酒というものはちょっとした違いで味が変わり、その違いを求めて酒好きは右往左往するのが性のようです。純米吟醸直詰め生「鳴海」赤が2月4日に出荷されたと聞きつけ、勝浦の東灘醸造を訪問しました。「鳴海」は「なるか」と読みます。直詰めとは直汲みともいい、もろみを絞る酒槽(さかふね)から出てきたものを直接瓶詰めした酒のことです。普通は一旦タンクに貯蔵してから瓶詰めしますが、絞った酒を直接瓶詰めすることにより空気に触れることが少なく、もろみに溶け込んでいる炭酸も一緒に瓶詰めされ、この時期しか楽しめない日本酒となります。
ここは昨年5月に訪問して吟醸辛口「ぎんから」を購入した酒蔵です。その際には蔵の事務所に誰も人がいなくて、かなり長時間人が現れるのを待っていた記憶があります。今回は事務所内で二人の女性が仕事をしていました。やっぱり新酒の時期はどの酒蔵も活気があります。
東灘醸造の入り口 |
海沿いを走る国道128号から山側の生活道路に入り、JR外房線の狭いガード下をくぐり抜けたところにあります。初めて行った時には車一台がやっと通り抜けられるかどうかという狭いガード下の先まで進むのに勇気が必要でした。バイクだからなんとかたどり着きましたが、図体のデカい車だったら途中で引き返していたと思います。
めちゃくちゃ狭いガード下の先が目指す東灘醸造 |
今回は出荷されたばかりの純米吟醸直詰め生「鳴海」赤を迷うことなく購入。純米の吟醸酒ですので三千円を超す価格です。ホームページでの紹介文には『北海道産の酒造好適米「彗星」を100%使用し、やさしい吟香とクリアな甘みを表現しました。直詰めならではの、醗酵由来の微々炭酸が、甘口のお酒にアクセントを添えて、良好なバランスになっています。』とあり、期待が膨らみます。
発売されたばかりの純米吟醸直詰め生「鳴海」赤 |
勝浦に到着したのがちょうど12時頃でしたので、酒蔵の昼食時間を避ける為に勝浦灯台に寄り道してみました。昨年5月に来た時には勝浦城址を訪問しましたが、灯台は今回が初めてです。
勝浦灯台入口 |
残念ながら灯台は一般開放されておらず、登ることはできませんでした。海から70メートルもの切り立った岸壁に立つ灯台です。灯台の上から太平洋を眺めたらさぞや雄大な眺望でしょうね。バイクを止めたすぐ横も切り立った崖になっていて、遠くには昨年訪問した勝浦城址を望むことができました。
勝浦灯台から八幡岬(勝浦城址)を望む |
立春も過ぎ、徐々に暖かくなっているようですが今日は日が陰り、バイクで房総の山道を走っているとかなりこたえます。勝浦灯台の入り口にある桜も少しだけほころび始めていました。本格的な春まではもう少しかかりそうです。
温暖な房総でもまだ桜はほころび始め |
日も傾いた頃にバイクを走らせていると寒さが身にしみます。すっかり冷え切った体を買ってきたばかりの直詰め生原酒で温めました。純米吟醸の生ですのでもちろん冷やでいただきましたが、盃を重ねるごとに体が温まってくるのがわかります。吟醸酒特有のフルーティな香りとともに微炭酸の爽やかさが口の中に広がります。う〜ん旨い。最近飲み過ぎ気味なので、味見したらやめようと思ったのですが無理でした。買ってきたばかりで既に四合ほど空けてしまいました。反省。
冷蔵庫で二日ほど保管した後に栓を開けようとしたら、勢いよく炭酸ガスが吹き出しました。さすが生、炭酸ガスの発生は冷蔵庫の中でも静かに進行していたようです。最初に飲んだ時にも増して炭酸ガスのピリピリっとした味わいが口の中に広がりました。こんな些細なことでなんだか幸せな気持ちに包まれるのは酒好きの証拠でしょうか。
(2016年2月14日追記)
3月に入り別の鳴海(なるか)が出荷されたと聞き再び東灘醸造を訪問。搾りたての純米酒を槽場(ふなば)で直詰めした生原酒シリーズにはいろいろな種類がありました。前回購入した「赤」は中取り(中汲み)した純米吟醸酒で、甘みと炭酸ガスの爽やかさが重なり、口にした瞬間「うま〜い!」と叫んでしまいました。
今回購入したのは千葉産ふさこがねを使った「白」と富山産五百万石の「青」です。どちらも直詰め生原酒という製法はシリーズ共通のため、発酵由来のかすかな炭酸ガスが含まれています。
直詰め生原酒シリーズの「鳴海」白と青 |
帰宅後に「白」を味わってみました。辛口でキレのある味わいが炭酸ガスでさらに磨きがかかっています。これまた旨い。鳴海シリーズは他にもあり、今後順次発売されるそうです。しばらく勝浦周辺をバイクでうろうろすることになりそうです。
(2016年3月23日追記)
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