房総の酒蔵から新酒の便りを聞きつけてはバイクで訪問し、蔵一押しの酒を買い求めています。純米の直詰め生原酒を「鳴海(なるか)」という銘柄で複数出荷している勝浦の東灘醸造には年が明けてから何度も訪問。その度に出荷されたばかりの種類の違う「鳴海」を購入しています。
東灘(あずまなだ)醸造入り口 |
ここは海沿いを走る国道128号から少し山側に入ったちょっと分かりにくい場所です。国道から離れ、さらに車一台がやっと通れるくらいの狭いJR外房線のガード下をくぐり抜けたらすぐに蔵の入口になります。
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東灘醸造の鳴海シリーズに最初に出会ったのは2月の中旬でした。純米吟醸直詰め生の「赤」です。しぼりたての新酒をその場で瓶詰めするため少々のオリと発酵由来のかすかな炭酸ガスが含まれています。これを初めて飲んだ時の味と感動が忘れられず、その後「鳴海」シリーズが発売される度に東灘醸造を訪れるようになりました。
「鳴海(なるか)」シリーズに共通するのは、純米吟醸もしくは特別純米の直詰め生という点です。原料米と精米歩合と仕込み時期の違いで6種類の「鳴海」が作られています。飲んだ順番にご紹介すると.....
鳴海(なるか)純米吟醸 直詰め生「赤」
精米歩合 55%
アルコール分 17度
日本酒度 -7
酸度 1.4
ほのかな甘みと微炭酸の刺激がたまらない味です。これを一口味わって鳴海のファンになりました。
鳴海(なるか)特別純米 直詰め生「白」
精米歩合 60%
アルコール分 17度
日本酒度 +7
酸度 1.7
辛口でキレがある上に微炭酸の刺激でいっそうさっぱりとした飲み口、それでいて生のトロッとした口当たりが楽しめます。
鳴海(なるか)特別純米 直詰め生「青」
原料米 富山産五百万石
精米歩合 60%
アルコール分 17度
日本酒度 +5
酸度 2.0
爽やかな香りとキレの良さ、シリーズ共通の微炭酸の刺激でスイスイ飲める純米酒です。
鳴海の風2 特別純米 直詰め生
原料米 秋田産酒こまち
精米歩合 60%
アルコール分 17度
日本酒度 -1
酸度 1.6
本来は夏酒として出荷している鳴海の風2をできたての春バージョンとして瓶詰めしたもの。微炭酸のやや辛口で、夏の暑い時期に冷が旨い酒です。
鳴海(なるか)純米吟醸 直詰め生「山田錦」
原料米 兵庫産山田錦
精米歩合 50%
アルコール分 17度
日本酒度 ±0
酸度 1.6
精米歩合50%のシリーズ中最も高価な鳴海です。猪口に注いだ瞬間吟醸酒特有のフルーツの香りが漂います。口にすると溶け込んだ微炭酸の刺激とともに米の旨みが拡がり、何杯でも飲めてしまう味わいです。
鳴海の風 特別純米 直詰め生
精米歩合 60%
アルコール分 17度
日本酒度 +2
酸度 1.7
鳴海シリーズの最後を飾る夏向きの生酒です。他の蔵が「夏吟醸」と銘打って火入れしたものを出荷し始める頃に直詰めの生酒が楽しめるのは貴重です。シリーズ共通の微炭酸の刺激がさっぱりとした味と相まってまさに夏向き。
(2016年5月31日追記)
『搾りたての新酒を槽場(ふなば)で直詰め』とは
蔵の商品説明には『搾りたての新酒を槽場(ふなば)で直詰めしている』とあります。酒を搾る酒槽(さかふね)の槽口(ふなぐち)から出てきたばかりの酒が本物の搾りたてですが、通常は濾過したり火入れしたりの後工程を経てからタンクで秋まで貯蔵されます。タンク内で熟成され、荒々しさが取れてから瓶詰めされて出荷されるのが普通の日本酒。春先だけ楽しめる生原酒はこれらの後工程を省いたもので、冷蔵保存が必要で日持ちしませんができたてが味わえるこの季節ならではの酒です。
現在は機械搾りも多いが基本は同じ日本酒の搾り工程 |
「鳴海(なるか)」シリーズは絞られた新酒がタンクなどを経ずにその場所(槽場)で瓶詰めされています。さらに濾過や火入れ、加水などの工程も省かれている生原酒ですので若干のオリと微炭酸がそのまま含まれることになります。
搾る際に最初に出てくる酒は薄く濁っていて荒々しさがあり、あらばしりと呼ばれます。その後出てくるのが中汲み(中取り)です。ここが日本酒では一番おいしいところと言われています。最後に圧力をかけて残った酒を絞り出したものが責めで、雑味があります。通常はこれらをタンクでブレンドして味を調整しますが、「鳴海」は中汲みだけを槽場で直詰めしていますので旨くないわけがありません。こんな手の込んだおいしい酒が飲めるなんてまるで夢のようです。
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