2017年10月17日火曜日

3Dプリントサービスの料金をできるだけ節約する方法


 市販品では満足できない自分仕様のものを、CADソフトを使って自分で設計し、3Dプリンターで造形するようになってからだいぶ経ちます。実質無料で使える高機能なAutodesk Fusion 360を知ってからは、かなり複雑なものも作れるようになりました。材料の選択肢が広く、精度の高い造形物が作れるため、外部の3Dプリントサービスを利用しています。使用できる材料が限定される個人用の3Dプリンターは持っていません。安価な割に十分な強度と適度な靭性があり、耐熱性・耐候性に優れたナイロン素材が最もお気に入りですが、個人用の3Dプリンターでこの素材が扱えるものはほとんどありません。3DプリントサービスのDMM.makeでナイロン素材を使って作品作りをしています。


アクションカメラ用のマウントや電子工作用ケースを作成


 3Dプリンターで何かを作る場合、使用する材料や大きさによってはとんでもない費用になってしまいます。さらに、形状によっては精度や強度が出ない場合もあり、なんでもかんでも3Dプリンターで、という訳にはいきません。今まで作成してきたものは、ほとんどが手のひらに乗るくらいの小さなものばかりです。それよりも大きなものは、板金加工をしたり、パイプやアングルをカットして使ったり、削り出し加工したものを利用した方が向いているようです。

色々3Dプリントしてきたが、大きさは手のひらに乗るくらいのものばかり

主に、GoProなどのアクションカメラ用の特殊仕様マウントや、電子工作で使用するケース類を設計・製作してきました。届いたものがサイズが合わずに利用できなかったという経験は今まで一度もありませんd( ̄  ̄) ただし、実際に使ってみて「これはいい」と思えるものばかりではありません。設計変更して作り直したものありますし、そのまま死蔵されている作品もありますσ(^_^;)


おすすめできるものはクリエイターズマーケットに出品


 市販品にはないものを作っていますので、自分でしばらく使ってみて、これは他の人にもおすすめできると感じたものは積極的にDMM.makeのクリエイターズマーケットに出品するようにしています。売られていないものですから、それほど一般的なニーズがあるわけではないでしょうが、自分以外にたった一人でも欲しいと思ってくれる人がいれば、それでOKです。コストのかかる金型を準備するわけでもありませんし、流通のための固定費がかかるわけでもありません。求められた時に一つだけ作って届けることのできる仕組みですので、躊躇せずに出品しています。

DMM.makeのクリエイターズマーケットに出品した創作物

当ブログにて自作品の使用レポートなども紹介しているためか、おかげさまでポツリポツリとご利用いただいています。自分のニーズで設計したものが、他の方のお役に立てるのは嬉しい限りです。


市販品に負けない費用にするのは設計者の責任


 一個単位でしか作られない3Dプリント造形物ですが、試作・評価が目的ではなく実用するためのものですから、同等の機能を持つ市販品に負けない価格を実現する必要があります。3Dプリントを利用し始めた頃は、大量生産品に敵うわけがないと思っていましたが、実際に作り始めてみるとそうでもありません。市販品はある程度の汎用性を持たせて、広いユーザーニーズに対応しようとしていますが、3Dプリントでは仕様を限定することで、造形にかかる費用を抑えることが可能です。別の仕様のものが必要になったら、改めて設計を修正すれば済むことです。経験を重ねるうちに、3Dプリントサービスの費用を抑えるコツが見えてきました。素人が公開している作品を購入する立場に立てば、実績もないのに類似の市販品よりも高価なものは買う気になれないと思います。できるだけ安価にするのは設計者の責任だと肝に命じて設計しています。

・部品の配置を工夫して全体のサイズを抑える


 利用している3Dプリント方式は、粉末状のナイロン素材をレーザーで焼き固めて造形するものです。この方式で出来上がったものは表面がざらついていて、精度はそれほど高くはありませんが、適度な強度と靭性のある造形物になります。しなりが必要なはめ込み構造や、板バネのような形状も実現できますし、タッピングビスによる固定も可能です。耐熱性と耐候性がありますので屋外でも使えます。何より3Dプリントサービスの中では一番安価な素材です。さらに、プリント時にサポート材が不要ですので、かなり自由に造形物を配置することができます。

 二台目のアクションカメラとしてPanasonic HX-A1Hを選びましたが、メーカー純正のものやサードパーティ製の市販マウントアダプターはカメラの末端で固定する形状で、オートバイにマウントするともろに振動の影響を受けてしまいました。カメラ中央部で固定できるマウントを設計・製作してみたところ、振動に対して大幅に強くなりました。さらに、落下防止とレンズ面保護のために追加したキャップ部が、マイクの風除け効果もあり、とても目立つウィンドジャマーも不要になりました。

Panasonic HX-A1H用のマウントアダプター、二つの部分からなる

二つのパーツかならなるこのマウントアダプターを設計し、3Dプリントサービスに造形依頼する際は、パーツ同士がくっつかないように適度に間を開けて、下図の左のような状態でデータを送りました。

パーツの配置を変えただけで費用が大幅に削減できた

この状態の料金が当たり前だと思っていましたが、その後サポート材が不要な3Dプリント方式の場合、かなり複雑に重ねても大丈夫だと知り、キャップ部の上下を入れ替え、ホルダー内の空白部に出っ張りを潜り込ませてみました。3Dプリントサービスの仕様では、0.5mm以上の間隔があれば、くっつかずに造形できます。この変更で造形時の外形容積が約35%減少し、料金は何と43%も減りました(^ ^) 造形物が置かれていない空白の部分に、別のパーツを上手く入れて、全体の容積を減らすことが費用削減になります。設計時にはそこまでの考慮はできませんが、複数パーツで構成されるものの設計が完了したら、発注前にパズルのようにそれぞれのパーツを動かして、外形サイズが一番小さくなるようにしています。ただし、X/Y/Z軸それぞれで印刷時の誤差が微妙に異なる可能性がありますので、はめ込み部分などのように同一誤差を前提としている部分は、軸が変わらないように配置を考慮する必要があると思います。

・小さなものは複数を組み合わせて発注


 作成した3Dデータ(STL形式)を送れば、あとは一週間ほどで丁寧に梱包された作品が宅配便で届けられます。一番安価な材料を使い、手のひらに乗る小さなものを発注していますので、料金はいつも800円から3,000円くらいです。この料金には梱包や配送料も含まれていますので、決して高いとは思いません。この料金で一台数千万円もするナイロン粉末焼結式3Dプリンターが使えるのですから。

どんなに小さなものを注文してもこの程度の大きさの箱で送られてくる

小さなものも丁寧に梱包され、ある程度の大きさの箱に入れられてきます。決まったサイズの箱を使った方が手間が少ないのでしょうね。箱を開けるといつもスカスカです。

造形物が小さいので箱の中はスカスカ

宅配便ですから少なくとも数百円の運賃がかかるはずです。一番小さなものを注文した時には送料を含めて税込600円ちょっとでしたから、小さなものは個別に注文するのではなく、ある程度まとめて一度に発注した方が固定費部分が削減できるはずです。

小さなものはまとめた方が固定費部分を節約できる

複数個あっても困らない、Edgeマウントをタイラップ固定式にするアダプターを発注するにあたり、試しに一個と二個のケースで見積もってみました。二個に増やしても料金は約1.36倍にしかなりませんので、やはりまとめた方がお得なようです。さらに造形の際の向きが関係ないか試してみましたが、これは料金とは関係ないようでした。

 一つの注文の中に複数の作品を入れることについては「注文をお断りすることがあります」と注意書きがありましたが、データを見ただけでは別のものを無理に組み合わせたものかどうかわからないと思います。節度は必要ですが、あまり小さなものを別々に発注して、宅配業者をいたずらに多忙にさせては申し訳ありませんので、ある程度まとめるようにしています。


最新の作品は「eTrexマウントアダプター」


 サイクリングで使用しているEdge 800Jのバッテリーが、そろそろ寿命のようで、8時間程度で電池切れの警告が出るようになっていました。別のGPSとして、登山用にeTrexを二台(30JとSUMMIT HC)持っているのですが、マウント部分の形状がEdgeとは全く異なります。取り付けるためには別のマウントを用意しなければなりませんが、走る時間に合わせて使い分けたいと思っています。そうするとハンドルバーにも複数のマウントを取り付けたままにしておかねばならず、スマートではありません。複数台の自転車でこの三台のGPSを自由に使おうと思ったら、三種のマウントを自転車の台数分購入しなければなりませんので、それもあり得ません。

タイプの異なる三台のGPSマウント部を全てEdge方式に統一

現在メインのロードバイクに取り付け済みのEdgeタイプマウントに統一してしまいます。二台のeTrexには変換用のマウントアダプターを作成して、Edgeと同じ形状にしてしまえば自転車側のマウントは一種類で済みます。

eTrex 30Jに取り付けた自作変換アダプター

eTrex SUMMIT HCに取り付けた自作変換アダプター

市販品にも同じ機能を持ったものがありますが、きつ過ぎて一度はめたら外れないとか、ツメが折れたとか、走行中GPSが落下した等々あまり評価が良くありません。さらに2千円前後の値段で売られています。3Dプリントサービスで自作したものはサイズを可能な限り小さくしましたので、市販品よりも安価に作ることができました。これで三台のGPSをどの自転車にも装着可能です(^ ^)/ 「eTrexをEdgeマウントに装着可能なアダプター二種を出品」ページで詳しく説明していますので、興味のある方はご検討ください。



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