2016年8月25日木曜日

房総酒蔵バイクツーリング番外編 待ちきれないひやおろしの解禁日


 しぼりたて新酒の時期も過ぎ、夏吟醸の出荷の盛りを過ぎた今はすっかり酒蔵巡りからも足が遠のいています。最後に房総の酒蔵をバイクで訪問したのは六月の鍋店です。夏の吟醸酒と純米吟醸酒の二升を買って帰ったのが房総の地酒の最後でした。しばらく日本酒を飲んでいませんでしたが、気づけば八月も終わろうとしています。九月に入ればそろそろひやおろしの季節到来です。


「ひやおろし」って何?


 春に搾られた酒を火入れして、一夏を酒蔵のタンクの中で貯蔵することで新酒の荒々しさが取れ、熟成された味になります。気温の下がってきた秋に、この熟成された酒を火入れしないで瓶詰めされた酒がひやおろしです。普通の日本酒は瓶詰め前に二度目の火入れを行い保存性を高めますが、ひやおろしは一夏をかけて熟成された味をそのまま楽しむために敢えて二度目の火入れは行いません。最近では低温貯蔵の技術が進んで、一回目の火入れも省いた生貯蔵酒というのもあります。日本酒はややこしいですね。

瓶詰め前の二度目の火入れを行わない「ひやおろし」

 ひやおろしに解禁日があるなんて全く知りませんでした。今年は9月9日(重陽の節句)のようです。昨年は10月の終わり頃にノコノコと蔵に行ったが手に入れられないという悔しい思いをしましたので、今年は9月9日になったら速攻で手に入れたいと思います。
 調べてみると、バラバラだった各蔵からのひやおろしの出荷時期を解禁日という形で合わせようとしているようです。すでに出荷を始めている蔵もありますが、千葉県酒造組合の直販ショップでも9月9日から販売開始となっていました。何しろタンク内でじっくり熟成させる酒ですから、飲ん兵衛の立場からするとあまり早く出すのは意味がないと思うのですが、商売上は他社を出し抜く必要があるのかもしれません。とにかく9月9日からまた房総の酒蔵巡りが忙しくなりそうです。

新米の収穫から始まる日本酒の四季

 毎年秋の酒米の収穫から始まり、冬に仕込まれた酒が春先に搾りたての新酒として出荷されます。早い蔵では米の収穫が終わった9月頃から仕込みを始めるため、11月に新酒祭りが開催される蔵もあるくらいです。とにかく春先の少し荒々しいけど、ピチピチとした出来立ての日本酒は最高です。麹と酵母の命の力を感じられると言ったら笑われるかもしれませんが、自然の力だけを利用して作り上げた、人類の英知の結集である醸造酒の出来立ての味です。毎年感動してメロメロになっています(単に酔っ払っただけかも)。搾ったまんま、火入れも加水もしていない生の酒を楽しめるのもこの時期ならではです。濃厚な味の中に微炭酸の刺激が加わり、何杯でも行けてしまうやばい酒です。

 春のしぼりたて新酒が一段落すると、低温で時間をかけて醸造された吟醸酒が出てきます。いち早く出回る夏吟醸もたまらない味わい。暑い時期に冷房を効かせた部屋で、冷えた夏吟醸を飲んだらもう極楽です。

 その後、酒たちにとっては静かな眠りの時期を迎えます。一度火入れされた日本酒は、涼しい蔵の中のタンクで一夏じっくりと熟成されます。搾りたての頃にあった荒々しさや炭酸成分などがなくなり、まろやかな日本酒に成長して行きます。ちょうど今の時期は大好きな酒たちは静かに眠っていますので、飲ん兵衛には我慢の時期です。

 夏も終わりに近づき気温も下がってきます。適度に熟成が進んだ日本酒を火入れせずに瓶詰めしたものが「ひやおろし」です。蔵によっては「秋あがり」という名前でも呼ばれますが、この時期は同じものです。普通の日本酒は瓶詰め前に火入れしてその後の保存期間を延ばしますが、ひやおろしはタンク内で進んだ熟成の味や香りをそのまま残すために火入れせずに出荷します。タンクでの熟成期間が伸びればそれだけ味も変わってきますので、ひやおろしも出荷時期によってさらに細かく区別されています。
  • 9月瓶詰め夏越し酒
  • 10月瓶詰め秋出し一番酒
  • 11月瓶詰め晩秋旨酒
どうです。こんな粋な名前を聞いているだけでヨダレが出てきそうでしょう。とにかく9月に入ったら毎月各蔵のひやおろし出荷情報をチェックする必要がありそうです。肝臓が持つかな....

 秋のひやおろしシーズンが終わると、年末年始に向けたお祝い用の酒や燗酒に合う本醸造酒などが中心になります。一夏じっくりと熟成された酒で、保存もききますので色々な銘柄を試すチャンスの時期でもあります。気の早い蔵はすでにこの時期には新酒の出荷を始めていますので、そういう意味ではコタツに入って紅白を見ながら熟成された一年酒から出来たばかりの新酒まで楽しめる最高の時期かもしれません。


そうはいっても「ひやおろし」解禁日まで待てない


 暑い日が続いていますので、日常的にビールやウィスキーの炭酸割りなどで喉を潤しています。しかし、夕立後の涼しい時などには日本酒が恋しくなる時も出てきました。9月9日以降は房総のひやおろしをガンガン試したいと思っていますが、それまで我慢できなくなり、デパ地下をうろついてきました。見つけたのは〆張鶴(しめはりづる)「雪」特別本醸造酒です。酒場で飲むときは、しぼりたて生や純米吟醸酒などの名前につられてしまいがちですが、本醸造酒や特別本醸造酒はその蔵の主義・主張が反映されているような気がしています。この〆張鶴もさっぱりとした辛口で飲みやすく、酒処新潟の有名な銘柄であることを主張しています。

〆張鶴「雪」特別本醸造酒

房総の地酒も旨いですが、やっぱり日本全国旨い酒はいっぱいありますね。そろそろ新潟進出も考えないといかんな.....


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