使用を前提としたグローブも売っていました。手のひら側はグリップヒーターからの熱を伝導しやすくするために薄く、手の甲の方は風よけと断熱のために厚く作られています。副次的な効果として操作性も向上するみたいです。実物を是非試してみたいものです。
(2016年12月10日追記)
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