2016年12月9日金曜日

燗酒の飲み頃温度を知るため手持ちの温度計を試してみた


 いつの間にか燗酒が旨い季節になりました。冷えた体に温めた日本酒を流し込めば、身も心も一遍に温めることができる、この時期の魔法の飲み物です。それぞれの酒毎にお勧めの温度があり、さらに温める方法にもいろいろあるため、それこそ千差万別の楽しみ方ができるのがこれからの燗酒です。日本酒の飲み頃温度は以下のように区分されています。

日本酒の飲み頃温度別の呼び名

今まで日本酒の燗酒は、ぞんざいに電子レンジでチンのみでしたが、バイクで房総の酒蔵を一軒一軒巡り、蔵元の話を聞きながら買い求めた地酒を燗するのに、さすがに電子レンジはためらいました。それまでほとんどやっていなかった湯煎による燗酒をするようになってから、温度の差による味の違いも少しずつ理解できてきたようです。


理科系としては正確な燗の温度を知りたい


 一杯目が熱ければ間違いなくあつ燗でしょうし、ちょっとぬるいなと感じればそれはぬる燗に違いありませんが、理科系人間としてはそれぞれの燗の温度を正確に測りたいと思っていました。調べてみるとお燗温度計という製品があるようです。千円から二千円前後の製品がたくさん見つかりました。燗酒の区分を目盛りにふってあるものもあれば、単に温度だけを表示するようになっているものもあります。要はキッチン用の簡易温度計を呼び名を変えて売っているだけでした。そうであれば、わざわざお燗用の温度計を買う必要もありません。普段使用している幾つかの温度計で燗酒の適温測定にチャレンジしてみました。


熱電対型温度計で日本酒の温度を直接測定


 子供の頃から慣れ親しんだ温度計といえば、ガラス管の中に赤い液体の入った温度計ですが、あの棒を入れて測定できる場所は限られます。また、測定を開始してからしばらく待たないと正確な温度を表示してくれません。冬用バイクグローブの保温性能を測定するために検討した熱電対型温度計の一つを使用して燗酒の温度を測定してみました。

応答速度の速い熱電対型温度計

ステンレス棒の中に入った熱電対により素早く温度を計測できます。だいたい1秒くらいで測定値は安定しました。試しに沸騰したヤカンのお湯にプローブ(測定棒)を入れてみたら、99.7度と出ましたので誤差は大きくはなさそうです。

湯煎したばかりの燗酒の温度を熱電対型温度計で測定

湯煎したばかりの燗酒の温度は、この測定器では53.4度を示していました。気をつけなければならないのは、縦長の徳利ですから熱くなった酒は上の方に移動し、下の方と温度差ができてしまうことです。徳利内部上下の温度差を測ってみると2度くらいの差がありました。


赤外線放射型温度計で徳利越しに温度測定


 非接触で温度が測定できる赤外線放射型温度計もよく利用しています。測定対象物の表面の放射率に測定値が左右されるため校正が必要ですが、離れた場所から目標の温度を簡単に計測できるため手放せない測定器です。

レーザーでポイントした周辺の温度を簡単に測定できる赤外線放射型温度計

先ほど熱電対型温度計で測定した燗酒をこの赤外線放射型温度計で測定してみると、50.8度を記録しました。この測定方法では中の酒の温度ではなく、その熱が伝わった徳利の外面の温度を測定していることになります。湯煎から取り出して時間が経っていますから、入れっぱなしの熱電対型の方は53.1度となっています。2.3度ほどの差で、非接触で測定ができました。

非接触で徳利の温度を測ると50.8度

どちらも熱燗の温度範囲です。これなら燗酒の目安を知るにはどちらの測定方法でも判断が可能だと思われます。


実際には徳利の底を触って判断


 単なる興味で燗酒の温度を測定してみましたが、毎回行うかといえば多分やりません。ヤカンのお湯が沸騰して、徳利を入れてから目安になる時間(2〜3分)が経過したら、徳利を取り出して湯をふき取り、徳利の底を触ります。底の温度が熱ければ十分熱燗になっていますし、それほどでもなければ上燗、ぬるく感じればぬる燗です。徳利の中で下の方が温まりにくい特性を利用して、全体の様子を想定するこの方法で燗酒の状態を知るのが最も合理的だと感じています。

湯煎であれば燗をしている最中の匂いも楽しめる

立ち上る香りも楽しみながら、温まるのを待つ楽しみは湯煎ならではです。電子レンジではこうはいきません。多少目標の温度から外れても、それはそれで新しい味わいを楽しむ機会と捉えて次の燗に期待を寄せます。ああ、飲んべえの夜はこうして更けて行きます。


0 件のコメント:

コメントを投稿